1.病気で休んだ翌日に上司にお礼の報告をしなきゃいけない?【無料版】

ある日、あれは確か3回目の転職で入社した会社でのことでした。前日に風邪をひいて仕事を休んだ僕は、休みをいただいたおかげで熱は無事下がり、1日休むだけで出社できました。そんな日の朝です。女性の主任が、僕に一通のメールを送って来ました。すぐ目の前にいるのに。なんだろう?と思って読んでみるとこんな内容でした。

「身体は大丈夫ですか?病欠で休んだ翌朝は、A部長に報告に行ってくださいね」

そんなこと言われたの、初めてでした。もちろん、それが間違っているとか正しいとか言いたいわけではありません。これを読んでいる方にも「そんなの当たり前だろう」と思っている人もたくさんいると思います。ただ、その方々には同時にこういうことも理解していただきたいのです。それが当たり前じゃない会社もたくさんあるということです

僕が若造だったということもあるのですが、ただ、やっぱり他の会社ではそういうことはありませんでした(今の会社でもありません)。体調が悪くて有給を使って休んだだけで、翌日はいつもどおり朝から来ているのだから問題ないということだし、体調を崩すことは誰だってあります。有給も社員に認められた当然の権利です。

もちろん、現場の人に迷惑がかかったのなら一言謝罪を伝えることも大事だと思いますし、心配をしてくれた人に快復報告をすることもとても大事だと思います。でも、その会社では“とにかくA部長に報告する”ということだけが暗黙の了解で半ば義務化されていたのです。現場の同僚や主任、係長など他の上司相手にはそんなことはありません。組織の事実的トップであるA部長だけにある“しきたり”です。
この辺で、カンの良い方は「はは~ん、そういうことか」と気づく人もいるかもしれません。そしてそのような方はきっとそういう上司に苦労されてきた経験があるのだろうと思います(笑)

この会社は、そのA部長のワンマンで、全てが彼の独断で判断される組織だったのです。話しあうとか、部下の判断を仰ぐとかそういう気質は皆無です。というか、部下に人権は無いと言ったほうが早いかもしれません。ボロクソに叩くのなんか当たり前で、言うことをコロコロ変えても気にもせず、そのために遅くなったとしても部下の責任にしてしまう、上司というよりは王様のようなタイプの人ですね。

組織体質を物語る話としてこんなエピソードがあります。とある企画の概要書を主任が大切に机の引き出しにしまってありました。企画書は引き出しで寝かせると熟成してより良くなる!・・・なんてこともなく、書いたものは見なおして書きなおさない限り、机の引き出しにしまっていても良くなることはありません。そして、その書類は事実上その現場のトップであるA部長に見せて許可をもらい、印鑑を押してもらわなければいけません。だったら、さっさと見せた方がいいはずです。しかし、その主任は見せませんでした。なぜだと思います?彼女は、こう言いました。

「期限のだいぶ前に出すと、書類の修正が増えて、金額もコロコロ変わったりするからギリギリまで出さないのよ」

僕はびっくりしました。なんと、なんと非合理的なことか。書類を良い物にする、ひいてはそれがその企画そのものを良い物にすることに繋がるはずです。そして、自分より優れた目を持つ上司の判断を仰ぎ、一緒に考えればもっともっと良くなるはずです。少なくとも机の引き出しに眠らせているよりはずっと良いはずです。でも、主任はそれをしないのです。主任にとってはそれが“最もスムーズに仕事をする方法”なのです。その組織では、いかにA部長の長い説教や、コロコロと変わる意見を“引き出さないか”が仕事のノウハウなのです。A部長と長く仕事をする上で身につけた、その組織なりの「合理的な仕事の仕方」なのだろうと思います。

本来、社長だろうが部長だろうが、自分が言ったことには責任を持つべきですし、だからこそコロコロと言うことを変えてはいけません。とくに、指示を出す側の意見が変わるというのは当人だけでなく、そのもとで行動をする部下にまで影響がおよびます。だからこそ先を見据えて慎重に、言葉を選んで話をしていかなければいけないはずですし、それができるからこそ管理職についているはずなのですが、残念ながらそういう意識が欠片もない人もいますよね。

僕は、そういう理不尽な人がいるというのは稀なことなのかと思っていました。これを読んでいる方も「うちの上司は最悪だ。俺は(私は)本当に大変だ」と思っている方も多いと思います。それは間違いではありません。事実、大変ですし精神的にも追い詰められます。

でも、複数の職場を見てきた僕から一つだけ言えるとすれば、程度の差こそあれ、そういう上司は結構どこにも転がっているものです。もちろん、人によって個性もありますし、それぞれ理不尽の種類が違う、程度も違うのですが、大事なことはそういうことではなく、どんなに逃げても逃げた先にもだいたい似たような人がいるよ、ということです(笑)。

次章からは、そういう上司や先輩に当たった時、どう対処すればスムーズに仕事が出来るか、快適とまではいかなくても、せめて少しでもストレスをやわらげることができるかについて言及していきたいと思います。

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