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ハワイの恋が終わり苦しみの先に、悟りへの道が開けた 34

第五章 34  会う人会う人に話した

私は自分では気が付かないうちに、病んでいた。それは、自分の価値を低く思われたと言う考えに取り憑かれ、深みにはまっていった。

この頃、私はテレビの仕事が休止していた。ちょうどクリスと別れる直前に、それは起った。マネージャーが、私の番組のゲスト出演の事で、電話をしてきた。そのゲスト出演の許可について聞いてきた。ゲストを出してはいけないなら出さないだけの話なのに、なぜか話がこじれて、もう来週から番組に来なくて良いと言われた。私もこれには予想できる事柄があった。私の後の番組のアナウンサーの、裏方の仕事を辞めたかった。それは、そのアナウンサーがプライベートで、私を裏切ったことがきっかけだった。顔を合わせたくもないからボード(音源の機械操作)をおりた。すると、それだけのために人を雇えないという、管理的な問題が出ていたらしく、私を下ろす方向に動いていた。私はかつて活躍していた。しかし、ここ2年間くらいは、番組にやる気をなくしていた。だからこの仕事も、そろそろ潮時とは思っていた。ただ、アナウンサーという肩書きを無くすのが惜しいだけだった。

来週から来るなと言う事は、ちょうど6月が始まる週だった。既にその考えが前からマネージャーにあったのかもしれない。ただ、会社を辞めるとは言わなかった。ちゃんと考えて答えをだそうと思っていた。昔の私なら、直ぐに辞めていたに違いない。友人から短気は損気だよ、って言われていたのを思い出した。
このまま中途半端に会社に残っていた場合、いずれ放送の人手が足りなくなって、少しずつ番組担当が任せれていくのが常だった。

19年も勤めた会社を、こんな風に辞めるのは残念だったが、この頃クリスは東京で時子の発案でコンサートをしており、私はクリスと別れる予感があった。このテレビの番組を降ろされた出来事の3日後に、クリスと別れる事になったから、会社のことなどふっとんだ、どうでもよくなった。

クリスから少額の誕生日プレゼントをもらってから、私はそのプレゼントの金額について、会う友人、友人で無くても、会った人全員に聞いた。この価値観は、私が間違っているのかどうかを確かめたかったから。

「私に16歳年下の彼がいて、最近別れたのね。でも、喧嘩別れしたのでは無くて、私は前にも別れ話を出していたのだけど、いよいよ向こうにアタックしてくる女子が現われたのよ。

『彼女はあなたにお似合いなのじゃない?』って、私も勧めた感じで。

10ヶ月間も、男女の関係は私から断っていたし。つまりセックスさせなくなったの。その後も、お互いに好きな人が出来たわけでは無かったから、彼はずるずる私の家に来ていたのだけど。
私の誕生日の1週間前に正式に別れたの。で、私は最後にご飯を用意し最後の楽しい思い出を作ってお別れしたのだけれど。彼の帰り際に私の誕生日にお花くらいちょうだいねって言ったの。私にお世話になった、ってずっと言っていたし。まだハワイに居られるのは、りさのおかげだ、って何度も言っていたし。そしたらさ、

『女の方から、プレゼントを要求するなんて、するものじゃあない、ちゃんと考えているから』と、彼にたしなめられたのよ。へー、男らしいじゃない!って私も彼を見直したのだけどね。そしたらさあ、誕生日にスーパーのセーフーウェイで売っているバラの花束と、ギフトカードをくれたのよ。夜遅い時間に。忙しかったみたいなのだけど私に届けに来たわけ。私はさあ、素敵な花束が欲しかったのよね、お花屋さんで注文したさ。花屋が届けてくれても良かったのだけど。でも、ギフトカードも入っていたし、まあ良いか、って思って。で、ノーズ・ストロームのギフトカードだったので、何か買いに行こうかとアラモアナのノーズ・ストロームに行ったのよ。レジのお姉さんにいくら入っているか聞いたのね。そうしたら二十五ドルだって言うのよ。

私は

『いやいや、この中に、いくら入っているか聞いているの』って言ったのだけど。

『そうよ、二十五ドルって言うの』

この金額どう思う?」

金額は$100と決まっているタイプの
ノードストロームと言うデパートのギフトカード

というストーリーを、知り合い全員に聞いた。簡単に言う時は10分間で、質問とか出てきたら、1時間かけて話した。いや、終わり無く話せた。頭の神経回路が、おかしくなっていたのだと思う。

それぞれの相手は、

「そうだなあ、3年付き合ったのでしょ?世話になったのでしょ?」とか軽く質問をして、

「僕なら300ドル以上は当たり前にあげると思うよ」

と言う23歳の男性。

「お花くれただけでも、良かったじゃない!」

と言う(額が少ないことで怒っているあなたが変よ)とでも言いたげな、50代の友人。

「25ドル!少なすぎますよ、くれない方がましですよね」

と言う親友の30代の友人。

「あげるギフトカードを、間違えたのでは無いですか?」という友人。

私は素晴らしい花束が欲しかった。金額ではない。でも、金券が25ドルはあり得なかった。最低100ドル。心に傷がついた。
お世話した3年間のお礼が25ドルとは。

結局このカードは使わずに、返すことにした。たくさんの人にリサーチした後、教会へ返しに行った。

クリスは思った。もらった物を返すなんて、失礼なヤツだ。りさには、こういう所があって嫌だな。お嬢様気質なのだろうか、世間知らずなのだろうか。

私は聞いた

「なんで25ドルくれたの?間違えたの?」

「いや、お花だけでは足りないかなと思って」

とクリス。

じゃあ、25ドルくらいの花束に、25ドルを足せば十分なのだろうか。
スーパーのギフトカードの棚には、最低25ドル、最高で500ドルの金額があった。と、元テレビ局の同僚のマリアが教えてくれた。

「それなら最高額の500ドルを選ぶわよねえ」と。


自分で金額をこの範囲内に決めてキャッシャーで支払うタイプのギフトカード

16歳違うことは、価値観も違う。テレビのクライアントの社長達と飲む機会が多かった私は、確かに家庭を守る主婦とは、感覚が違うかもしれない。でも、25ドルは許せなかった。

人間は過去の一定の記憶から物事を判断したり、またそれがトラウマになったりして、インナーチャイルドに変化する。過去の出来事は変えられない、この頃の私はそう思っていた。


沢山のギフトカードがスーパーマーケット内で選べる

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