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新説「浦島太郎」

こんにちはトクです。

今回も拙い文章ですが創作物語(ショートショート)を書いてみたいと思います。

是非、最後までお付き合いをお願い致します。

ある所に浦島太郎と言う青年がおりました。

彼は毎日、海に出て漁をして、年老いた両親を養っておりました。

ある日のことです。

その日の漁を終えた太郎が、浜辺を歩いていると、子供達が、カメをいじめておりました。

子供達は、棒でカメをつついたり、叩いたりしておりました。

可哀想に思った太郎は、カメを助けてあげることしたのです。

「おいおい、そこの子供達、それではカメが可哀想ではないか、カメを逃がしておやり」

「なんだよ。おじさんは関係ないだろう」

そう言って子供達は、さらにカメをいじめます。

「それじゃあ、そのカメをおじさんに売ってくれないか?」

「お金くれるの?それじゃあ良いよ」

と子供達は、太郎にカメを渡しました。

「おうおう、可哀想に」そう言って、太郎はカメを海に返してあげました。

それから数日後のことです。

その日も太郎は、海に出て漁をしておりました。

そこに亀が現れました。

「太郎さん、太郎さん。私はこないだ助けて頂いたカメでございます」

「本当にありがとうございました。お礼に竜宮城にご案内したいのですが?」

太郎は、せっかくだからとカメの背中に乗って、竜宮城を訪れることにしたのです。

竜宮城では乙姫様が出迎えてくれました。

「この間はカメを助けて頂いて本当にありがとうございました。何もお構いも出来ませんが、ゆっくりしていってください」

太郎は、乙姫様の言葉に甘えることしたのです。

竜宮城では、タイヤやヒラメの舞い踊りを始めとした宴会が楽しく開かれました。

太郎は、家に帰ることをすっかり忘れるほど楽しみました。

しかし、この宴会の裏では、浦島太郎を被告とした裁判が開かれていたのです。

裁判には、太郎がこれまで漁で殺生した魚達の親族が太郎の死刑を求めていました。

一方で弁護側は、太郎に助けられたカメを証人喚問に呼んだおりました。

太郎の有罪はすでに確定しておりました。

何しろ、生計を立てる為とはいえ、今までたくさんの魚の命を奪っていたのですから。

カメは「太郎さんは、お金を出してまで私を助けてくれました。どうか寛大な処置をお願い致します」

と証言をしたのです。

今までの殺生の罪が、カメを助けただけでどれだけ減刑されるのでしょうか。

裁判員達は、再三議論する重ねた上で「太郎の人生の時間をうばう」という結論に達したのであります。

つまり、太郎の寿命を短くするということであります。

カメを助けていなければ、死刑判決は確実でありましたが、太郎が、身銭を切ってカメを助けたことが減刑の理由となったのであります。

太郎は、玉手箱を持たされて地上の世界に戻されることとなったのであります。

玉手箱には、太郎の寿命を短くする煙を入っておりました。

乙姫様は、人間の性格を知り尽くしておりました、見るなと言えば見たくなる、開けるなと言われれば開けたくなる、人間とは、そういう生き物であると。

そして「この箱は絶対に開けてはいけません」と太郎に申し付けておいたのであります。

こうすれば、必ず玉手箱を開けると、乙姫様は確信しておりました。

果たして、乙姫様の思惑通りに、太郎は、玉手箱を開けてしまったのであります。

その結果、太郎は、たちまちのうちに、お爺さんとなってしまったのであります・・・。



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