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海外でもヒットのCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」に学ぶ、世界への扉の開き方

日本のヒップホップユニットであるCreepy Nutsがリリースした「Bling-Bang-Bang-Born」という楽曲が、世界の様々なチャート入りの快挙を成し遂げています。

この「Bling-Bang-Bang-Born」は、TVアニメ「マッシュル-MASHLE-」の第2期のオープニング・テーマとして1月7日にリリースされたばかりの楽曲です。

それが、1月15日のSpotifyのグローバルチャートでは80位に入る快挙を達成。
Creepy Nutsの松永さんが驚きとともにXに投稿したことで、日本でも様々なメディアに取り上げられる流れになります。

その後、Spotifyの日本のデイリーチャートで1位になったほか、Billboardの海外で聞かれている日本の楽曲でも8位に初登場。
さらに日本だけでなく、台湾やチェコ、インドネシアのiTunes Hiphopチャートで1位になるなど、海外の様々なランキングにも登場してきており、Spotifyのグローバルチャートも69位まであがってきているのです。

徒然研究室さんがXに投稿されたグラフを見ると、非常に様々な国や地域で再生回数が増加していることが良く分かります。

(出典:徒然研究室)

この楽曲のヒットは明らかに、この「Bling-Bang-Bang-Born」がTikTokを中心とした「踊ってみた」系のコミュニティを狙って作り込んだことが成功したためと言えます。

ただ、興味深いのは、明らかにこの楽曲が、Creepy Nutsやアニメ関係者の方々の想定を超えたスピードで海外に広がったと想像できる点です。

「#BBBBダンス」の流行を狙って成功

実際に楽曲を聴いて頂ければ明らかですが、「Bling-Bang-Bang-Born」のサビの部分は非常に中毒性の高い楽曲になっており、YouTubeの楽曲タイトルにも最初から「#BBBBダンス」とダンス動画をアップしてもらうための公式ハッシュタグが挿入されています。

また、楽曲がアニプレックスのYouTubeチャンネルに公開されてからは、何本もの声優の方々の公式の「踊ってみた」動画がTikTokやYouTubeにアップされています。

こうした努力が、今回の楽曲のヒットにつながったのは間違いないでしょう。
実際にTikTokではすでにこの「Bling-Bang-Bang-Born」を使った動画の本数は4万5千本を超えており、100万回以上再生されている動画が大量に存在します。

(出典:TikTok)

昨年大ヒットしたYOASOBIの「アイドル」は、公開2週間後のTikTok動画の数が6万件ぐらいでしたので、「アイドル」は超えていないまでも、かなり近い規模の拡がりを見せていると言えるわけです。


公式のキャンペーンを超えた拡がりに

ただ、アニプレックスやマッシュルの公式アカウントが「#BBBBダンス」という日本語のハッシュタグを軸にキャンペーンを展開していたのに対し、このCreepy Nutsが生み出した楽曲の力は、明らかにそこを超えたバイラルをTikTokやYouTube上に生み出しています。

実際にTikTokでハッシュタグ別の動画の再生数を見てみると、公式のハッシュタグである「#BBBBダンス」の動画による再生数は合計で1670万程度に留まっているのに対して、楽曲名の「#blingbangbangborn」の動画による再生数は合計で1億を超えており、楽曲の力が日本語の公式ハッシュタグの影響力を遙かに超えて様々な国への拡がりを生んでいることが分かります。

(出典:TikTok)

明らかに、キャンペーンを知らない動画投稿も多数ありますし、アニメすら知らない人にも拡がりを見せているのが、TikTokならではの現象と言えるでしょう。

今年は、元日にリリースされたNumber_iの「GOAT」が、いきなりYouTubeで世界1位を獲得したのも印象的でしたが、その際にNumber_iが実施していたように、最初から海外を意識して英語でのハッシュタグや英語での発信をしていたら、さらにこの話題化を加速する結果になったかもしれません。


アニメファンによる拡がりがベースに

また、こうして、今回の「Bling-Bang-Bang-Born」が海外に広がっているのは、世界に広がっているアニメファンがベースにいる点もポイントと言えます。

象徴的なのは、YouTubeの公式MVの再生数が900万回を超えている現段階で、アニメファンの方がYouTubeにアップしているローマ字での読み方付きの動画が400万近く再生されている点です。

原曲の歌詞が日本語であるということもあり、歌詞の読み方や意味を理解したいという海外の方のニーズが高いことが分かる現象と言えます。

実際に、徒然研究室さんが分析した世界での話題の傾向を見ると、日本のアニメの人気が高いアジアやヨーロッパだけでなく、南米でも大きな話題になっていることが分かります。

(出典:徒然研究室)

昨年は、アニメ「チェンソーマン」の主題歌を提供した米津玄師さんが、アメリカの今年を代表するアーティストに日本人で初めて選出されたように、日本語の楽曲がそのまま海外で聞かれるケースも増えてきています。

楽曲の人気とアニメの人気の相乗効果によって、お互いのファンがさらに増えることも期待できるわけです。
やはり、日本の音楽にとって、TikTok経由での話題化と、アニメタイアップの組み合わせは、世界にファンを増やすアプローチとして王道と言えるルートになっていると言えるでしょう。

まだ「マッシュル-MASHLE-」の第2期もはじまったばかりですし、「Bling-Bang-Bang-Born」も、まだリリースされて2週間。
これから、どこまで海外に拡がりを見せるのか楽しみにしたいと思います。

この記事は2024年1月21日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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