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実写版「幽☆遊☆白書」は、日本のマンガとNetflixコラボの成功パターンを確立するか

週刊少年ジャンプの大ヒット漫画「幽☆遊☆白書」の実写版の配信開始日が12月14日であるとNetflixから発表され、ネットを中心に話題になっています。

現時点ではまだタイトルロゴが公開されただけで、Netflixのサイトにも主人公である幽助の必殺技の霊丸(レイガン)らしき15秒のティザー動画がアップされているだけの状態ですので、原作ファンの方も期待と不安が半々という方が少なくないかもしれません。

一方で、今回の実写版「幽☆遊☆白書」が成功することができれば、今後の日本のマンガの実写化に弾みがつくことは間違いありません。

そのポイントと、過去の経緯をここでご紹介しておきたいと思います。

キャスト発表時には批判の声も

実は、Netflixによる「幽☆遊☆白書」の実写化が話題になったのは今回が初めてではありません。

1年前の7月に、Netflixから実写版のメインキャストが発表されており、その際には一部のコアなファンからあがった批判の声を元に、ネガティブな記事が複数執筆されていた状況がありました。

しかし、それから1年。今回の配信日開始のリリースに際しては、ポジティブに取り上げている記事が多く、ネガティブな声をメインに書いている記事はあまり出てきていないようです。

実際に公開されている情報はほとんど変わっていないのに、これだけ状況が違っているのには2つ大きなポイントがあります。
 

実写版「ONE PIECE」の成功

まず、間違いなく大きいのは、8月31日に同じくNetflixで公開された実写版「ONE PIECE」が世界的にも大成功したことでしょう。

実写版「ONE PIECE」も、実写化が発表された当初は、過去の日本のマンガの実写の失敗や、Netflix自身の実写化の打ち切りなどの事例が引き合いに出され、同様に失敗する可能性が高いという文脈で報道するメディアが少なくありませんでした。

しかし、そうした不安や批判の声をはねのけて、実写版「ONE PIECE」が成功を成し遂げたことで、Netflixによる実写化に対する日本のマンガファンの視点は大きく変わったことは間違いないでしょう。

現時点では、「ONE PIECE」同様に、「幽☆遊☆白書」に成功することを期待するファンの声は、SNS上にも多く見つけることができます。
 

ファンが多い作品の公開前は、批判的な記事が書きやすい

また、もう一つ大きいのは、こうしたファンが多い作品の映像化において、作品が公開される前の段階は、批判的な記事が非常に書きやすいという点です。

前述したように、昨年のNetflixによる「幽☆遊☆白書」実写版のキャスト発表の際には、4枚だけ公開されたキャストのアート写真を元に、一部ファンの不安の声をメディアが取り上げて記事化し拡散したことで、さらに原作ファンの不安が煽られるという現象が起こりました。

実際に当時のNetflixのSNS投稿のコメント欄には、ネガティブなコメントが少なくないことが確認できます。

これと同様の現象は、映画「THE FIRST SLAM DUNK」の声優陣が発表された際にも発生しましたし、アニメ「鬼滅の刃」においても、続編の発表がされる際に、入浴シーンに対する一部のネガティブな声を拾って炎上を事実化する記事が散見されています。

ただ、皆さんもご存じのように、映画「THE FIRST SLAM DUNK」は公開前の炎上騒動などなかったかのように大ヒットしましたし、アニメ「鬼滅の刃」も入浴シーンが大きな問題になることはありませんでした。

原作ファンが多い作品に関しては、ネットメディアが批判的な記事を書くことで、ファンが注目し、議論が高まることでアクセスが稼げるという手法が存在してしまっているわけです。

本来、作品自体を観ずにキャストの写真だけで作品の善し悪しは評価できません。
当然今後本当に重要なのは、実写版「幽☆遊☆白書」が、ファンの期待を上回る完成度になっているかどうかという点でしょう。
 

海外で「今際の国のアリス」に匹敵するヒットとなるか

特に、実写版「幽☆遊☆白書」で注目したいのは、海外のNetflixユーザーにどれぐらい受け入れられるかという点です。

実写版「ONE PIECE」は1話あたり25億円を超えるとも言われる多額な予算が投じられ、Netflixのハリウッドのチームやキャストで制作をされたことが大きく注目されました。

一方、実写版「幽☆遊☆白書」は、制作を日本の制作会社である「ROBOT」が担当しており、キャストも日本人であることから、同じNetflix制作でも別物と考える方は少なくないようです。

ただ、実はこの実写版「幽☆遊☆白書」のプロデューサーを担当されている森井輝さんと制作会社「ROBOT」のタッグは、Netflixの日本制作の実写ドラマで最大のヒットとなっている「今際の国のアリス」を成功させたチーム。

既に、日本のマンガの実写化に何度も成功しているチームということができるわけで、実績からは十分に期待ができる体制と言えるでしょう。
 

Netflixならではの「グローバルワンチーム」

筆者は先日、Netflix側のエグゼクティブ・プロデューサーである坂本和隆さんにインタビューする機会をいただきましたが、その時に坂本さんがNetflixでは「グローバルワンチーム」で取り組んでいることを強調されていたのが印象的でした。

実写版「ONE PIECE」と、実写版「幽☆遊☆白書」は、一見クレジットをみると、制作チームのメインがアメリカと日本で全く違うプロジェクトのように見えますが、実はNetflixの中ではどちらも日米で協力し合って制作にあたっているんだとか。

あくまで「ONE PIECE」は世界観として、ハリウッドが向いているからハリウッドのスタッフやキャストがメインで制作したが、「幽☆遊☆白書」は日本の世界観に近いから日本人キャストがメインで制作するという考え方なんだそうです。

ハリウッドで制作しようが、日本で制作しようが、Netflixとしては「グローバルワンチーム」で制作しているし、世界のNetflixユーザーに届けることには変わりが無いと言うことでしょう。
 

Netflixはマンガの実写化の成功パターンを確立するか

その視点で、海外の反応を見ると、Netflixの英語アカウントに投稿された実写版「幽☆遊☆白書」の予告投稿には、日本語投稿に近い規模のリアクションがあり、多くの海外のアニメファンの期待のコメントが投稿されていることが分かります。

また、キャストのビジュアルも海外ファンには好意的に受け止められているという記事も出ているようです。

コンテンツの視点からのNetflixの最大の魅力は、数百万人と言われる日本のNetflixユーザーだけでなく、2億4千万を超えるとも言われる世界中のNetflixユーザーに届く点です。

実写版「ONE PIECE」が、たった2週間で2億8千万時間という驚異的な視聴時間数を叩き出したように、海外の「幽☆遊☆白書」を知らない人たちが、どれぐらいこの実写版「幽☆遊☆白書」を楽しんでくれるかがポイントになると言えるでしょう。

また、Netflixが「今際の国のアリス」「ONE PIECE」に続き、「幽☆遊☆白書」の実写化にも成功すれば、Netflixが日本のマンガ作品の実写化における成功パターンを確立したことの証明と言えることになります。

日本にはたくさんの大ヒットマンガがありますから、今後も続々と日本のマンガやアニメがNetflixとコラボして、世界のファンに拡がる流れが生まれるはずです。

実写版「幽☆遊☆白書」の実際の公開は12月14日と少し先にはなりますが、今から少しずつティザー動画などが増えてくるのを楽しみにウォッチしたいと思います。

この記事は2023年10月15日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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