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続 すみとも不動産に提案負けしたけど分析してみたらやはり強かった

前回すみともふどうさんとガチンコで戦って、大いに負けてしまったのですが、調べれば調べるほどオフィス業界で住友不動産ほど個人戦でも集団戦でも強い仕組みを持っているなと感じています。今のところ死角なし

まず最初にすみとも不動産に提案負けしたけど何それ?という方は第一弾を読んでもらえるとわかりやすいかと思います。基本的に彼らの戦い方であったり、いかにして競合するビルオーナーを駆逐しているかというのがよくわかる記事になったと思います。

実際の内情などは違うのかもしれませんが、戦った相手として、負けた側としてはこんな感じです。悔しす

さて、今回はその住友不動産の仕組みと個人戦と集団戦がいかに強いかというところを解説、分解していきます。


住友不動産の強さって何よ?

一言で言うのは難しいのですが、彼らのビジネスモデルは基本的に都内200棟+ここ数年で飛躍的に棟数を伸ばしている都内220棟以上のオフィスビルと賃貸マンション、そして分譲マンションという働く場と住環境の提供に対して徹底している事です。むしろ街づくりも商業形成もあまり力を入れていません。圧倒的にオフィスビルと住宅徹底して注力しているのです。

もちろん、商業施設や貸し会議室事業など多角化している側面はあるのですがあくまでオフィスビルの建設における副産物といった立ち位置です。彼らは既存の一等地にはオフィスを建てずに今後の開発が進みそうな場所の近くにまずビルありきで建てていきます。

1974年「新宿住友ビル」竣工(東京都新宿区)※竣工当時、高さ200mを超えた超高層ビルとして日本一を誇った本社を東京都千代田区から新宿住友ビル東京都新宿区へ移転

その後のオフィスビル開発や住宅・マンション開発を行いますがバブル期を越えてからは本格的に大型ビルの開発にどんどんシフトしていきます。90年代前半は「渋谷インフォスタワー」「飯田橋ファーストビル」などが竣工して2000年代には「泉ガーデンタワー」「新宿オークタワー」などです。勿論当初は住友の自力で確保できない土地では共同保有型や地元の地主によるサブリース型のオフィスビル開発なども積極的に行っています。

90年後半で経験するIT企業の成長率

住友不動産のオフィスビル開発により力を入れた案件といえば日本橋箱崎ビルのメインテナントとなったソフトバンクグループでしょう。90年に台頭してきたソフトバンク(設立自体は81年ですが)が96年には住友不動産の日本橋箱崎を本社に移転し、そこから10年かからずに東京汐留ビルディングの全オフィスフロアに移転するという大企業に成長します。

この時期の成長スピードとチャンスをしっかり勝ち取ったことが彼らの成長体験だったといえます。高度経済成長とともに発展する日本の老舗企業に陰りが見えたとき90年代から2,000年代のIT企業(もしくは不随するベンチャー企業)の数多くを住友不動産は受け入れてきたのです。

90年代の成功体験をもとに2000年代においては住友不動産の本格的なオフィスビル開発及び、オフィスビルへの誘致合戦が開催されます。

IPO企業の多くを住友不動産のビルに誘致

本当は上場するタイミングの情報を調べたかったのですが、かなり時間もかかるので簡易的に以下の情報を参照ください。

2019年、2020年に新規上場した企業の一覧をマザーズに限定してピックアップしています。多くが東京の企業なのですが、銘柄も多数・業態も多数です。そこから各オーナーを分解していくと11社が住友不動産のビルに入居している計算になります。そのうち多くの企業がIPO前段階ですみふのビルへ移転をしている事になります。

この銘柄のピックアップと伸びそうな企業への選球眼がとにかく強いなというのが個人的な感想です。

識学
ミンカブ・ジ・インフォノイド
ブシロード
サイバー・バズ
BASE
ダブルエー
メドレー
JMDC
スペースマーケット
ビザスク
フォースタートアップス

このあたりの銘柄も元々早い段階で、住友のビルに入居している企業もありますし、上場直前に大きい床が必要になり移転するケースなど要因は様々です。とくにオフィスの拡張性に強みがありますし、都内220棟をこえるオフィスを所有しているので融通が利きます。

選球の為には使えるものを使う

一般的には大手のデベロッパーの移転担当や誘致に関しては現場ベースお紺われますが、彼らは使える取引先を上手く使いますし、なおかつ株主も上手く利用します。この為ハイグレードなオフィスビルは建築できますし、その分銀行経由での紹介や伸びそうなスタートアップへの早めのアプローチも欠かしません。

住友不動産といえば、大抵の案件は「大成建設&日建設計」が最近のトレンドです。持ち株比率も絶妙な大成建設と清水建設が1.58%と1.59%

株主

2000年代の大型誘致の例は何か

例えば、大型誘致の例とすれば六本木ヒルズ森タワーを本拠地としていた楽天が品川シーサイドTSタワー周辺にほぼ一棟で分室を借りていた点はとても優秀な集約だと思います。本拠地は楽天タワーだったのでそこまで力を入れていないのですが、住友は多少立地が悪くても一棟貸しなどにも柔軟。

その他でサイバーエージェントも2000年代はマークシティの本部機能と周辺の拠点で分散経営してました。ヒューマックス渋谷ビルを一棟で借りていました。住友不動産と渋谷の相性は結構いいです。その後も南平台のガーデンタワーなど拠点をうまく借りています。直近だとabemaTowerへの集約ですね。ただ、渋谷スクランブルスクエアも借りているので東急と住友不動産へ顔を立てた印象を受けます。

この2000年代の銘柄とすればミクシィやサイバーエージェントが渋谷での住友不動産のメインクライアントですね。ミクシィは上場後のタイミングで原宿のビルへ移転し、その後渋谷への再進出で大きく借りたテナントです。その後は、全社的にスクランブルスクエアに移転してしまうので次回の大型開発の際には狙っているかもしれませんが。

その他、リクルートのオフィス移転や事務所の確保なども住友不動産とのつながりが長いです。90年代から2000年代初頭はリクルートとソフトバンクが主なクライアントであったとも言えます。

案件になりそうなものをかぎ取る嗅覚と対応力

本社ビルの建て替えニーズの把握も彼らは強いです。まさに200棟以上あるビルの2次空室3次空室をかぎ取って、埋め戻しを行っていきます。

有名どころであれば2000年代後期の加賀電子の集約から自社ビル建設の利用で約8年程度を住友不動産秋葉原ビルに1棟まとめたケースなどは住友不動産の強い握力を感じます。その後加賀電子が抜けた後の新生銀行をまとめるなどダウンタイム少なく大型のテナント誘致を決めてゆきます。その他であれば丸紅新本社ビル建て替え中の本社機能誘致として日本橋タワーに誘導するケース。

そして、すでにその丸紅の跡地に対しても目途がついているという営業力の強さ。一般的に本社ビルの建て替えなどは三菱地所や三井は取っていきません。期限が決まっている移転だから、積極誘致しないのですがすみふはとります。この辺の営業力は強いですね。

ベンチャー企業の誘致も同じくこの嗅覚が働きます。もちろん銀行や各社VCからの評判などを加味して賃料支払い能力が高い会社を選び取ります。これは一般的な直近2年分程度ではなく事業がスケールした結果何倍程度の収支が予測できるか?現在会社規模と2年後の人員の増加など結構細かく泥臭く見ています。

彼らはオーナーとして各社のアポイントを欠かしません。社内の雰囲気を確認しながらその企業内の人員数や成長度合いに目を光らせています。つまり、人員が急激に増え続けている会社はその分成長度合いも高いので、多少当面赤字予測の事業であっても成長すると踏んで誘致にかかるわけです。

社内企画を事業として成立させてしまう挑戦力

住友不動産の大型オフィスの中にはベルサールという貸会議室&催事場スペースの提供がありますが、これも当時の住友不動産のビルには設備としては供えられておらず、社内で貸会議室の有用性を発議した若手社員の中から出てきた事業でした。住宅のラトゥールシリーズも社内での有用性から企画されてシリーズ化されています。住友不動産の徹底している事は主事業とのシナジーが強い事です。

ラ・トゥールも高級な賃貸レジデンスを求める経営者やハイクラス層に満足いく住戸を用意するというコンセプトがあり、実際に住友不動産のオフィスに入居している企業の社長や役員陣の住宅や社宅として多く利用されています。とくにIT企業の社長にとっての機密性とラグジュアリーを併せ持つバランスの良い商品となっています。企画自体が既存の分譲との混在型とは大きく違います。

ベルサールも同様です。貸会議室やイベントスペース特に大型の催事場スペースが要望されているというニーズをいち早く気づき自社ビル内に取り込むことの先見性がありました。住友不動産は自社シナジーがあり世の中のニーズがあるものは自社内で賄ってしまいます。この貸会議室や催事場としてはTKPが有名ですが住友は自社でできるものは自社でやり切ってしまいます。だから住友不動産のビル内にTKPがテナントとして入っている例はありません。

逆にシェアオフィスやサービスオフィスを自前で行おうとして撤退したケースも存在します。新宿住友ビル内にシェアオフィスを展開したのですがかなり早いタイミングで撤退しています。つまりシェアオフィス事業は単体では儲けにくいとかなり早いタイミングで判断しているわけです。

そりゃテナントにWeworkを頑なに入れないワケだっと思いました。しかしタイムシェアのコワーキングスペースに関しては住友不動産もそれなりに投資しておりベルサールシリーズの小規模系なベルサールラウンジというタイムシェアなコワーキングスペースの運営は行っています


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主にオフィスに関する不動産知識や趣味で短文小説を書いています。第1作目のツボ売り、それ以外も不動産界隈の話を書いていければ良いなと思っています。 サポート貰えると記事を書いてる励みになります。いいねをしてくれるだけでも読者がいる実感が持ててやる気が出ます