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ドラクエウォークは、ポケモンGOの牙城を脅かす存在になるか

この記事は2019年9月16日にYahooニュース個人に寄稿した記事の全文転載です。

ドラゴンクエストの新しい位置情報ゲーム「ドラゴンクエストウォーク」が、先週9月12日にサービス開始しました。

サービス開始の翌日には、App Storeセールスランキングで、モンストやポケモンGOなど並み居る強豪を抑えて1位を獲得。
ダウンロード数も2日で300万を突破した模様です。

3連休というタイミングもあり、この連休は私自身も含めて、そこら中でドラクエウォークをプレイする人の姿を多数発見することができましたし、Googleの検索回数の推移を見てみると、ドラクエウォークの検索数が、一気にポケモンGOに迫る勢いで伸びていることが分かります。

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実際に筆者もこの3日間プレイしてみましたが、位置情報ゲームでありながらもドラクエの世界観を普通に楽しむことができますし、ポケモンGOなどライバルの要素も多数取り入れていた、後発ならではの完成度の高さも感じることができるゲームだと思います。

こうなると気になるのが、果たしてドラクエウォークは、ポケモンGOが君臨する位置情報ゲームの市場に割って入る存在になれるのかどうかという点でしょう。

■ながらくポケモンGOが君臨してきた位置情報ゲーム

スマートフォンの位置情報を活用したゲーム、通称「位置ゲー」は、2016年7月に開始された「ポケモンGO」が大ヒットし、一躍注目を浴びるようになった分野です。

何しろポケモンGOは2016年だけで9億5000万ドルと、日本円で1000億円以上を売り上げ、1年間で累計7億ダウンロードを超えたと言われているオバケコンテンツ。
ポケモンGOの開発会社であるナイアンティックは、元々2012年からGoogleの社内スタートアップとして位置情報ゲームの「Ingress」を運営していたノウハウと高い技術を持っており、位置情報ゲームの分野では圧倒的な存在感を誇っています。


もちろん、ポケモンGOの大ヒットをきっかけに、位置情報ゲームの分野にはこの3年間、様々な新規参入が行われてきました。

例えば、2018年6月には、パズドラで有名なガンホーとレベルファイブが妖怪ウォッチの世界観の位置情報ゲーム「妖怪ウォッチ ワールド」をサービス開始して注目されましたし

2018年11月には、ニコニコ動画の運営元であるドワンゴが、「テクテクテクテク」という独特な世界観の位置情報ゲームをリリース、テレビCMを展開するなど話題になりました

ポケモンGOの開発会社であるナイアンティックも、2018年11月には「Ingress」の新版となる「Ingress Prime」をリリース

さらには今年6月に新たにハリーポッターの世界観を再現した位置情報ゲーム「ハリー・ポッター:魔法同盟」をサービス開始しています

ただ、いずれのゲームも、サービス開始直後は注目されたものの、日本ではムーブメントと言うほどの話題にはなっていませんし。

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「テクテクテクテク」に至っては、1年ももたずにサービスが終了する結果となっています。

単純にGoogleの検索数で比較してみても、今回のドラクエウォークは、それらのゲームを大きく上回る話題になっていることが伺えます。

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何しろ、ドラゴンクエストと言えば、RPGシリーズの累計出荷数と配信数を足し上げると7600万本を超えると言われるメガコンテンツ。

さすがにポケモン関連ゲームソフトの累計出荷数3億4000万にはかないませんが、幅広い層にゲームプレイ経験者がいる、潜在的にも市場規模が大きいコンテンツなわけです。

妖怪ウォッチワールドが、サービス開始から3日間で50万ダウンロードで、200万ダウンロードを超えるのに3ヶ月かかっていたり、テクテクテクテクがサービス開始直後の四半期売上高が900万円に留まっていたということを考えると。
ドラクエウォークが最初の3日間で300万ダウンロードを超え、App Storeでセールスランキング1位に輝いているのは、かなりの快挙と言えるでしょう。

今後、はたしてドラクエウォークが、この勢いを維持したままポケモンGOの牙城に食い込むことができるのか。
注目すべきポイントは3つあるように思います。

■課金のサイクルを継続させることができるか
■コアなドラクエファン以外を取り込むことができるか
■海外に展開していくことができるか

一つ一つ見ていきましょう。


■課金のサイクルを継続させることができるか

分析データによっても異なるようですが、現在のところ、ドラクエウォークはApp Storeのセールスランキングの上位を守りつづけているようです。

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通常セールスランキングというのは、モンストやパズドラ、ポケモンGOのように、既に大量のユーザーがいて、継続して課金の仕組みが回り続けているゲームがトップを独占していますから、その中で公開されたばかりのドラクエウォークが1位に飛び込んできたというのは、間違いなく凄いことです。

ただ、個人的に気になっているのは、ドラクエウォークの課金がゲームの構造上、いわゆるガチャで武器や防具などの装備を出すことに使われるのが中心になっている点。

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装備がガチャで課金要素になっていることに批判もあるようですが、課金をしなくても普通にプレイは進めることができますし、一旦強い装備がそろってしまえば継続的にガチャを回し続ける必要性は下がる構造になっている印象です。

マイレージという継続してポイントを効率的に集める仕組みにも、課金が連動しているので、こちらが習慣化すればある程度の継続課金は見込めるかもしれませんが、現在のところポケモンGOほど初期の課金の必要性を感じないのが正直なところ。

事業の継続性を考えると、この課金率を維持できるかどうか、また逆に課金に誘導しすぎて無課金ユーザーの離反を招かないかどうかが、重要な注目ポイントの1つと言えるでしょう。
レベル上げは50で一旦頭打ちになるようですし、その先は、課金して強い武器を手に入れないと絶対に倒せない敵が出てくる未来とかは、あまり想像したくありません。


■コアなドラクエファン以外を取り込むことができるか

また、ドラクエウォークは、文字通りドラゴンクエストの世界観が再現されている位置情報ゲームです。

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クエストの攻略こそ移動が必要ですが、モンスターとの戦いは家にいたままでも実施することができ、その戦いは普通のドラクエと同様コマンド式。
オートバトルという自動で戦ってくれるモードがあるので、放置プレイも可能にはなっていますが、HPやMP、呪文や道具の選択など肝心なところではある程度ドラクエ的RPGの知識は必須な印象で、基本的にはドラクエファンを対象にしているゲームと言えるでしょう。

ポケモンGOでは、ボールを投げてポケモンをつかまえるだけ、という通常のポケモンバトルとは異なるシンプルな方式を選択し、ポケモンを知らないシニア層も含めた幅広い層を対象にすることに成功しましたが、ドラクエウォークがドラクエを知らない層に広がるかは未知数と言えます。

また、ドラクエウォークでは、どうしても「レベル上げ」の作業が必要になってきます。

ポケモンGOはあくまでポケモンを収集するだけでも楽しめたため、レベルは付加的な要素でした。
一方ドラクエウォークでは、通常のドラクエがストーリーやクエストの「クリア」を前提としているのと同様、ストーリーのクリアが基本となります。

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これが中盤以降から難易度を増していくのですが、レベルが上がるにつれてレベルアップに必要な経験値が急速に増えていくため、必然的に雑魚キャラとえんえんと戦って経験値をためるという地道な「レベル上げ」の作業に時間が取られるようになってくるわけです。
筆者は元々ドラクエのレベル上げが嫌いなタイプだったので、既にレベル20を超えたあたりから、レベル上げを面倒に感じ始めていますし、このハードルをゲーマーではない人が乗り越えられるかは微妙な印象です。

もちろん、ドラクエファン層の広さを考えれば、無理にポケモンGOほどの幅広い市場を狙わなくても、コアなドラクエファンにしっかり継続してプレイしてもらう方に特化するのも、選択肢としては正しい気はします。
その場合は、浅く広くではなく、狭く深くドラクエファンにアピールし続ける形になるかもしれません。


■海外に展開していくことができるか

ドラクエウォークの可能性を考える上で、個人的に1番残念なのが、現在のところは海外展開の計画がないという点です。

6月の日経ビジネスのインタビューでも、スクウェアエニックスの松田社長は「ドラクエウォークを海外市場へ展開するのは難しいと感じている。」と名言しています。

おそらく、海外ではまだまだ日本式のRPGのファンが少ないため、ユーザーの拡がりが見込めない点が大きいのでしょう。

位置情報ゲームにおいては、通常のスマホゲームと異なり、地図情報を利用することもあり、サービス展開をする国数が多ければ多いほどコストも手間もかかります。
ドラクエウォークには複数のユーザーで集まってメガモンスターと戦うという、ポケモンGOでいうレイド的な仕組みもあり、いわゆる過疎ってしまうとゲームが成り立たない構造ということもあり、直近で計画を立てづらい構造にあるのは間違いありません。

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ただ、サービス展開が日本だけということはそれだけ市場規模も小さくなることを意味します。

日本ではそれほど大きな話題になっていないハリーポッター魔法同盟が、米国ではリリース後4日間で300万ダウンロードで110万ドルを売上げているのが象徴的でしょう。

実際、日本では冒頭で紹介したようにポケモンGOと良い勝負に見えたドラクエウォークの検索回数も、グローバルで見ると一気に離され、現在のドラクエウォークの検索回数のピークも、ハリーポッターのピークよりも少なくなるのが実情です。

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日本のスマホゲーム市場は、ガチャによる課金率が世界的に見ても非常に高いため、ビジネス面の効率を考えたら日本市場特化は正しいと思います。
ただ、長い目で見ると、全く海外展開をしていないというのは、市場規模や拡がりの面から、少しもったいない気がしてしまうわけです。

と、細かい点はいろいろ指摘しましたが、現時点でドラクエウォークがポケモンGOが君臨していた位置情報ゲーム市場に、大きなインパクトを持って参入できているのは間違いありません。

私自身、この3年間ポケモンGOを地味に続けている典型的な位置情報ゲーマーですが。

さすがにここ最近は、ポケモンGOにログインする回数が減り始めていたところ。

ドラクエウォークは、WALKモードという歩きスマホ回避用のモードもありますし、外回りの営業が多い自分向けになっている印象ですので、しばらくはお世話になることになりそうです。


ちなみに、ドラクエウォークを開発しているのは、日本を代表するゲーム会社であるスクウェア・エニックスと、今から15年以上前に「コロニーな生活」という位置情報ゲームのはしりの1つを個人で開発した馬場社長が立ち上げたコロプラというのも、個人的にはとても興味深いところがあったりします。

両社が開発した「ドラクエウォーク」の参入により、ナイアンティックとポケモンがリードしてきた位置情報ゲーム市場に、今後どういう変化が引き起こされるのか、注目したいと思います。

この記事は2019年9月16日にYahooニュース個人に寄稿した記事の全文転載です。

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