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文喫は「はぐれやすい」

話題の”入場料のある本屋”「文喫」に一人で行ってきた。

1500円の入場料で6時間ほど寛ぎ、10冊ちょっとをつまみ、コーヒーを4杯飲んだ。めちゃくちゃ楽しかった。楽しすぎオリンピック第2位。

以下、読んだ本、その感想、文喫自体の感想と続きます。

読んだ本

・死都調布 
・地球のはぐれ方
・青春18きっぷの教科書
・365日世界一周絶景の旅
・コドモノセカイ
   ―豚を割る・
・まじない
・〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー
・オリクスとグレイク
・半分世界
   ―吉田同名

・ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと
・世界の不思議な図書館
・重版未定2
・世界を変えた100人の女の子の物語
・「AV女優」の社会学

見返すとタイトルが"世界"だらけで笑ってしまうが、たぶん最初に漁ったのが「旅行」の棚だったからそれに無意識に引っ張られていたのだと思う。

太字はとくに面白かった本。

『半分世界』の中の短編『吉田同名』はある日突然サラリーマンの吉田氏が数万人に増殖するという荒唐無稽なSFを出来事の発端から帰結まで徹底的に緻密でリアルに描くのがシュールで面白かった。

『「AV女優」の社会学』は「自分の仕事に誇りを持ち、明るく饒舌に自分語りをするAV女優としての典型」が視聴者のための単なる幻想ではなく、業界の特殊な構造やそこで生きる彼女ら自身の要請により段階的に形成されていくものだという論説が斬新で、そこに筆者自身の経験が実感として相当程度織り込まれているのだろうことを考えるとだいぶエモかった。

『コドモノセカイ』は岸本佐知子が奔放で魔法のような想像力を持つ子どもを描く短編を集めて訳したもので、3篇ほど読んだ中では”豚の貯金箱を親友とする少年とそれを割らせようとする父親の話”『豚を割る』が良かった。世の中”合理性”で拾えないものは多いよな、なんて感傷に浸ってしまう。

文喫の感想

良い面とモヤモヤした面、交互にならべていく。

〇案外空いている(カフェ席)
平日の昼間に行ったからかもしれないけど、人はまばらですごく読書が捗った。

△閲覧席は常に満席
12席しかない1人用の閲覧席はガッツリPCで作業する人たちでずっと埋まっていた。それここでやる意味ある?、なんて最初は思ったけれど、文喫は読む人だけでなく、書く人のための場でもあるのかな。

〇読む空間としての質はとても高い
流石に入場料1,500円取られるだけあって半分以上は一人で黙々と読書か作業をしているし、息苦しさを感じるほど静まり返ってるわけでもない。適度に静か。BGMも控えめで歌ナシなので邪魔にならない。客層は女性7割くらい。席の種類は豊富なので、自分が読みやすいように読める。

△スタッフの喋り声がたまに気になる
普通は気にならないレベル。客がみんな静かな分目立っていた。

〇陳列が面白い

上の写真は雑誌の棚。たぶんここが文喫で一番面白い。灰色の部分を開けるとその雑誌に関連した書籍が並べられている。セットの組み方がけっこう面白い。最初に手に取った「死都調布」という本は「文學界」だか「すばる」だかの棚に入ってたのだけど、実際読んでみたら血と性と暴力に塗れたシュールでサイコなヤバめの漫画だったし、「小説新潮」の棚を開けてみると「虚構〜」とか「幻想〜」みたいな本が並んでいて何か意志を感じた。

また、平積みが一冊一冊違う本なので、「面白そうじゃん」と思って一冊手に取るとまた別の面白そうな本が顔を出してくる。やっぱり表紙のパワーというのはすごいもので、次々手が伸びてしまう。

棚の配分がだいぶ尖っていて面白かった。「日本文学」「海外文学」で2棚ずつくらいしかないのに対して「怪談」や「図鑑」で1棚、「ジェンダー・フェミニズム」で0.5棚くらい使われてたり。あと、なんとなくアート系の棚が広めのような気がした。

閲覧席の後ろの棚が「絵本」や「デザイン」系なのも良いなと思った。作り手のための実用とイマジネーション喚起のためっぽい。

徹底して「思いがけない本との出会い」をデザインする意図がバシバシに現れていた。

△案外狭いし少ない、人が足りてない

棚は上の写真に写っているので9割。あとは上の雑誌の棚と、閲覧席の背中側にある棚くらい。なので、リアルな本屋の醍醐味である「圧倒的な物量に対する感動」みたいなものは少ない。

また雑誌の棚を開けてみたら3冊くらいしかない、ということがよくあり、中には空の棚まであった。どんどん手に取られていくのに対して補充が間に合ってない感。

〇コーヒー・水・煎茶おかわり自由
嬉しい。料理は1000円ちょっとするハヤシライスと600円くらいのプリンくらい。

△トイレが少ない
女性用が1つ、男女兼用が1つ。トイレに近いところに「マンガ」の棚があり、大判のAKIRAとかナウシカとかアメコミとかが並べてあるので待つのに退屈はしない。

まとめ

1500円は高い。けど払うだけの価値はあった。やはりあの空間の質を保つためには敷居の高さはある程度必要なのかもしれない。リピーター割引で1000円とかしてくれたら通う。このコンセプトで3倍くらい広いやつが欲しい。

デカくて重たい本ばんばん手にとってバサバサ読み漁るの、ブックカフェの醍醐味という感じ。

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