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『ヒラヒラヒヒル』の感想1(天馬武雄の章2の途中まで)

最近発売した『ヒラヒラヒヒル』というゲームをさっそく少しだけプレイしてみた。ちなみに体験版はプレイしていたが、楽しみは本編に取っておこうと思ったため、途中までしかプレイしていない(医者のところまで)。体験版でプレイしたところから少しだけ読み進めたが、確認したところどうやらまだ体験版を抜けてないらしい(体験版の範囲が結構長い)。今回はとりあえずプレイしたところまでの感想を書いていこうと思う。


千種正光の章1~2の感想

帝都の病院に勤める心優しき医者が主人公の話。この作品は風爛症という架空の病気がある世界となっており、千種の章ではその病気の患者と向き合う医者の姿が描かれる。

このあたりは体験版が公開されたときにプレイしたので若干記憶が薄れているが、確か病院で患者が出てきたり地方へ視察へ行ったりする話だったと思う。

本作のシナリオライターである瀬戸口廉也が前回手掛けた『BLACK SHEEP TOWN』という作品でもタイプAとタイプBという架空の病気を題材していた。架空の病気に対して実際に存在する病気と似たような問題点を付与させてリアリティを作り出すという手法は本作も健在で、風爛症という架空の病気なんだけどどこか実際にありえそうな病気や社会問題の風刺に感じられるようになっている。

『BLACK SHEEP TOWN』の時も感じたけど、本作も看護や治療の描写がリアルすぎるので瀬戸口廉也は元々そういう系の仕事をしていたんじゃないかと思ってしまう。終末期医療的な感じがするので看護というよりは介護系かなとも思うけど真実はわからない(根拠はなく単なる邪推に過ぎない)。

この章では千種という医者が女性カメラマンとともに地方へ視察し、地方における風爛症患者の生活を目の当たりにして絶望に打ちひしがれるさまが描かれる。この時点で風爛症の患者は気持ちがあるのかないのかわからないという風に描かれているけど、なんとなくカフカの『変身』っぽい感じもする。カフカの場合は主人公である虫が語り手だったけど、それを見る第三者版の『変身』という感じ。話自体は違うけどテーマ自体は似ているんじゃないかと感じた。


天馬武雄の章1~2の感想

医者の話は風爛症の患者が前面に出てきたので面白い話だとは思いつつも、ずっと暗い話が続いたので若干読むのが辛くなってきたけど、どうやら天馬の章は違うらしく少しだけ物語が明るくなる。

田舎から上京して3年目の高等学校の学生である天馬が主人公で、彼の下宿生活が描かれる。下宿先は父親の友人の常見家で、一人娘の明子ともにカフェに行ったりと千種の章に比べると比較的明るい話となっている。

内容自体は何気ない話だけど昼時に皇居の午砲が鳴ったりと細かい点で時代考証ができているので読んでいるだけで興味深い点がある。当時のカイロについてもやたらと細かい説明がなされたりと描写だけで面白い。『BLACK SHEEP TOWN』でもそうだけどこのあたりの細かさはすごいと思う。

天馬の章に関してはまだ話が動くところまで読んでないので書けることは少ないけど、細かい部分が丁寧だったり文章が綺麗だったりするので非常に読ませるつくりになっている。先の展開も気になる。


まとめ

本作は『BLACK SHEEP TOWN』と同じく、十数人以上の主人公が出てくる群像劇かと思っていたけど公式サイトのSTORYのところを見ると主人公は2人だけのようだ。

正直この時点でもう名作確定と言えるレベルで面白い。瀬戸口廉也作品はテキストが上手いのでそれだけで面白いし、本作はそれに加えシナリオや時代考証も重厚な雰囲気がある。今後も少しずつ進めながらこのような感想を書いていこうと思う。できれば12月中旬くらいまでにはすべてプレイしようと思うけど分量がどのくらいかがわからないので何とも言えない。とにかく今後に期待できる出来だったので非常に楽しみである。

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