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超個人的な北海道のおすすめスポット【思い出の中編】

■この稿でご紹介するスポット一覧
 ・函館本線(札幌-小樽/ローカル線)
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銭函(駅)
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張碓(駅跡)
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ふるさと(飲み屋。今はもうない)
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珈琲工房あらびか(喫茶店)
 ・
ボストンベイク(ベーカリー)


まずはこちらをシェア。

 この掌編小説中に登場する「海」と「電車」、実はこれはわたしが学生時代を過ごした札幌での思い出が反映されており、実在の場所がモデルです。それは、札幌から小樽に向かう函館本線のローカル線とその周辺の海。

 学生の頃、それは1990年代のことですが、当時仲の良かった男友達と、よく函館本線ローカル線に乗りました。別に小樽に行くのが目的じゃなくて、電車に乗るのと「荒寂れた海」なるところに行くのが目的で。いや多分、そんなに荒寂れてはいなかったと思う。これは文学修辞上の問題です。

 その当該海、どこかというと「銭函」。下記は銭函周辺の描写です。

そんなぎりぎりの我慢が頂点に達する時、電車は大きくカーブを描いて、その瞬間、目の前に大きく青い海が開ける。遮るものの何もない全景に海は硝子のようにさあっと広がり、その上を高い空がどこまでも続いている。海。あたしたちの心は、大きく満たされる。

 銭函は観光地とも言えないような小さな駅ですが、札幌方面から向かっていくと、それまでいわゆる「陸地」を走っていたのがこの駅を通過するあたりから、ぱあっと開けて海が広がるんですね。その感覚がすごい好きでした。

 銭函には海水浴場があるみたいですが、そもそも海水浴シーズンには行かない。ビーチとか行かないしね。道路端を堤防が連なっていて、その堤防を乗り越えて砂浜に降りるだけという遊びです。そしてまあ、

押し黙ったり、興奮して何かを叫びあったり、並んで座ってひとことふたこと呟き合ったり

みたいなドラマチックなことはせず(これも文学修辞上の問題ということで)、持参したモンテールのシュークリームとかふたりで食ってました。男友達が甘党だったというのは本当です。

 函館本線にはよく乗りましたが、小樽には数えるほどしか行ったことがありません。大体銭函で引き返してました。いやほんと、銭函何にもないんだけど。いや、海があるね。何にもない海があるね。あれが良かったんです。

 銭函を過ぎて小樽方面にもう少し進むと、今度は「張碓」というところがあります。ここがまあ、文字通りの

荒寂れた海だった。

ってやつでした。電車は停車しないで通過するだけですが、車窓の両側にはだだっ広く平らな海と陸しかありません。イメージは灰色と鉛色。降りることのできない異国を遠ざかりながら眺めるような気持ち。なんかもう、強烈によかったですよね!張碓すんごい憧れでした。

 しかし今 Google Map で調べてみたら「張碓駅跡」って書いてあるんだけど、え、あれ「跡」だったの!?当時から!?すでにして廃墟的なところだった訳!?と今更ながらに驚いています。地元民の皆さま、教えてください。

 北海道観光に出かける皆さまに銭函下車をおすすめする気はないんですけど、時間があったら小樽に向かう時に、札幌から函館本線ローカル線に乗ってみてください。そして、銭函に差し掛かる時の海が視界にさあっと開ける感じや、張碓の寂寞とした感じを味わってみてください。そういった体験の、おすすめです!

 もうひとつおまけでイートスポットの紹介。

 札幌にいた当時は、北大周辺の北区北12条あたりから北24条あたりがテリトリーでした。掌編中に出てくるこれ、

夜ひとんちのマンションの屋上に登って花火をしたりとか

 これは、あんまり大声で言えないやつですね、えーと、当時住んでおりましたところのご近所のマンションの屋上がまた、この男友達とよく行くスポットになっていて、花火はしませんでしたが(文学的修辞)、これもまた持参の甘いものとか一緒に食ってました。

 そのマンションの1階には当時「ふるさと」という渋い飲み屋さんが入っていまして、中年~初老のサラリーマンが好きそうな飲み屋さんなのですが、わたしは好きでした。日本酒がおいしく肴も地味においしく、宮城県一ノ蔵に「ひめぜん」というスイートでフルーティなお酒がありますが、それを知ったのはこのお店が初めてでした。マスターが女の子連中で飲んでいたわたしたちに、四合瓶一本プレゼントしてくれたのです。

「ひめぜん」は日本酒猛者には物足りないお酒かと思いますが、日本酒に苦手意識を持っている人には、おすすめです。同じ一ノ蔵にスパークリング日本酒の「涼音」もありますが、そちらもおすすめです。

「ふるさと」では、卒業間近にゼミの院生に呼び出されて一緒に酒を飲みました。当時わたしは卒業後の進路を決断できずフリーターになることが決まっていまして、院生はそこら辺の事情に探りを入れてわたしの今後の意向を聞き出そうと試みたのですが、こっちはこっちであんまり人様に言えないような事情で札幌に残ることにした&その院生があまり好きじゃなかったので、のらりくらりかわしながら酒だけどんどん飲んで、酒代だけで1万円くらい奢らせた思い出があります。

 もう行けないところはこのくらいにして、まだ営業している喫茶店をひとつ、おすすめしたいと思います。「珈琲工房あらびか」。札幌に行かれて北大散策などした折には、是非足を延ばしてみてください。お店で自家焙煎している喫茶店で、ガラス張りの焙煎室みたいなところにマスターが籠って、豆を選ったり煎ったりしています。

 これはその男友達ではなく、その頃いつもつるんでいた女友達としょっちゅうご飯を食べに行っていた喫茶店で、実は、その女友達と勝手にマスターに「さとし」という名前を付けておりました。何て言うかね……「さとし」っぽいんだよね、風貌がね……。

 ですので、「あらびか」という正式名称ではなくていつも「さとしの店」と呼んでおりまして、「ご飯行こう」「どこ行く?」「あー……さとし、行く?」「あー、さとし行こか」のような会話をいつも。

 マスターはわたしたちに「さとし」と呼ばれていたことなどご存知ないと思うので、これを読んで「あらびか行ってみよう」と思い立ったとしても、「さとし」とは口にしないでください、絶対。ご飯はよく、キッシュとビーフリヨネーズ食べてました。おいしかった。今もあるのかな。

 あと、北大周辺に行ったら絶対、ここも行っとけ!「ボストンベイク」。洒落たベーカリーとかには行かなくていいから!

 北大の生協や食堂にも入っていましたが、学生の頃はご飯を食べた後にボストンベイクのパンいっこくらい、普通に食ったよね。札幌のパン屋では一番おいしいと思います。おすすめは、サンドウィッチやカツなど様々挟んだデリカパン、あと、レーズンがこれでもか!とぎっしり詰まったカンパニーレーズンです。あっ、パンの耳もやばいけど、観光客にはおすすめできない……。

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カバーイラストは、「みんなのフォトギャラリー」より、三輪 夏生(みわ なつき)/ 三輪もーにんぐ さんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございマス!

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