observation_hitogotoというミレニアルズ考現学

Podcast「常夏」は、MoeShodaiの2人で、自分たちの趣味である芸術や映画や音楽、留学中のMoeのデンマークでの暮らしについて話しているインターネットラジオです。このnoteでは「常夏」のゲスト回として、ili(イリ)さんをお招きした時のレポートを掲載します。

Podcast:「常夏」

iliさんは、Instagramでのobservation_hitogotoというアカウントの運営者。「観察者の観察」というモットーで、継続して何かを観察している様々なアカウントを紹介しています。まず一度、アカウントを見てみてください。

アカウント:@observation_hitogoto ↓

「常夏」の2人はかねてからこのアカウントのファンで、出演を依頼しこの機会は実現しました。observation_hitogotoとは何なのか?運営者は何者なのか?どのようなこだわりや楽しみ方があるのか?などについて伺ってみました。

ラジオでも聴くことができますが、収録したラジオ音声がShodaiの声のみ聴くに堪えないレベルで音が途切れていたためこのnoteを作成しています(大変失礼いたしました…)。iliさんの声や語り口はよく聴こえるので、このレポートを読んで興味を持たれた方はぜひラジオも聴いてみてください。

はじめに

Shodai (以下、S) 初めまして。

ili (以下、I) そう、初めましてなんです。

Moe (以下、M) 会ったことない。

I:ちゃんとお話しするの初めてですよね。

M:多分私がiliさんのアカウントをフォローして認知されて…っていう感じだったと思います。

I:observation_hitogotoっていうアカウントをやってるんですけど、そこでMoeさんを知って、面白いと思って別のアカウントでフォローしたりして、常夏も聴いてます。

S:ありがとうございます!

M:iliさんは一旦リア垢で私のことをフォローしていて、私はそれはそれでフォロー返したりしてたんですよ。

S:えっ、つまりobservation_hitogotoアカウントとは繋がってなかったってこと?

M:そう、後から確か言ってくれたんですよね。

I:うん、関係ないところからDMで実は…って。

S:observation_hitogotoってアカウントは面白いんだけど謎が深くて、詳しく話を聞きたいっていうのを僕からお願いしたんです。このアカウントはまずプロフィールが素晴らしくて、”observing the observer”「観察者の観察」って書いてあるんですよ。

投稿はだいたい9分割されている写真で、一つの着眼点に特化したアカウント、例えばマッチ箱ばっかり集めてるアカウントとか、そういうアカウントを紹介するアカウントなんですよ。

これ…素晴らしいなと思って。ただ謎なんです。

I:そうですよね、あんまり人らしくしないでおこうと思っていて。

M:日本人だとも思ってなかった。

S:だから聞きたいことはたくさんあるんですけど、「言いたくないです」ってことがあれば全然言わなくて大丈夫です。

I:全然大丈夫です(笑)。

始めたきっかけ

S:どうしてこれを始めたんですか?

I:なんで始めたかというと…そもそもこのアカウントを立ち上げた時はこういう発想ではなくて。

S:うん。

I:いろんな観察アカウントがあることは知ってたので、自分も便乗してやってみようと思ったんですね。まあ結局3ポストくらいでやめたんですけど…その時は「chomiryo_misegoto(調味料 - 店ごと)」ってアカウントで。

M:おお〜。

I:めちゃくちゃしょうもないんですけど、よくラーメン屋とか定食屋とかのテーブルに置いてある調味料セットあるじゃないですか。あれを集めようと思ったんですけど、そもそも私そんなに外食しないし、それよりも見てる方が楽しい、もっと変なもの集めてる人いっぱいいるじゃん、と思って。

S:うんうん。

I:それで、observer - 観察者 - っていう立場であれば、それを逆手にとって、観察者を観察するのも面白いんじゃないかと思って始めました。

M:なるほど。

S:「観察アカウントを始めたい」と「観察者を見てたい」を両立させたらこうなったんですね。

I:そうですね、調味料のまま走らなくてよかった(笑)。

■観察アカウントとの出会い

S :「観察アカウントがあることは元々知ってたんですけど」っていうのも突っ込みたかったんですけど、そういう界隈にはどうやって出会うんですか?

M:大手でいうと「渋谷メルトダウン」とかあるじゃないですか。

I:そうですね、あれも載せてますね。

S:2年くらい前に載せてましたよね。早かった。

I:渋谷メルトダウンに関しては、大学でやってたリサーチで見つけたんですけど、初期の頃にアップしている「ジェンダーレス・ニップル」ってアカウントとか「Tシャツのタグ」とかは海外メディアで知りました。確か"It's Nice That"って名前だったと思うんですけど。

ジェンダーレス・ニップル

Tシャツのタグ

It's Nice That

S:いいねが集まりそうな投稿ばっかり集めてるキュレーションサイト?

I:確かロンドンのデザイン事務所がやってる、アートとかデザインに関するメディアです。

S:へえー、じゃあ元々デザインリサーチみたいなことはしてたってことですか?学校で。

I:いや、そこを専門にはやってないんですけど、学問としてはデザインを学んでいて、このサイトはちょこちょこ見ていて偶然見つけました。

■初期の投稿

I:最初の頃の投稿は、今の掲載ルールとは違うものもあるんですけど…例えばジェンダーレス・ニップルとかも観察というよりはなんだろう、コミュニティを問うというか。

S:コミュニティ?

I:これは文字通りのアカウントなんですが、インスタグラムって男女でBANされる基準が違うらしくて、男性の乳首はBANされないけど、女性の乳首は規制されるっていう。これは(拡大した乳首の写真を投稿して)「ここだけ見たら男か女かわからないでしょ」っていう意思でニップルを挙げまくるっていうアカウントです。私、これのスクショをアップしたら投稿が消されて、これだけ文字だけのスクショになってます。

S:ホントだ。結構最初はトガってたんですねえ。。それで、「これは掲載しよう」みたいな掲載の基準が変わっていたんですか?

I:そうですね、まあ対象が「観察者」なので「自分が作ったもの」というよりは「他人のものを他人が撮る」っていうアカウントを選んでいます。あと「(観察者の)変な意思の介入がない。完全な第3者」であるかどうかは大事ですね。

M:ああ、じゃあ例えばこの初期に投稿してあるメイクアップのアカウントとかは、自分でやってるメイクを載せてるから、今の基準とは違うってことですか?

アイメイク

I:そうですね、今だったらこれは投稿しないですね。

S:この「目玉焼きbot」とかも…

I:ええ、このアカウント自体はすごく面白いんですけどね。

S:これ多分、自分で毎日作ってるのをアップしてるから…

I:そうですね、まあでも「毎日継続する」っていうのもひとつの観察だとは思うんですけど。

S:確かに一定のリズムとかルールがあると、フラットに見えてくるっていうのがありますもんね。

I:そうそう。

iliさんのお気に入りアカウント6選

S:iliさんのお気に入りの観察アカウントって何ですか?

I:お気に入りはいっぱいあるんですけど…私が好きなのは「普段ホントに気に留めないけど、言われてみれば確かにある」っていうものと「撮ってる対象はモノだけど、モノからその裏にいる人の様子や気配が見えてくる」もので、いくつかピックアップしてきました。

■犬シール

I:まず「普段誰も気に留めないもの」の方でいうと、例えば「犬シール」。犬シールってわかりますか?

犬シール

M:あの玄関に貼ってあるやつ?

S:え、玄関?

M:ポストとかに貼ってるやつですよね。見たことない?

S:いや、ピンと来てない…

I:多分これ、私昔地方に住んでたんですけど、 地方とかに多いのかもしれない。

S:(アカウントを確認して)あー、これか!

I:「確かにあるわ」と思って。これは個人的に好きで、ホントどうでもいいことなんですけど、存在に気付けてよかったです。

S:これ見たら「こんなにカラー展開あったんだ」とか気付けますね。

I:そう。何のシールか未だにわからないんですけどね。

S:明朝体とゴシック体の両方があるし。

M:基本これ、3-4枚重ねて貼ってないですか?単体で貼ってるのあまり見たことない。

I:そうなんですよ。なんでしょう、もらった人はみんな貼りたくなるんですかね、持ってる分全て。

これは最新の投稿が2週間前ですね。継続している、っていうのもひとつの掲載基準なんですよね。できれば今も投稿し続けてるアカウントを紹介したいです。

■路上ティーバッグ

I:同じ「普段気に留めないもの」シリーズですけど、次のお気に入りは「路上ティーバッグ」を集めているアカウント。アカウント名は"streetteas"。

路上ティーバッグ

私このアカウント見たときに「いや、路上にティーバッグ落ちてないでしょ」って思ったんですけど、こないだ見つけて「これか!」ってなったんですよ。思わず写真を撮ってしまいました。

iliさんが見かけたティーバッグ

画像1

S:面白すぎる。

M:それってアカウント主さんに送ったりしないんですか?

I:あー送ってないですね、送ればいいかも。

M:それも気になるんですよね。こういうアカウントやってる人って最初は自分で投稿しているんでしょうけど、例えば渋谷メルトダウンも今はハッシュタグつけて写真が集まっていくじゃないですか。アカウントが認知されてきたら自然と集まりそうですけど、あくまで個人でやるのか、一種のキュレーションサイトみたいに運営していくのか…

I:他薦・自薦どっちもありますね。例えば私のDM欄には「こんなアカウントあります」ってメッセージが来ますね。だいたいが自薦で、そんなに多くはないですけど。

S:自己顕示欲がすごいな。でも掲載するとは限らないんですよね?

I:今のところ、掲載率100%です。

S:おお、ちゃんと作法の分かってる人たちから連絡が来るんですね。

I:あと、私も実は認知してるってパターンも多くて。

S:え、どういうこと?

I:「あ、いいアカウント見つけた」と思ってもすぐに投稿せず、ストックしてたりしてるんで…

M:寝かせるんだ。

S:路上ティーバッグのアカウントはプロフィールに「Brooklyn, NY」って書いてありますけど、フォロワー54、フォロー中66(2020.05.04時点)でニューヨークで、どうやって見つけるんですか?

I:これはもう界隈があって。

M:界隈!?

I:フォロー欄を辿るのがほとんどです。マニアックなアカウントがフォローしてる人はマニアックなので、そこをどんどん潜っていきます。

S:ネットストーキングをこういう形でやっていると。

I:そう、だから外国のアカウントを見つけるのは日本のアカウントより難しくて。たまにイスラム圏とかの言葉が一切分からない、本当に何をしているのか分からないアカウントとか見つけたりするんですけど。

S:なるほど。。ところで路上ティーバッグ、リプトンが8割くらいですね。

I:どういう状況なんでしょうねこれ。

S:iliさんが実際に見かけたのはどちらなんですか?

I:どこだったかな、最近は出歩いてないんで近所だと思うんですけど。だから神戸だと思います。

M:神戸とニューヨークが繋がった瞬間だ。

■放置椅子

I:「普段気に留めないもの」シリーズ最後のお気に入りは、「放置椅子」"Lonely chairs"っていうアカウントです。この「路上に放置してある椅子」を対象にしたアカウントっていくつかあるんですけど…

S:いくつかあるんだ。

放置椅子

I:「放置された椅子」とか「ショッピングカート」とか結構あるんですけど、これも結構身の回りにあるから面白いですよね。これ、次で紹介するアカウントもそうなんですけど、写真から人の気配が漂ってるのも哀愁があっていいなと思うんです。

M:あ〜、確かに。

S:これ、写真めっちゃ上手くないですか?

I:そうですよね、ちょっと椅子動かしてるのかな。

M:写真に対しての床の面積の割合と、椅子の角度が揃ってますよね。カッコいい。

I:全部同じ構図にしているアカウントはいいですよね。

S:共通点とか相違点が比較できますね。これに「人の気配が漂ってる」っていうのは、椅子の角度振ったりしているところに対して言っているんですか?

I:いや、持ち主とか生活があったものだから…「脚が1本だけ折れている」とか背景も様々で、そういうところですね。

S:なるほど。後ろの壁にグラフィティが描いてあって、脚のないボロボロの椅子とか見たら「何があったんだ」ってなりますね。

I:多分1枚だけで見たら普通の光景なんですけど、これだけザッとたくさんの写真が並んでるとカッコよく見えますよね。

S:これ、絶対デザイナーがやってますよね。アカウントは…

M:あ、めちゃお洒落なカフェを経営してるっぽい。

I:"My coffee place"みたいなこと書いてますね。

S:これは、数ある放置椅子アカウントの中でも1番カッコいいってことですね。

I:そうそう、そういうことです。

M:着眼点プラスまとめ方の上手さがありますね。

I:そう、そこは大事ですよね。同じものを投稿しているアカウントでも、同じ構図にしてたりするのは惹かれますね。

M:見えてきたぞ。

■売り出された鏡

I:次のお気に入りアカウントですが、さっきの椅子と一緒で「人の気配や名残が見えるもの」なんですけど、「売り出された鏡」です。

売り出された鏡

S:???

I:ネットショップに売り出されている鏡の写真です。

S:(アカウントを確認して)うわ〜、これもう、ねじれにねじれてますね。

I:これ、めちゃくちゃ面白くないですか?? 鏡と、どう自分が写らないようにしようかっていう出品者の工夫とか、どうしても写ってしまう出品者のプライベート空間とか…

S:めちゃくちゃ面白い。空に向けてる鏡の写真が何個かありますね。

I:何も写さないようにしたってことですよね。結果カッコいいし。

S:額縁の中に空が写ってるのがいいですね。

I:あとすごくお気に入りの投稿があって…投稿者が白い布を被っている写真があるんですよ。

S:これ、すごいな。最高だ。

M:なんか、気持ちはわかるんだけど。

S:顔出ししたくなかったんだね。

I:だったらもっと角度つけるとかあるでしょ、って思うんですけど。

S:写真が別に上手くないんですよね。このアカウント、上手い写真も下手な写真もどっちも楽しめるのがすごいですね。

「マッチョが上裸で撮ってる」っていうのもありますね。

I:どっちを見せたいんだ、って感じですよね。

S:イキリのセルフィーかと思いきや、クレイグリストに載せてる写真という。

M:なんか頭に被ってるし。

S:ツッコミどころが多い。写したいものの実態はなんなのか…外にタンスと鏡を持っていってる人もいますね。ここまでして周りを写したくなかったんですね。

I:森みたいなところにいますね。

S:この投稿、有名な美術批評家のJerry Saltzがいいね押してますね。なんだんだ一体。

■地下鉄の手

I:これもめちゃくちゃカッコいいアカウントなんですけど、"subway hands"「地下鉄の手」ですね。地下鉄の手もいくつかアカウントがあるんですけど、これはすごく写真がよくて。なんか宗教画っぽいなと思うんですね。

地下鉄の手

S:確かに。手のアップってそう見える。写真上手いなあ。

I:これは中の人が投稿にphoto by 〜って書いてますね。

S:一番最近の投稿とか、もう雑誌の表紙みたいですね。

I:この人、フォロワー22万人いますね。

S:しかもi-Dに掲載された記事のURLが貼ってありますね。有名人ですね。

M:ハイライトを見ると、ヴァレンティノともコラボしてる。

S:ホントだ。ティファニーともコラボしてる。観察アカウントを運営してたらハイブランドとコラボする未来もあるんですね。お気に入りの投稿とかありますか?

I:全部カッコいいんですけど、1人より数人が手繋いでたりしてるのは好きです。

M:私、パステルな女の子2人が手繋いでるヤツが好きです。可愛い。

I:あと、1人の写真なんですけど、人差し指と中指でポールに寄っかかってるこれカッコいいなって思います。

M:いいな、このアカウント私が思いつきたかったな〜。

観察アカウントの見つけ方

S:じゃあもうアカウントの見つけ方は、もうフォローから辿るだけってことですか?フォロワーも少ないし投稿にハッシュタグつけてないアカウントとかも多いじゃないですか。

I:そうですね、あとは私の思いつきで検索して調べるっていうのもあります。

S:それ、だいぶ当て感良くないですか?

I:例えば街を歩いてて、駐車場のタイムズを見つけたら「これタイムズの看板集めてる人いるんじゃないかな」って思って調べたら見つかったり。あとクリスマスに「何かクリスマスのアカウント見つけたいな」と思って、クリスマスツリーについて調べてたらやっぱりあって。「他人の家のクリスマスツリーを遠くから撮る」っていう。

タイムズ

他人のクリスマスツリー

S:街を歩いて仮説を立てて、調べたら出てきた…っていう。すごいなあ。私、街中だと「キリスト看板マニア」好きです。

キリスト看板

I:あのアカウントは結構更新してくれるので楽しいです。あと宗教関係だと、お寺のポエム。

お寺ポエム

S:ああ、あの掲示板に筆で書いてあるやつ。

I:そうそう、あのありがたいお言葉。

観察者の観察アカウントも増加

I:最近、同じことをしているアカウントを見つけまして。

S:え、観察者を観察するアカウントの真似?二番煎じ?

I:真似というか…偶然なのかちょっと分からないですけど。でも観察アカウントが広まるのは本望なのでいいことだと思ってます。

S:それが増えてきたら、それをさらにまとめるアカウントが出てくるかもしれませんね。

M:"Observing observing the observer"だ。

S:オリジナルにたどり着くのに3回くらいタップしないといけないという。

■観察アカウントとのコミュニケーション

S:これ載せていいですか、みたいな掲載許可って取るんですか?

I:最初の方はしてたんですけど、そのうちしなくなりました。まあインターネットだし、と思って。(アカウントを始めた)当時は投稿も少なかったし、本当に何者か分からないアカウントなので…今はもし言われたら消そう、くらいに思ってます。

M:出典元書いてますしね。

I:時々、"Thank you"みたいなメッセージは貰います。

S:"Thank you"なんだ。よかった。

I:「何してんだ」は今のところないです。

M:でも観察してるつもりが自分が観察されてた、っていうのはちょっと怖いですね(笑)。

S:狙撃しようと思ってたら後ろから撃たれた、みたいな。でもそこから個人的にやりとりをして、みたいなのはありますか?

I:なくはないですけど、基本的にアカウントの人間じゃない感は保っていきたいと思っていて。

M:それ、すごく上手くできていると思います。

I :あくまで「機関」みたいな。

S:フィールドリサーチの基本ですもんね、観察者に関与しない、っていうの。文化人類学とかでも。

I:まあ、このPodcastは載せようと思うんですけど。「話しました!」って。

S:えっ、それはいいんですか?observation_hitogotoのアカウントに?

I:迷ってます(笑)。どうしよう。

S:このアカウント見てたら、老若男女の何も分からないですよ。アイコンの写真、おじいちゃんだし。


アカウント写真について

I:このアイコンは、今和次郎さんという方です。

S:今和次郎なんだ!!ちゃんと考現学を引き継いでいこうって思いがあるんですね。

I:あ、知ってます?これが考現学かと言われたら分からないんですけど、私今和次郎さんのことすごく好きで。

S:納得しました。

今 和次郎(こん わじろう、1888年(明治21年)7月10日 - 1973年(昭和48年)10月27日)は、民俗学研究者。
民家、服装研究などで業績があり、「考現学」を提唱し、建築学、住居生活や意匠研究などでも活躍した。

by wikipedia
※当時の日本の何気ない日常風景をアカデミックにリサーチした偉大な研究者です。

M:あー、考古学の現代verみたいなことをしている人なんですね。

I:そうそう。観察、行き交う人とか建築とかをひたすらデータ化とかした人です。今和次郎さんはレポートの形のイラストが可愛い、っていうのが好きだったんですけど。その方法じゃなくても、ある一定のものを観察し続けるっていうのはすごく面白い。自分が集めてるアカウントの人たちも同じ意識を持ってると思うので、リスペクトも含めこのアイコンにしています。

S:今和次郎の顔、知らなかった。

I:私も画像検索するまで知らなかったです。

S:赤瀬川原平とか藤森照信とかの、路上観察していた人たちが今現役だったらこれやってますね。21世紀の考現学ですね、これは。デイリーポータルZとか見たりしますか?

I:リンクが出てきたら見る程度ですね。頻繁には見ないです。

S:あの人たちとか、このアカウントのこと大好きだと思って。これは…そっとしておいた方がいいですか?

I:まあ、もうちょっと見られてもいいと思いますけどね(笑)。すごく有名な人も載せてますし、本当にひっそりとやっているけどめちゃくちゃ面白い人も載せてるので、そういう人はもっと見られて欲しいので。

S:それがいいですよね。フラットなルールで載せてるのが大事。フォロワーが多い人ほど大きく見えるわけじゃないし、インスタグラムのフォーマットもフラットだから、合ってますよね。

■質問タイム

S:このアカウント、だいたい1週間に1回くらいは投稿してるじゃないですか。ストックはまだまだあるんですか?

I:ありますけど、アップのペースは気分です。思い出したらフッと投稿することもあります。なるべく長期間空かないようにはしたいと思うんですけど。

S:観察アカウント、椅子はいっぱいあるって言ってましたけど、他に被りがちなテーマってありますか?

I:路上にあるものは多いです。道に落ちてるコインとか、ゴミとかよく見ますね。あと建築の一部分とかはアカウントも多いし、人気がありますね。

S:貯水タンクとか、有名な芸術家がやってますもんね。ドイツの写真家のベッヒャー夫妻。

I:私は - こういうとアレなんですけど - マッチ箱とか見た目がわかりやすい綺麗なものよりも結構ゴミとかが好きなんですよね。

S:グラフィカルなものよりも、路上に落ちてる何気ないものの方が好きだということですね。

終わりに

S:アカウントの楽しみ方がよくわかってきました。

M:私もここ載りたいなあ。このアカウント見てると私も観察者になりたいなと思うんですけど、何しようと思って…

S:気付いたら撮ってるものの中にヒントがあるかもしれないですね。もうカメラロールにあるとか…

I:私、このアカウントを始めてから写真をよく撮るようになりました。自分で集めているわけじゃないですけど、今まで気に留めないようなものも見えてきて楽しいです。

S:このアカウントを見たら街を見るのが楽しくなりますよね。しかも一見汚いものにも良さが見えてくる。潰れた缶とか。

I:1個よりも、集まってきたらどんどん面白さが増してきますね。

S:いやあ…勉強になりました。

I:ありがとうございます。こんなにアカウントについて話したことは初めてです。

M:すごく面白かったです。

S:ありがとうございました。

(文責:Shodai 2020.05.05)

このトークはPodcastやSpotifyでも公開しています。ぜひ音声でもお楽しみください!

Podcast「常夏」は、MoeShodaiの2人で、自分たちの趣味である芸術や映画や音楽、留学中のMoeのデンマークでの暮らしについて話しているインターネットラジオです。ぜひご意見、ご感想をいただければ幸いです。
Podcast:「常夏」
連絡先:tokonats.radio@gmail.com
Twitter:@tokonats.radio








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