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【全文公開】平成7年度卒論『北海道大学恵迪寮における「自治」の意味付けの分析』

 表題卒論、やっと全文をPDF化し、ダウンロードできるようにしました。もしご興味あって何らかの役に立ちそうと思われた方は、どうぞご自由にご利用ください。

 個人的には、今、京大や一橋大学の学寮が、大学当局との問題で揺れているので、何かの役に立てばいいなあと思っています。この卒論は、恵迪寮が大学当局と闘争していた頃の話ではなくて、それが終わり個室・食堂なしのいわゆる新々寮に移行してさらに大学からの目に見える圧迫がなくなった後、寮生が自分たちの「自治」をどのように意味づけたか、という話なので、直接の役には立たないかもしれませんが。

 北大が1980年代に、恵迪寮の老朽化と建て替えの検討を機に、個室化や食堂の廃止、寮費の直接請求と徴収を基本とする新々寮への移行を図った経緯と、現在の京大・一橋大の直面している状況は、似ていると思います。ただわたしが彼らの状況をより危惧しているのは、国立大が法人化し、研究費が競争的になってきて大学の自治と学問の自由がぐらつきだし、学費値上げの傾向が進み、さらに文科省が高等教育の方針転換を図ろうとしている、その一連の流れの中で起こっていることだという点で、この先日本の大学や高等教育はどうなるのか、非常に心配だからです。

 率直に言うと、わたしは必ずしも、寮がボロかったり寮生が塊になって密着しながら共同生活しなかったりしないと自治が保てない、とは思いません(そこは、当事者も外の人たちもうっかり混同しがちなところだと思っています)。暮らし方は、いかようにも決めればいいことです。ただ、大学や学寮が自分たちのことを決めるのに、権力が介入しだすのは本当にまずいのです。権力が「役に立たない」と判断する学問や研究が削られ、「役に立たない」と判断する研究者たち、学生たち、これから進学したい子供たちが学問の場から排除されていくことに繋がるからです。

 この卒論を書いた時、わたしは大学の自治が危うくなっているとは思わなかったので、完全に寮の中で何が営まれているのかだけにフォーカスして研究しました。でも、学寮の自治は広く大学の自治の中のひとつであると、先行研究は述べています。現在はひょっとすると、その点を重要視して考えなければならない状況なのかもしれません。

 わたしは卒論の謝辞の中で、最後にこのように述べました。

できるなら、この研究が寮へのなにがしかの還元となることを願います。

 この一文の意図は、「寮は事務と仲悪いけど、この内部のリクツが理解されて、将来的になんらかの折り合いがつくといいなあ!」くらいの感じだったのですけど、もっと違う還元の道があるのかもしれませんね。そして今でも、研究が研究だけのためのものじゃなくって、「なにがしかの還元になればいいなあ!」という気持ちには、変わりがありません。


【卒論全文PDF】

■表紙~目次~問題意識

■第1章

■第2章

■第3章

■第4章~結びにかえて~参考文献/資料~謝辞

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 卒業直後は「こんな徒花論文、永遠に日の目を見ることはないわ……!」と思い込んでいたので、こういった形で公開することになろうとは予想もしてなかったのですけど、IT技術の進歩って素敵ですね。

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