皆様、よろしくお願いいたします。
誤字脱字、ご勘弁を。
ただひたすら書いて、時々アップしていきます。

ではここまでのあらすじ。
匿名希望は精神科医撤廃、ヨガの普及と介護職の方の地位向上を目指し、その際、どうしても必要だと思われる方、道民の〇〇様をエロ小説で口説き落とそうと目論見ました。その小説の内容は、恋愛バイオレンスです。
では、物語つづきの始まり、始まり〜

https://youtu.be/IY32YgSJ8Cw?si=nI6RcIBLGUjQsbRs

クローゼットの扉を思いっきり開き、洋服を色別に分けていく。彼は何色が好きだろうか？そんなことを思い、どうしても答えが欲しくて友人に電話すれば、「なんで私が、あの政治家の好きな色を知っていると思ったの？政治家なんてね、好みの前に心理学だから。赤でアクティブさを表現するとかね、そういう感じだと思うよ、じゃあね。」こんな感じで取り合ってはもらえず、次のライブで配布するパンフレットの打ち合わせのためにスケジュールを聞かれ、土日と、そういつもと同じことを答える。私の日常を彩るのは趣味もいう言葉で繋がる友人たちだけで、それ以外は同じだった。そこに彼という、あの男が綺麗な色をつけ、ただその色に染まっていった。

　大人の女だと思われたくて、届いたメールの返信の文面を考えた。メールを打つ右手が迷うのを彼は知らない、そう思うとほっとした。電話なら動揺が伝わるかもしれない、ツールの持つ知らなかった便利さを知る。

　メールありがとうございます。先日は楽しかったです。私は7時に赤坂に着けると思います。

　赤坂に着いた私は、いつもと同じ何の変哲もない紺色のスーツだった。ありったけのメイク道具を詰め込んだのに、待ち合わせの時間に遅れそうでメイクを直すこともできなくて、会った瞬間に、「メイク直す暇なくて、忙しくて。」そう言って後悔した。忙しいフリをする女だと思われただろうか？ホントは暇なくせに、そう思われただろうかと不安に落ちた。男は言う。この近くに神社があるから行きませんか？

はい。

そうだな、スタバがあるから、飲み物買っていったほうがいなぁ、あ、ご飯は？

どちらでもいいです。

どちらでもいいです、そんな言葉を使うなんて、依存的な女だと思われただろうか？面倒くさいな、なんて思われてしまうだろうか？そう再び不安になり、そんな自分の忙しさにぐったり疲れる。

楽譜、持ってきたんです。

男は小さく笑った😀

何でしたっけ？僕の話し方が、🦋ちょ、だと。

長調です。音楽用語。

相手の間違いを訂正し、そして弱いであろうジャンルの話題に持っていくだなんて、可愛くない女だわ、その思いは私を暗闇へ突き落とした。

大丈夫ですか？何か、暗いですが。

大丈夫です。

鳥居へと続く長い長い階段が印象的な神社だった。先に階段を上っていく男の手を衝動的に握った。振り向いた男の顔にゆっくりと驚きの表情が広がり、そして消えた。

寒くて。
その言葉の裏で、ワタシはソウカさんとシリアイなの、とささやいた。

男は私の手と男の手の繋がった指先の結び目をきつく締め直すのうに力を込め少しの間眺めた。同じペースで階段を登ろう、そして、同じペースで夢へと歩もう、と男の声。頷いて隣に並ぶと、男は握った手を男のコートのポケットへと入れた。階段を上り続ける。

　手を離さなきゃいけないんだな、と男が言った。
　階段を登りきったところにある神社のお賽銭箱を前に手を握ったまま立ち止まる。男が手を離した。離れていく他の動きがスローモーションのように見えた。

　なんだか、喉が渇いちゃったな。自販機、ありしたよね。

　はい、階段の途中にありました。

第五章

　じゃあ、と言って男は一段下に降り、振り向いて右手を差し出した、その手をきつく握った。階段は長く続いていた。風が吹いた。時は1秒1秒と確実に流れていく。そんな当たり前のことが少し切なかった。踊り場にある自販機に男がポケットから無造作に出した小銭を入れ、「何がいいですか？」と私に問う。全部のボタンが赤く点灯していた。握っていた手を離し、一番安いミネラルウォータのボタンを押した。ガタンと音をたてて落ちてきたボトルを取り出し、キャップを開けて振り向こうのすると、男が私を後ろから抱きしめるから、突然抱きしめるから、ボトルを落とした。水がゴボゴボと音をたてて流れ出てゆく。回された男の腕を緩め振り向くと男さ私のジャケットの胸元に右手を押し込み、シャツの上からブラジャーを押し上げ胸に手をあて、「創価さんとのパイプがあるっていうのは、本当なんですか？」と呟いた。男の手に手を重ね、そして握り、男の手を男の胸にあて、「それだけは、教えられないの。」そう言うと、男は息を吐くように小さく笑いながら手をだらりと下げた。そして、腰を屈め落ちたボトルを拾い上げ埃を払い、一口飲み、私に差し出した。「間接キスになる、」と言った男の顔からは表情が消えていた。私の姿も映ってはいない、そんな気がした。心がザワザワと動き出し、風に揺れる木々の枝の音と重なるようで、早く帰りたい、そう思った。家へと帰り暖かいココアを飲んで、ラムを沢山落とした甘いココアを飲んで眠ってしまいたい、そう思った。

貴方は、衝動的な人なんだな、手を突然繋いできた。

衝動的？道民の〇〇様は衝動的じゃないの？今のこと、今のこと、忘れちゃったの？

　口早に問えば、男は数秒私を見つめ、忘れてないですよ、そう言って真正面から「僕はきちんと順序を辿りたい。」と言ったすぐ後に俯き、「いや、ここは強引にした方が創価さんの気を害さないのだろうか？余計な敵は作りたくはない…」と囁き、私は耳を閉じ、男は私の手を握った。
　心がざわめき続ける。早く帰りたいと思うその一方で、男の手をずっと握っていたほうがいいと思う。心が動く。動き続ける。ドラマチックさに、不意打ちに心が動いているのだろうか？男といると心の奥の奥にある重い蓋が横に少しズレていくような、そんな気がする。ズレた隙間から何かが溢れてくるような、そんな錯覚に襲われる。
　男は、首だけ前に突き出して風に包まれているようだった。その姿は、親鳥が運んでくる餌を待つことしか出来ない小鳥を思い起こさせた。この人には何かが足りない。沈思黙考、そんな経験などないのかもしれない。考える前にまず行動、そんな人なのかもしれない。人はそれをリーダーシップと呼ぶ。そんな大袈裟なことを思う一方で、男の顔にある傷跡から、言葉から、どうしても匂い立つ悲しみや明るさの影に身を潜めた静けさの中に深い優しさが見える、そんな気がする。

　時が流れた。季節が冬を深めた。男の姿を見つけ、駆け寄り、男の肩に顔を埋めると、男の腕が私の腰を抱き「行こう」と言う。そして歩き出す。楽しかった。何処までも何時までも歩いていたかった。けれど外は寒くて、冬の夜は寒くて、私は女で、大人の女で、だから、私が誘った。

　男は、首を左右にふり、ベッドの片隅に腰掛け、そして、美しい指先で顔を包み、
「僕に、問題があるから嫌なんだ、」そう言った。こんなに好きになれる人はいない、そんな思いが走り抜けた。

第六章