見出し画像

ユーチューバーの炎上商法を、グーグルはいつまで放置するのか

この記事は2018年12月21日にYahooニュース個人に寄稿した記事の転載です。

 ユーチューバーと言えば、今や小学生のなりたい職業トップ10に食い込む人気の職業ですが、一部のユーチューバーによる騒動も残念ながら増える傾向にあるようです。

 直近で象徴的な騒動と言えるのは、先月末にユーチューバーのラファエル氏が投稿した動画で、利回り80%超えと紹介して物議をかもしていた水耕栽培投資動画でしょう。
 この低金利時代に利回り80%というと、普通の人は耳を疑うわけですが、ラファエル氏は、動画やSNS中で全力でこの事業をオススメ。
 物議を醸してバズフィードが問題提起をした関係もあり、最終的に水耕栽培事業社側の依頼で動画を削除するという形になったようです。

 ただ、ここで気になるのは、水耕栽培事業社側は一応誤解を招いた点については謝罪をしているのに対して、当の動画をアップしたラファエル氏は一切の謝罪や反省の言葉を口にしていない点。
 それどころか、12月6日の段階では「なんで謝罪せなアカンねん」「台本じゃボケ!」と、さらなる炎上を望むかのような発言をしていたそうです。

 ラファエル氏は、動画の中の発言が「台本だから」許されるという趣旨で発言しているみたいですが。

 本来は、動画の中の発言が台本ということになると、実は問題の根は深くなります。

 たまたまロケで寄った時に説明されて、素の感想を口にしたのであればまだしも。
 最初から、番組の中で水耕栽培への推奨を目的とした台本が書かれていたのであれば、バズフィードの記事で田上弁護士が指摘しているように、あきらかな勧誘行為と認識されるでしょう。

 さらに、もしその台本で広告費が支払われた上で、広告の台本として読んでいたのであれば、明確なステマになってしまいます。
 もちろん、これが広告だったのか、ただの取材だったのかは今となっては当事者にしかわかりませんが。
 

■サービスを紹介した芸能人も責任を問われたペニーオークション事件

 この手の楽に儲かる系の話題を有名人が推奨して大炎上した事例というと、有名なのはペニーオークション詐欺事件でしょう。

 2012年にペニーオークションサイトの運営会社の役員と社員が逮捕されたことで、その2年前の2010年頃に、このサービスをブログで紹介していた複数の芸能人が明らかなステマを行っていたことが判明。
 特にほしのあきさんには批判が集中し、警察から軽犯罪法違反で事情聴取を受けたこともあり、表舞台から完全に消える結果となりました。


  もちろん、現在のところ水耕栽培事業社がうたう80%の利回りが完全にウソと決まったわけではありませんから、単純にペニーオークション詐欺事件と比較するのは間違っていますが。

 
 少なくとも、こういった画期的な投資系のサービスを紹介するのは、紹介するメディアやインフルエンサーにとってもリスクが高いというのが一般的な認識です。
 おそらくラファエル氏がユーチューバーではなくテレビに出演している芸能人だったら、今回の騒動がきっかけで、何らかの謝罪をする羽目になっていた可能性は高いと思われます。

 それが、ラファエル氏においては謝罪どころか、逆に挑発的な言動を繰り返せるのには、テレビと異なるYouTubeの広告モデルの特徴が反映されていると言えるでしょう。

■ユーチューバーは炎上した方が儲かる?

 テレビにおいては、番組を作っているテレビ局の判断に大きな影響を与えるのは、スポンサーである広告主企業です。
 当然広告主は、自分達のCMが評判の悪い番組で流れるのを嫌いますから、問題のある発言をする番組は改善を求められますし、問題のある行動をした芸能人は、ほしのあきさんやTOKIOの山口さんのように、あっさりとテレビ番組から干されてしまうわけです。

 ただ、YouTubeにおいては、番組を作っているのはユーチューバー本人。
 さらに、広告収入は基本的に再生回数が増えれば連動して増える形になります。
 感動的な動画であろうが、炎上している動画であろうが、基本的には再生回数が増えれば増えるほど得をするわけです。
 
 ラファエル氏にしても、今回の動画が騒動になり、メディア露出が増えれば増えるほど、私のようなラファエル氏の動画を見たことがなかった人間も、つい火事場を見に行ってしまって再生回数の増加に貢献してしまうわけで。
 それらは全て、ラファエル氏にとっては収入が増える効果を生む、打ち出の小槌となるわけです。
 まさに文字通りの炎上商法と言えるでしょう。

■ラファエル氏は大炎上を既に経験済み

 さらにこの問題の根が深いと感じるのは、ラファエル氏が既に一度大炎上をしているユーチューバーであることです。

 ユーチューバーの炎上騒動と言えば、1年前のヒカル氏によるVALU炎上騒動が記憶に新しい方も多いと思いますが、実はこのラファエル氏は当時ヒカル氏と一緒に謝罪をし無期限活動休止に追い込まれたユーチューバー事務所「NextStage」のメンバーでした。

 結局、3人とも、無期限活動休止という言葉とは裏腹に、2ヶ月半程度ですぐに活動を再開するわけですが、ここでこの謝罪をした3名は、二つの違う道を選択します。

 ヒカル氏とラファエル氏は、引き続き過激な活動を続けることを選択し。
 禁断ボーイズは、無理せずゆっくりと歩む選択をしたようです。

 ただ、その結果、禁断ボーイズの過激な動画のファンからは、禁断ボーイズは「落ち目」と指摘されている面もあるようです。

 過激な行為をした方が、少なくとも再生数は集まりやすいという非常にわかりやすい事例と言えるでしょう。

 ラファエル氏からすれば、一度、もう一生ユーチューバーをできないのではないか、というぐらいの大炎上をVALUで経験しているわけです。
 でも、実際には、そこから2ヶ月半で復帰できたわけで、その経験が、逆にちょっとした炎上は自分にとってリスクではないという自信を深める結果になっているということなのでしょう。

 なにしろ「人でも殺さん限り炎上せえへん」と恐ろしく過激な発言もしているようですから、少々の炎上なら復帰できるという自信の深さがうかがえます。

 ある意味、テレビとは異なる誰でも自由に情報発信できるYouTubeならではの現象でもあり、メリットでもあると言えます。
 本人が確信犯である以上、外野が不適切だとか不謹慎だとかやいやい言っても意味は全く無いわけです。

 こうやって記事で取り上げること自体、本人へのアシストになってしまうという面もあります。

■YouTubeとGoogleは過激化問題をどう考えているのか

 ただ、やはりここで注目すべきは、YouTubeというプラットフォーマーを運営するGoogleが、今後こういったユーチューバーの過激化問題にどう対応していくのか、という点でしょう。
 私自身も、ユーチューバーが好きな小学生の子供を持つ親の一人ですが、こういう話を聞いてしまうと子供に自由にYouTubeを見させたいとは正直思えません。

 今年の初めに人気ユーチューバーのローガン・ポール氏が、富士の樹海で自殺者の遺体の動画を投稿し、大きな非難を浴びたのが記憶に新しい人も多いはずです。

 この騒動においてはローガン・ポール氏も、殺到する批判に謝罪する事態に追い込まれましたが。

 復帰後、すぐにネズミの死体や鯉への残虐行為などをアップロードしていました。

 結局、世界的に一部のユーチューバーが過激な動画に走る傾向があるのは同じというわけです。

 これに対して、YouTube側はまだスリーストライクではないからという趣旨の説明をしていましたが、こうしたGoogle側の姿勢に広告主が敏感に反応し始めているのも事実です。

 このYouTubeの基本姿勢は、実はヨーロッパで大きな批判を集めることになったヘイト広告への広告出稿問題と構造は変わりません。

 こうした倫理感の境界線に対する問題提起は、いつどこで爆発してGoogle側のビジネスに影響を与えないとも限らないわけです。

 2年前に日本でもAbema TVのヘイトスピーチ的な番組に広告が表示されたことで広告主が批判されるという出来事もありましたが、今後ユーチューバーの騒動の動画にたまたま広告が表示された広告主が、同様に批判の矢面に立たされるという事態も当然ありえます。

■プラットフォームの方針次第で流れは変わるはず

 もちろん一方で、方針を変更した禁断ボーイズや、当初から過激なことには手を出していないHIKAKINさんのように、真面目に動画に取り組んでいるユーチューバーもたくさんいるわけで。
 ヒカル氏やラファエル氏が炎上する度に、ユーチューバー全員のイメージが悪くなってしまうのは、ユーチューバー業界全体にとっても大きな問題なはずです。
 
 実は、プラットフォームが本気になれば、こういった問題は大きく改善する可能性があります
 3年前にメディア業界の大きな問題となっていたステマ記事広告問題の解決の突破口となったのは、Yahoo! ニュースが自らのグループ会社も含めてステマ記事撲滅の宣言をしたことでしたし。
 違法コピペメディア問題も、WELQ騒動後にGoogleが検索ロジックの大幅変更をして、流れが変わったように思います。

 ユーチューバーの過激化問題についても、YouTubeやGoogleが明確な方針を示したり、広告収入のモデルを単純な再生回数方式から変更することで流れを変えることはできるはずです。

 ユーチューバーという、自社のプラットフォームの名称を冠した人気ユーザー達が、このままより過激になって騒動を起こし続けていくことを、YouTubeやGoogleは、このまま黙認し続けるわけにはいかないのではないかと感じるのは、きっと私だけではないはず。

 子ども達が安心して見れるYouTubeになってくれる方向で、YouTubeやGoogleが早期に方向転換してくれることを、個人的にも心の底から祈っております。

この記事は2018年12月21日にYahooニュース個人に寄稿した記事の転載です。


ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。