崖に向かってアクセルを踏むことを求めていいケースは、普通ない。

 前回の稿『「12階の一番奥」な気持ちから立ち直れない』で吐露したように、彼氏についてもやもやした思いを抱えるようになったのは、どうもやっぱり彼氏を頻繁に助けるようになってからのような気がする。具体的に言うと、彼氏がお店を閉めてその物件を他社に貸すことを決めてからだ。仲介してくれる不動産屋さんとの契約内容確認にも立ち会ったし、会社の業務内容に不動産賃貸が入ってくることになるので、定款変更と変更登記もやった。現行定款を新しく作ったし、仕事を休んで法務局にも行きました!そのあたりからだ。要するに、お返しが欲しいのだ。

 でも、お金を払って欲しい訳ではない。お金目的じゃないのだ。彼氏には、「僕を手伝うのにお仕事休んで大丈夫?」と心配され、「有休がまだあるから大丈夫よ」と言ったら、「じゃあ、お給料引かれるようなことになったら、僕が払うからね」と言うので、「okay, じゃあその場合は言うね」ということになった。彼氏は5,000円くらい払う用意があるようだが、ごめん、わたし1日労働すると10,000円近く給与貰えるんダ!というか、それはいいとして、この一週間頭の中には、「It's not for money! It's my heart!」という言葉がぐるぐる回っていたので、わたしは要するに、自分の気持ちとして、彼氏を助けているのだと思う。だから結局彼氏には、お金じゃなくて気持ちで返して欲しいのだ。

 と、ここではたと立ち止まった。ではわたしは、何を持ってそれを彼氏の気持ちだと判断するのか。つまり、「自分は何を愛情だと認識するのか」。それって、ものすごくどでかい、ものすごく根源的な、そしてものすごく下種というかえげつない自分の価値観に直面せざるを得ない命題ではないか。

 振り返ってみるに、彼氏は絶対わたしに愛情を与えていない訳ではない。ものすごく愛してくれていると思うし、大事にしてくれていると思う。それなのに、足りないと思う。不満に思う。不安になる。それは何なのか。何を欲しがっているのか。そのようなことを考えて行ったら、「わたしは彼氏に、できないことをやって欲しいと思っている」というところに行きついた。要するに、「わたしが好きなら、無理してみせてよ!」ということ。

 やばい。それってつまるところ、「根性あるなら、150km/h までアクセル踏み込まんかい!!!」みたいなメンタリティってことでしょ?「会社への忠誠の証に、不眠不休で働いてみせろ!!!」みたいなことでしょ?「母親なら、母乳で育てて3歳までは一緒にいるのが愛情の証!!!」みたいなやつでしょ?よくよく考えるとまったく関係のないものを、恣意的に結び付けて押し付けるマインドでしょ?そもそも、崖に向かってアクセル踏み込んだ結果生還してくるのは、赤城しげるくらいのものだよ。普通の人は死ぬ。

 例えば彼氏に、お店の営業を休んでわたしのために時間を作って欲しいと思う。わたしが彼氏のところに行くんじゃなくて、わたしの町に来て欲しいと思う。でも、彼氏にそれができないことは分かってるし、できることは全部やってくれてることも知ってるし、よくよく考えると、別にして欲しいと思ってる訳でもない。繁忙の土日に営業休まれたりしたら(え、ちょ、商売やばくない!?社長としてどうよ!?)って思うし、実際うちの町に来られても、どこに連れて行くか誰に見られるか、考えるだけで困る。なのに、「無理してくれる=愛情」みたいに思ってしまう業の深さよ。さらに、(わたしは彼のために無理してるのに!)みたいな気持ちになってしまったりするけど、別に無理はしていない。意外に有能なので、やってみたら、定款変更くらい仕事の片手間でできた。自分も、できないことはやってない。

 という具合に整理整頓したので、元気になりました。彼氏とのラインの会話が明らかにテンション落ちていたので、彼氏の気遣いっぷりというか機嫌うかがいっぷりというか探り探りっぷりというかがひしひしと伝わってきたのだけれども、トーコちゃんが機嫌を直したので、彼氏も一安心です。いやあ、ほんと彼女って面倒くさいな!

 そんな訳で、今後も彼氏を助けることになりそうだ。とりあえず連休明けには、彼氏の車検に付き合って陸運支局に行きます!そして多分その後には、車の所有権解除をやる羽目になりそうな予感がする。

 連休直後で車検に行くので、彼氏に甘えて3泊4日することになった。「じゃあ、おうちにいて僕のためにディナー作ってね♡オクサンみたいにね♡」と言われたのだが、この間お店で「うぇぇぇぇぇん!」となったので、彼氏が気を遣ってくれたのだと思う。なので、「分かった♡じゃあ、ディナーに何が食べたいか、考えてね♡」と返事をしたら、速攻でまた「you♡」が返ってきた。彼氏というものもまた、何かと面倒くさい。ご飯のリクエストくらい、したらいいのに!

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菊池とおこ

いちにち・いちとおこ

日記のようなブログのようなエッセイのようなコラムのような。恋愛のことや、結婚のことや、助平なことや、時に真面目なジェンダーのことなどが、主な関心事。

コメント4件

「12階の一番奥」をyou tubeで聴いてみました。勝手に洋楽だと思い込んでいたので、邦楽で驚きました。さらに曲の独特さにも驚いたのですが、”面倒臭くも意地らしい”女性の雰囲気が出ていて良いなぁと思いました。私は彼氏から連絡が来る、彼氏が会いに来る、彼氏がすべてお金を支払うといった感じで付き合ってますが、不思議なものでこれはこれで「足りない」と感じることがあります。女とはなんとも業の深い生き物ですね(^^;)とおこさんの今回の投稿を見て、ちょっと自分を省みたいとおもいます。
お聴きになりましたか(^-^)vあれは、ライオン・メリィさんの曲に戸川純さんが詞をつけた歌で、曲先であんな歌詞世界が作れる純さんは凄いよなあ、と思います。メロディラインも凄く素敵ですよね。でも、聴いて号泣は初めてデシタ。わたしは「loveにケチ」な男と結婚していたので、自分が彼氏から貰っている愛情のことは分かっているつもりだったのですが、やっぱりいい意味でも悪い意味でも馴れてしまうのかも。でも、今回はこれで解消しましたけれど、またいつか「うぇぇぇぇん!」とならないとも限らないので、その時はまたよろしくお願いしマス!
おもしろい…と思ってしまったことに語弊があったらごめんなさい。でも、解る! 女はめんどくさいクリームを纏っていて、男はめんどくさい脂の匂い…あら? いつものアタシの習性でギュウしたくなりました。そして、お名前をパッと見、菊池おとこさんと呼んでしまったアタシを許してください
コメントありがとうございます!語弊は全然ないですよー笑。いまだに時々「うぇぇぇん!」になる時はありますが、だんだんお互いの対処を覚えてきました。「おとこ」さんについては、過去2回言及されたことがあります笑!音として「トーコ」で自分が認識してるので、「とうこ」だと違和感があるんです。「トゥーコ」みたいな狭さを感じて。どうぞ「トーコ」で覚えてくださいませ!
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