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フィールドノート⑨/1995.4.7.

 部屋まわり2日目。C棟。共用棟に集まって「永遠の幸」を歌うのは昨日と同じ。

 C棟に入るとまず、女子の半分くらい入れられて、1列に並ばされて(欄外記:”関所”という)(※おそらく、棟の入り口、部屋に入る前の関門のことだと思われる)焼酎を注がれて、同時に自己紹介させられる。器は先に入った方は湯のみで、だんだん大きくなって最後はラーメンどんぶり。ただし注がれた量としては、ラーメンどんぶりで底の方1/4くらいだから、器によってそれほど変わらないのだと思う。それが終わると、上に行け、と言われて出された。

 今日はなぜか4年目の女の子と一緒になることが多くて、だいたいSと一緒にまわってたんだけど、行った先の部屋でYと一緒になったりAちゃんと一緒になったり。

 C4外(ワンフロア1部屋)。内は〆切。部屋員は4年目2人に2年目何人か、あとは知らない。総勢5人くらい。戸の前に「自分の似ていると思う芸能人の名前を叫べ」と書いてあって、迷ってたら、何でもいいよと言われて、適当に言ったら1回で入れてくれた。一居室が居部屋になっていて、照明は蛍光灯。まず自己紹介。大きめのマグカップになみなみ注がれたけど、中身は焼酎をかなり水で薄めたもの。お好み焼きを食わしてくれて、あとワインといちごワインを飲ませてくれた。注ぐ時は「飲める?」と訊かれた。ここでNさんに会った。1時間くらい経ったら、Nさんがじゃあそろそろ他の部屋に行ってもらいましょうか、と仕切って、そこを出た。

 C5外。内側は〆切。だけど、メンバーは外の人が1人に内の人が4人くらい、だいたい2年生。他の人は部屋まわりに参加したくないらしい。今回入った1年目がパワフルらしい。戸の前に「抱負を語れ」という貼り紙がしてあったけど、しなくていいから入って、と言われた。補談(※補食談話室。キッチン兼食堂のことで、しばしば居部屋に使われる)が瓶のケースで高床にしてあって、その上に畳を敷き、コタツを置いて、その上にみんな座っていた。

 まず自己紹介。飲み物は焼酎、梅酒、ジュース、牛乳があって、好きなものを、と言われた。C5は個室制。ただ、外側が今度、複数部屋化を目論んでいるそうだ。ここの部屋の人は静かで、むしろ女子の方が押し気味。男の子には焼酎しか出さないが、やさしい部屋だよ、ということだった。ここにも1時間くらいいたけど、部屋の人の言うには、男だったらさっさと追い出して他の部屋をまわらせているところだ、ということだ。

 C1。援団部屋。戸の前に「応援団に入団します」と叫ぶよう貼り紙がしてあって、「声が小さい」と1回2回やり直しをさせられた後、「本当か」と訊かれてそれに答えると入れてくれた。1居室が居部屋になっていて、照明は白熱灯の電気スタンドを吊るしていた。

 まず自己紹介。どんぶりに半分くらい焼酎を注がれて、「4年目4年」のくだりで「もう1回」となりやり直し。ここの部屋の人はみんな応援団という訳ではなく、応援団の人は2人で、あとはそうじゃない。ココロが援団、ということでした。次の部屋に行く前には、手元の酒(自己紹介後に湯のみに一杯注がれた焼酎)は空けてから行け、と言われた。

 C3。ハムスターのいる部屋。1居室が居部屋になっていて、蛍光灯。個室制。けっこう早くに出た。何をしたか何を飲まされたか、覚えていない。特に何もなかったと思う。ここでHに会った。Nさんも来た。

 C2外。部屋の前で「早く中に入れて」と叫ばせられて、1回くらいやり直しをさせられて、「さあ、おいで」と言われたら中に入る。まず焼酎で自己紹介。中では既に1対1の語りが始まっていた。

 2部屋ぶち抜きの居部屋。照明は蛍光灯。Sくんと話をした。彼はけっこう酔っぱらっていて、何を言っているのかあまり分からなかったけど。わたしのことは、あの一番うるさかった女か、というように覚えていた(※Sくんは恵迪と霜星の話し合い時に顔を合わせていた人。彼もクセの強い人だったが、わたしの印象もそういう感じだったらしい)。カミュと阿部公房が彼の精神的核だということだ。あと、4年目の、名前は覚えていない子だけど、その子と話をした。その子は、恵迪は何かをやる際にその何かをやる力を持ったところだ、と力説していた。恵迪は面白い、恵迪は凄い、と。

 最後にもう一度C1に行った。また自己紹介させられた。多分そこで誰かが言ってたことなんだけれど、部屋まわりは顔を売るものであること、それから、1箇所にずっといるものじゃなくてどんどんまわって、もし一通りまわったら二周目をやると、そういうものであるらしい。Sさんが迎えに来てくれたらしい。結局Sさんに連れ帰られた。このあたりの経緯、詳細不明。

 部屋まわりをすると、部屋が汚くなるみたい。トイレ周りなんかすごく汚い。床に新聞紙を敷き詰めてあり、戸のカギはかからないよう固定、戸のないところもあり。トイレのスペースに便器が2つ立っているだけ(※つまり個室の囲いが全くない)というスタイルのところもあった。

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 だんだんみんなが泥酔状態になってくるのが読み取れて興味深いですね。迎える部屋の在寮生たちもくどくなってくるし、まわるわたしも酔いのせいで記憶が怪しくなってきています。

 以降の日々の記述でも出てくるのですが、部屋まわりの日数を重ねてくると、酒と疲れで全身の体調が低下してくるのですよ。記述内容も字も、だんだんへろへろになってきます。

「自分の似ていると思う芸能人の名前を叫べ」には記憶があります。その頃、若干ワンレングス気味のボブ気味の髪型をしていて、眼鏡をかけていたので「わたしはジョン・レノンに似てるぞ!」と叫んだら、大ウケの爆笑でした。ところでですね、45歳になったわたし、最近白髪染めをやめてシルバーヘアに移行し、さらに在宅仕事なのでコンタクトレンズをやめて丸眼鏡なのですよ。つい先日鏡の中を覗きましたら、中にレオナール・フジタがおりましてね……。

 カバー写真はジョン・レノン時代のわたしです。もうちょっと長めだったかな。

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