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『僕の心のヤバイやつ』1~6話の感想

現在2期が放送されている『僕の心のヤバイやつ』というアニメの1期を6話まで見たのでその感想を書いていこうと思う。

正直このアニメを見る前は、内容を軽んじていた。「どうせモテずこれといった取柄もない主人公がなぜかカースト上位の女の子に好かれる話でしょ?」という風に思っていたのである。そういうできすぎな感じの作品は個人的にちょっと冷めた目で見てしまうところがあり、あまり楽しめないことが多い。本作もその部類なんじゃないかと思っていたのである。

この作品は事実としてそういった面も少なからずあるとは思う。ただそれ以上にキャラクターの妙な生々しさに惹かれ、作品自体を好きになってしまった。キャラクターの実在感が絶妙なバランスの元に成り立っている作品だと思う。

最初は主人公の市川の性格が中二病ということで「痛々しいな……」と思いながら見ていて、たとえアニメだとしてもこのキャラ付けはちょっと辛いなと思っていた。しかし話が進むにつれて市川の痛々しさにハマるところがある。市川は痛々しいけど妙な生々しさがあって実在感がだんだんと高まってきた。そうなってからは作品が面白くなってきた。

対して山田の方の性格も良かった。正直な話、最初は主人公のことを簡単に好きになるよくあるラブコメのような感じになると想像していた。本作でも大枠でいうとその方向性に向かっているとは思うが、山田の気持ちというのが明確に描写されない点が他の作品との差異で、なおかつ良さでもあると思う。山田の市川への気持ちはわからないようになっている。表情や演出で察することはできるが、6話の時点だと徹底的に不明なまま進行している。

そのわからなさがとても良いと思う。わからないからこそ「山田はどう思っているんだろう?」という余白が生まれ、ラブコメとしてドキドキ感が増している。互いの好意が丸わかりの作品を好む人もいると思うが、自分としてはセリフで明確に好意が示されないほうが好みだ。もちろんわからないと言いつつもラブコメというジャンルの創作物なので互いが互いのことを好きになるという志向性は少なからず前提されている。ただだとしてもその過程で片方の気持ちをぼやかすことによって生まれる良さというのは必ずあるはずである。自分はそれがこの作品の面白いポイントだと思う。

あと山田の魅力として天然なところが大きなポイントだと思う。山田はモデルをやっているということもあり、同年代以上に成熟している面がある。しかしその一方で天然で無邪気な子どもっぽい一面もあり、年相応か小学生に見えるところもあると思う。個人的にはこの山田の小学生っぽい無邪気さが作品の妙な生々しさを作り出しているように感じる。

普通この手の作品は女の子側が冴えない主人公をリードするという展開になりやすい。本作もビジュアルだけ見るとそんな感じに見えるが、山田に小学生っぽい一面があるため、それだけではない味わいがある。リアル中学生ならではの子どもっぽさというか、まだ精神的に成熟していない生々しさが山田から見出せると思う。そのあたりのリアル感が個人的には好きで、この作品の魅力を構成する大きな要因だと感じる。関係あるかはわからないが、このあたりの生々しさは女性作家ならではなのかもしれない。

正直な話、この漫画は見る前と見た後で相当印象が変わった。ビジュアルだけで毛嫌いせずに見て良かったなと思う。何事も見ないとわからない。見る前に微妙そうと思っていても実際に見ると面白くて評価が変わったという作品なんて山ほどあるし、そんな体験だって何度もしているはずなのに未だにビジュアルで切り捨ててしまう時がある。これを機にもっとなんでも手を出してみようかなと思う(何度目かの決意)。

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