17分間

こんばんは、今日も皆さんいろいろお疲れ様です。
多分約一年くらい投稿してないと思うんですけど、ちゃんと執筆はちょくちょくしてます。
で、今日は乃木坂46 5期生ちゃんの楽曲の「17分間」という曲を題材にショートショートを書いてみました。楽曲原作のショートショートは数年ぶりに書いたんですけど、歌詞の理解深められてとてま楽しかったです!楽曲を聴きながら読んで頂けると幸いです!それではまた。


  朝7時、カーテンの裾から溢れる陽の光とけたたましく鳴り響く携帯のアラーム音で目を覚ます。朝は決して強い方ではないが、もう一度活動を止めようとする身体となんとか格闘してベッドから出る。眠い目を擦りながら洗面所で歯を磨いていると最近バスでよく見かける少女のことを、ふと思い出した。グレーの制服を見に纏い、朝日がスポットライトのように照らされ優しく咲き誇る桜のようなその横顔を僕は忘れられずにいた。着慣れた制服に袖を通し、いつもと同じ朝の情報番組を見ながらトーストを食べる。「今日ふたご座1位じゃん」母が隣で僕にそうつぶやいた。星座占いだけでなく占いやオカルトの類を全く信じていない僕だが今日は何故か身体に力が入った気がした。

 7時40分、かかとが削れたローファーをコツコツと地べたを軽く蹴りながら履き勢いよく玄関を開けた。僕の家から最寄りのバス停は歩いて約3分ほど、いつもより不思議と早歩きになっているのがわかる。バスの発車時刻は7時46分、こんなにも長い3分間があっただろうか。あたりをキョロキョロ見渡しながらバスの到着を待つ。そしてバスは坂を登り、ゆっくりと近づいてきた。朝の1番の出勤通学のピークタイム、もちろんバスは混んでいる。その奥に僕の天使は昨日と同じ窓際の席に腰掛けていた。彼女が降りるバス停までは17分間。たった17分だけこんな近くで君を見ていられる。声なんてもちろん掛けられないし、小心者の僕には近づくことも出来ないだろう。だけどそれだけで満足だ。バスの人混みの中誰かの陰で君を見失ってしまっても同じ空気を吸って同じ世界を生きていられるこの17分は僕の夢の待ち時間だ。バスが大きく右折する時、一瞬だけ君と目が合った。高嶺の花であることは分かっているし、ストーカーみたいで少し気持ち悪いけど僕は彼女のことが大好きだ。

 今日の彼女はポニーテールだ。世界一似合っている。異論は認めない。もちろん昨日のツインテールだって本当に可愛かったけれど、そんなバスの中での毎日が僕の頭の中で君の写真集を完成させるように埋まっていく。どんな時だって一瞬一瞬を楽しんでいるように笑っているから、僕の退屈で色褪せた平凡な毎日を色付けて幸せな気持ちにしてくれる。せめて数分間、もう少しだけ余裕があったらこの想いを君に伝えるアイコンタクトを考えよう。この恋の叶え方、どうすればいいのだろう。そんなことを考えていたら彼女のバス停はもう目の前だ。今日も切なく君の背中を見送るだけのもどかしい日になってしまうのだろうか。そしてとうとうバスがゆっくりと停車し彼女がゆっくりと出口に向かって歩き出す。しかし今日も諦めムードの僕の頭の中と彼女を想う僕の本能は、後者が勝利していた。「僕も降ります!」急いで鞄を持って出口に向かった。10代の青春とは本当にせっかちなものだ。先にバスを降りた彼女の背中を目指して小走りで走り出す。僕が彼女に告白するまでのカウントダウンが始まった。

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