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しまや出版見学

しまや出版に見学に行って来ました。

しまや出版は出版と名乗ってはいますが同人誌専門の印刷屋さんです。
しまや出版 https://www.shimaya.net/

普段は見学は行っていませんが、技書博覧会と言う同人誌即売会イベントのスタッフが企画をして実現したようです。
しまや出版に限らず印刷業界で見学できる工場はほぼないので、ある意味レアイベントです。

しまや出版は東京都足立区にあります。実際に社屋を訪れてみると、昔ながらの町の印刷屋さんと言った感じです。以前は同人誌印刷に限らず町の小さな印刷屋は沢山ありましたが、現在ではだいぶ数が減っているようです。

しまや出版ではオンデマンド印刷とオフセット印刷の両方の仕事を請け負っています。
オンデマンド印刷はここ数年で急激に伸びた印刷分野です。
少部数から印刷出来る事が強みで印刷料金もオフセットに比べると安価なため、同人誌の入口的な役割になっています。
印刷屋によってはオンデマンドのみオフセットのみと言う印刷屋もあります。

オンデマンド印刷は極端な話ですが、巨大なプリンターと同じと考えてもらって構いません。データをそのまま出力できるので、手間や材料費などを抑えられます。
こういった背景もあるので、最近はオンデマンドのみの印刷屋が増えています。

個人的にはオンデマンドと言うと安いが品質的に劣ると言うイメージでしたが、しまや出版の印刷物はオンマンドと言われなければ分からない程高品質でした。

オンデマンドは出力機の性能差がそのまま印刷物の品質になるので、同じオンデマンドと言っても印刷屋によって品質にはかなりばらつきがあるのが現状です。しまや出版の印刷機はハイエンド機種らしいので、品質もそれだけ高くなります。

またオンデマンドでも普通の4色印刷に特色を入れたり、白色のインクを使った特殊印刷が出来たりと、かなり出来る事も増えています。正直ここまでオンデマンド印刷で出来る事が増えている事に驚きました。

それに対してオフセット印刷は昔ながらの印刷方法です。輪転機に巻き付ける「版」を作りそれにインクを塗って印刷をする方法です。
オフセット印刷のメリットは品質が安定している事です。オンデマンド印刷の場合、印刷屋によって品質にばらつきがありますが、オフセット印刷であれば、どの印刷屋に依頼してもほぼ同じ品質の物ができます。
そして大部数に強いことです。「版」を作る材料費などもありますが、100部を超えた辺りで印刷料金は逆転するケースが多くなります。

今後はどうなっていくかは分かりませんが、現状では少部数ならオンデマンド、大部数ならオフセットと言う感じです。

実際にオンデマンド印刷機を見ると「大きい」と言う声がありましたが、元々印刷業にいた私からみると「小っちゃ、おもちゃみたい」と言う感じです。それでも高さは1.5mくらい、幅2mくらい長さは5mくらいはありますので普通に考えれば十分な大きさです。

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まさに巨大プリンターと言った感じでセブンイレブンにあるコピー機を巨大にした感じです。印刷機のメーカーもセブンイレブンのコピー機のメーカーと同じなので、トナーの装填方法も同じなのには笑ってしまいました。もちろんトナーも巨大なのですけど。

その後にオフセット印刷機も見ましたが、こちらはさらに大きいです高さ2m、幅3m、長さ10mくらいはあった感じです。そしてオフセット印刷機が稼働すると、非常にうるさいです。説明してくれる人の声が聞こえません。

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印刷後はしまや出版では断裁→丁合→表紙付け→化粧断ちと言う工程になっています。
印刷機では1ページづつ印刷するのではなく、まとめて4ページや8ページを1枚の紙に印刷します。それを1ページ単位に切るのが断裁です。刃の切れ味はすさまじく、1000枚くらい簡単に切れます。そして断裁面を触るとツルツルな触り心地です。それほどの切れ味なのです。

1ページづつに切られた紙をページ順に並べ直すのが丁合です。写真が丁合機ですが、1段ごとにページ順になっており、それを1冊分ごとにページ順に振り分けてくれます。

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この後ページがばらけないように、のりで固定してその時に表紙も同時につけます。
丁合後の1冊分づつを機械にセットしていくのですが、これが手作業で行われています。
機械にセットするとのりが付けられ表紙が付いた状態にまでなります。

混入を防ぐために断裁時に長短が付けられ、1冊分のページを間違えないようになっています。なので積んである印刷済みの紙を見ると1冊分ごとに長い短いが互い違いになるようになっています。

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社員の人は軽くこなしていましたが、機械のスピードもかなり速いので、慣れていないと機械のスピードに追い付いていかないでしょう。

この時点で本の形にはなっていますが、少し大きめに作られています。最後に本の上下と綴じられている反対側の三方を断裁する化粧断ちをして本は完成となります。

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機械がこなす工程も多いですが、いまだに人の手間もかなりかかるのが現実です。
完全に機械でオートメーションとはいかないのが現状です。

何百万部も同じものを印刷となるとオートメーション化もできますが、少部数、多種類をこなしていくには人の手がどうしても必要になります。

最後に質疑応答を行いましたが、しまや出版では環境にもかなり配慮しているとの事です。特に機械を使用した際に出る廃液を出ない物に変えていたのには驚きました。印刷屋では廃液の量って相当な量ですのでそれを無くしたのは凄いと思いました。その分検版がしにくくなって社員には負担になっているそうですけど。

あと現在でもアナログ原稿で持ち込んでいる人はいるのかと聞いた所、現在でもいるそうです。ですが比率から見ると1%以下だそうです。最近はアナログ原稿の対応を辞めてしまう印刷屋も多いのでこれは貴重なのかもしれません。

規模が大きな印刷屋だと古い機械をそのまま使い続けている事も多いですが、規模の小さい印刷屋だと小回りが利くので、それを生かした技術を売りにしている印象が強かったです。
非常に多種多様な加工に対応しているようで、装丁に凝りたい人には向いている印刷屋なのだと思いました。


私は以前印刷会社に勤めていましたが、他の印刷会社を見る機会もなかったので、なかなか面白かったです。
お土産には今日の為にわざわざ作った本を頂きました。
中身は印刷屋の入稿マニュアルでした。

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