「ちえ」⑧「お泊まり」①
翌週の土曜日の10時に「ちえ」を迎えに行きました。
「おはよう、トクちゃん」
「おはよう」
「どっか行きたいとこある?」
「トクちゃんちで良いよ」
「ねえ、トクちゃんってご飯どうしてるの?」
「朝はパンで昼は出前か弁当とってる」
「夜は、どうしてるの?」
「色々だよ。スーパーの弁当買ったり、そこら辺のお店で食べたり。最近は実家行って食べることが多いかな」
「自炊とかしてないの?」
「しない、しない、俺、料理なんかできないもん」
「ふ~ん。じゃあ、お鍋とかフライパンとかもないの?」
「うん。ないよ」
「じゃあ今から、お鍋とか買いに行かない?」
「それあったら、私が料理作れるから」
「え、「ちえ」って料理できんの?」
「これでも、大学の時は自炊してたんだからね」
「よし、じゃあ今から鍋買いに行くぞ!」
「ほら「ちえ」も一緒に「鍋買いに行くぞ!」」
「ハハハ」
ホームセンターで鍋やフライパンなどを買いました。その間中「ちえ」とずっと手を繋いでいました。
「トクちゃん、どんなのが良いかなあ?」
「全然分かんないから「ちえ」にお任せします」
「ちえ」が肩をすくめて「なんか楽しいね(笑)」
「まだ、付き合い始めたばっかだけど、結婚しちゃったみたいだな(笑)」
「お茶碗とかお箸どうする?」
「「ちえ」が気に入ったので、おそろいのがあればそれで良いよ」
「あ、歯ブラシとコップも買ってこう」
「あのさあ、今日泊まって欲しいんだけど···」
「うん、良いよ。私も泊まりたいから」
「お皿とかも買わなくちゃだね」
「あ、そうだ。ご飯炊くジャーも要るよね」
「ジャーっていくら位するのかなあ?」
「そうだ、私が使ってた小さいジャーがあるから、今度それ持ってくるよ」
「それって、持ってきちゃって大丈夫なの?」
「うん、どうせ使ってないから」
「ていうかさあ、持ってくる時、お母さんになんて言って持ってくんの?」
「お母さんには、トクちゃんのこと、ちゃんと話すよ。お父さんには、まだ秘密にしとくけどね」
ホームセンターで調理器具をそろえてからスーパーに向かいました。
「お昼は、何食べたい?ご飯ないからパスタとかになっちゃうけど」
「パスタか···。焼きそばの方が良いかな」
「じゃあ、焼きそばにするね」
スーパーで、焼きそばや野菜を買いました。
その間も、ずっと手を繋いでいました。
アパートに着くと「じゃあ、私、焼きそば作るね」
「俺なんかすることある?」
「トクちゃんは、テレビでも見てて良いよ。そんなに時間かからないから」
「どう?美味しい?」
「うん。美味いよ」
「良かったあ。私ね、男の人に料理作ってあげたのって初めてなんだあ」
「元彼には、作ってあげなかったの?」
「私、男の人とちゃん付き合うのって初めてなんだ···」
「前にも言ったけど、二股かけられて振られたりしたからね」
「そっかあ···」
「「ちえ」くらい可愛ければ、モテると思うんだけどな」
「私なんか全然モテないよ」
「モテ過ぎる彼女より安心してられるけどな(笑)」
「でもさあ、高校の時の立ち位置からしたら、俺が「ちえ」と付き合うなんてありえないじゃん」
「だから、俺は凄い嬉しいし、同級生とかに自慢したいんだよね」
「トクちゃんは、私のこと振らないよね?」
「振るわけないじゃん。やっと付き合えたんだから。「ちえ」のこと大切にするって言ったじゃん」
「ありがとう」
「トクちゃん、好きだよ」
「俺だって「ちえ」のこと大好きだよ」
つづく
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