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「ファクトフルネス」は、2019年に日本人がまず真っ先に読むべき1冊だと言えると思います。

書籍「ファクトフルネス」は、TEDトークで、データに関する伝説のプレゼンテーションを遺したハンスロスリング氏が書いた書籍です。

彼のプレゼンテーションは、TEDトークの数ある人気プレゼンの中でも、私のダントツのお気に入り。

この動画の4分ぐらいからの1分間なんか芸術ですよね。

私たちが昭和の頃から思い込んでいる発展途上国という概念が、もはや適切ではない言葉であることを思い知らせてくれる楽しいプレゼンですし。
こんなにデータを分かりやすく楽しく見せてくれるプレゼンを見たのはこの時が初めてでした。

たぶんこのプレゼンを初めて見たのは2007年だったと思いますが、今でもあの時の感動は手に取るように思い出せます。

そんなロスリング氏の書籍が出たということで、日本語版が出るのを楽しみに待ってたんですが。
光栄なことに中川さんから一足早く献本いただいたので、早速読ませていただきました。


結論から言うと、この本は「全ての人」が読むべき本だと言えます。

正直、「全ての人」とか書くと、自分ごとに思えなくて大げさな映画の宣伝みたいにしか聞こえないと思うんですが、この本に関しては、本当に心の底から「全ての人」と言えます。

本の帯に「賢い人ほど世界の真実を知らない」とありますが、象徴的なのがチンパンジーテスト。

冒頭にある世界の変化の常識に関する三択の12の質問を素で回答すると、世界中の人のなんと90%が、答えが全く分からないチンパンジーに負ける、という事実です。

いかに日々の報道や幼少期の教育によって、私たちが間違った事実を信じ込んでしまっているかという非常に分かりやすいデータです。

詳細は、是非本書を手に取って読んで頂ければと思いますが。
この数年、いろいろとメディアのあり方とかブログの書き方について、悩みに悩んでいた私の場合は。
ようやく見えてきたと思っていた悩みの出口を、この本があっさりと照らしてくれました。

この書籍では、「世界はどんどん悪くなっている」というのは、とんでもない勘違いだとロスリング氏がデータを元に明らかにしてくれます。

特に分かりやすいのは、国を「先進国」「発展途上国」と大雑把に分けるのではなく、所得を4つのレベルに分けて、そのレベルの変化がいかに人間の生活の質を変えていくのかという具体的なデータに基づく説明。
その視点で見ると、世界は明らかに良い方に変化してるんですよね。

災害の死亡者数も減ってるし、極限の貧困は減り、人口の増加にも歯止めがかかるのが見えてる。

私自身、20年ぐらい前にプチバックパッカーとして東南アジアを中心に旅行をしていたので、それぞれのレベルの変化のイメージが非常にクリアに湧きました。

本書でロスリング氏は、世の中を
ドラマチックすぎる世界の見方」で見るのではなく
ファクトフルネス」つまり「事実に基づく世界の見方」で見る習慣をつけるべきだと説いています。

人間には瞬時に何かを判断する本能と、ドラマチックな物語を求める本能があり、どうしても「ドラマチックすぎる世界の見方」をしてしまう。

ただ、それは我々一人一人が「事実に基づく世界の見方」をするようになれば変わるはず。
それがロスリング氏がこの書籍にかけた想いだと感じました。

「ファクトフルネス」という英語が、どうしても日本人の私には直感的に理解できないのですが。
事実に基づいて世界を見なさい」というのが、ロスリング氏が繰り返し述べている話です。

ちなみに、そんな世界の誤解を無くすための試みの一つとして、こんなサイトも開設されています。

私自身の「世界の誤解」の実体験は、狭いネットやソーシャルメディアの話にしかすぎませんが。
年々ネットを起点とした炎上のニュースが増え、昨年はついにHagexさんが刺殺されるという事件までおこってしまい、ついついネットの世界はどんどん悪くなっている、と思い込んでしまっていたのが事実です。

ただ、去年1年色々と考えて気がついたんですが。
ネットの利用者数とか、ソーシャルメディアの利用者数が増えれば、ネットの世界も通常の社会と同様に様々なトラブルが発生するのは当たり前なんですよね。

一般論としてはそう思っていても、ついつい日々の炎上のニュースに触れすぎてしまい、本能的に変化をネガティブに思い込んでしまっていたように反省しています。

冷静に考えてみたら、ソーシャルメディアやブログで情報発信をする個人は15年前からは考えられないぐらい増えてますし、それによってメリットを受けている人は数え切れないぐらいいるはず。

昨年のメディアミートアップで、ピースオブケイクの加藤さんに、最近のnoteでユーザーが体験した良い話の数々を色々教えてもらい、それは確信になりました。

でも、そういう小さい1人1人の変化や幸せは「ニュース」にはならないんですよね。
あくまでネットメディアで記事になるのは、炎上やトラブルのニュースばかり。

これはなにもメディアが悪いのではなく、そもそも人間というのはそういう生き物なのだ、というロスリング氏の説法は、この数年の私の悶々とした悩みを綺麗さっぱり洗い流してくれました。

自分が炎上のニュースをブログで取り上げ続けているのは、炎上を拡散したいわけではなく、同じような過ちをする人が減って炎上のニュースが減って欲しいという思いで書いてきたんですが。

あらためて、これからは炎上のニュースを取り上げる際の取り上げ方や切り口は注意したいと感じましたし。
ファクトフルネスを実践する人が増えることで、炎上をいたずらに煽ってページビュー稼ぎをするメディアを減らすことも可能なのではないかという気がしてきました。

先日英語版のクラウドファンディングを成功させたコレスポンデントのスロージャーナリズムや、電通総研のオープンラウンドテーブルでお話しを聞いた北海道テレビのこの20年の取り組みなんかも、その1つな気がします。

冷静に考えれば、ネットの世界も悪くなってばかりではなく、確実に良い方に変化するための動きも出てきているんですよね。

あらためて、そんなことを気づかせてくれる、この本を書いてくれたロスリング氏と、日本語版を出してくれた日経BP及び関係者の皆さまには感謝しかありません。

ちなみに冒頭に、遺したと書いたのは、残念ながら誤字ではなく。
ロスリング氏は、この書籍の執筆中に亡くなり、この本が最後の遺作となりました。

ただ、超多忙だったロスリング氏が執筆に残りの人生を捧げることができたのも、病気により余命が短いことがわかったから。

ある意味、ロスリング氏が不慮の事故で急に亡くなってしまうのではなく、余命が宣告される病気にかかったことで、この本が生み出されたというのは、我々にとっては幸運だったのではないか、と感じてしまうのは不謹慎でしょうか。

この本を読んだ人が一人でも増えると、確実に世界は少しずつ良くなるのではないか。
そんなことを感じられる、今年絶対読むべき一冊だと思います。


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