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セブンイレブンが強いのは、実は競合をあえて見なかったからかもしれない

先日の基調講演のメモに続いて、今年の5月に開催されたマーケティングアジェンダ2日目朝の基調講演のメモをこちらにも投稿しておきます。

当時はまだマクドナルドに在籍していた足立さんがモデレーターで、ガンガン鈴木さんにセブンイレブンの強さの秘密について質問していくという、非常に贅沢で刺激的なセッションでした。
このセッションの最後に飛び出した「イノベーションが起きなくなるから競合は見ない」という発言は、今回のマーケティングアジェンダの議論の中でもシンボル的なキーワードだったと感じてます。

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■オムニチャネルの真実と、巨大流通に活戦略 

・デジタルシフトウェーブ 鈴木さん
(元セブン&アイホールディングス)
・マクドナルド 足立さん

■マクドナルドとセブンイレブンは実は競合

■鈴木さんのキャリア
・20代は富士通でシステムエンジニア
・30代はソフトバンク
・40代はセブン&アイホールディングス
・昨年からデジタルシフトウェーブ

■セブンイレブンがなぜ強いか

・1970年から持続的成長をつづけている
・フランチャイズビジネスを始め24時間営業やセブンプレミアムなど時代に合わせた変化をつづけている
・2013年にはオムニチャネル戦略を発表

・セブンの強さ 1 変わらぬ経営哲学

 「変化への対応」と「基本の徹底」
 ・時代変化に即した仕事の追求(セブン銀行やコーヒー)
 ・基本的な原則を徹底的に実践(鮮度管理、清掃、接客をマニュアル化)

・セブンの強さ 2 組織力

 FC会議  :2週に1回実施、2500人参加
       方針徹底をトップダウンで実施
       (非常に緊張感がある会議)
 業革会議 :毎週実施、200人参加
       現場からの提案をボトムアップで実施
       (恵方巻きは地域店舗の成功事例から始まった)

・セブンの強さ 3 商品開発力

 昔はバイヤーが受け身の商品開発
 セブンはマーチャンダイザーがチーム力を活かした商品開発
 (メーカーの営業は受けるなと言われている) 
 常に自分がお客様の立場でどういう商品が欲しいか考えろと言われている。

■セブンイレブンにはマーケティング部はない
 マーチャンダイザーこそがマーケター
 小売業で商品の入れ替わりも激しいので商品広告はほとんどしない

■セブンイレブンはブランドランキングでは高いが、ブランド広告はほとんどやっていない
 1980年代の初期の頃に「空いてて良かった」というブランディング広告をしていたぐらい

■そもそもブランド広告は必要なのか?
 例えばダイキンは、エアコンを買う時に思い出してもらうためにブランド広告は重要だと思っているが、ブランド広告は必要なのか?

・セブンイレブンは店舗が待ちにあること自体がブランディング
 ただ、これだけ情報が増えた時代なので、今の時代は必要になっているのではないかという感覚を持っている

・マクドナルドもブランド広告はしていない
 マクドナルドもセブンイレブンも日々の接点があるので、ブランド広告を実施しなくても、毎日の接点がほぼブランドになっている。

■オムニチャネルでは何を目指していたのか?
・アマゾンと真っ向勝負していたが、ネットの中ではアマゾンには勝てない
 アマゾンに勝つためにはリアルとの組み合わせが必須だと感じた
 その課程でアメリカのメーシーズがオムニチャネルと言い出したので使わせてもらった。
 オムニチャネルの成功は誰もなし得てない。
 10年前からアマゾンはいつかリアルに出てくると感じていた。
 そこで、リアル側がネットをやる方が早いかもしれないと考えた。

■商品力が全てというのがリアル店舗の価値観
 そこで、コト軸でもものが売れるということを証明する必要があった。

■商品開発は誰でもできる(SMAP弁当事例)

 テレビを見てビストロスマップのお弁当を作ったら売れるかなと感じたので、フジテレビとジャニーズに飛び込み営業
 チームで商品開発をした結果、3週間でお弁当5種類で60億の売上を作る事例になった。 これがリアル側の意識も少し変わるきっかけになった

■オムニチャネルが、データを活用して商品を作るという意味では競合はTポイントとか楽天ポイント?
 IDを統一し、地域毎にオペレーションを変え、メーカーだけでなく競合の小売りとも連携して日本発の新しい形を目指していた。
 こういう長期的な活動は、短期利益を重視する企業姿勢においては難しい。

■スマホにプッシュ通知を送るのがCRMではない
 店頭で接客している販売員の行動自体が変わることがオムニチャネルの価値

 オムニチャネルをフランチャイズオーナーに説明する時には、オーナーの人たちの趣味を聞き、その趣味の延長にある商品を売って下さいと言うお願いをしていた。
 実際、店舗によってはジャンポールゴルティエの服を9着売った事例もある。
 これが2万店舗で発生すれば大きな動きになると考えていた

■マクドナルドでも細かいデータ分析をして、その対象に対してメッセージを出し分ける程度では顧客は動かないと考えている

■メーカーとしては、アマゾンに置かないと売れない、セブンに置かないと売れない、と両社と一緒にやっても利益が出ないという話を聞く。
 メーカーは今後どうしていくべきか。

・勉強になると思うべき
 セブンに商品を入れること自体が他社に納入するきっかけになる
 またセブンは100入れたら100売る
 その商品がその後に全国展開するという事例も複数ある

・それと合わせて自社でしかないという商品開発をすることに注力するべき

■ただ、他に無い画期的な商品開発はアップルとかでしか無理ではないか?
 コーセーの雪肌精のように、明確に顧客が求める良い商品を作るべき
 セブンイレブンだけに頼るようなビジネスをすると、かならず縮小均衡が起こるはず。
 また、セブンやアマゾンに商品を置かずに自社だけで販売しようとすると、当然規模が小さくなる。
 メーカーとして単独で成功を目指す場合は、成功のハードルを下げるべき。
 大きい成功を1つではなく、小さい成功を複数並べるポートフォリオを組むという手はあるはず。

■アマゾンエフェクト
 http://amzn.asia/gZida1a

 最初のタイトルはデジタルトランスファーの教科書だった。
 アマゾンはやっぱり凄いと思うが、世界で見ると例えばウォルマートは正面から必死になって戦っている。
 では日本はどうすれば良いのか?
 日本は高度経済成長期の中から企業文化や人の価値観が変わってない。
 ここを変える努力をしなければいけない

■日本のデジタルが進まない理由

 アメリカはIT技術者が一般のクライアント企業側の中にいる
 日本はIT技術者がIT企業の中にいるケースが多い
 そうすると本当のカスタマーファーストで思考できない

・カスタマーファーストでITを活用するのが大事

 日本は口ではお客が大事と言うが、経営企画部みたいな部署がITを考えてしまう
 本来は顧客と接している現場がITを考えないといけない
 従来のピラミッド型の画一的な組織では変化に対応できない

■日本は経営者が王様になってしまっているケースが多い
 王国から法治国家に変える必要がある

■元々コンビニ弁当は美味しくないというイメージだった。
 今はセブンの弁当は美味しいというイメージが確立している。
 どうブランドイメージを変えたのか?

 セブンでは毎日試食があり、商品が出るまで7~8回試食をするのが当たり前。
 鈴木会長は土日も自社の弁当を食べて商品の変化も把握していた。
 実際に毎日同じ商品を食べていると季節や工場の変化、お米の種類などで味が大きく変わるのが分かる。
 セブンは、こうした日々の努力でその味のブレ幅を少なくすることに成功し、商品を改善し続けることで、ブランドを変えた。

■セブンでは競合を見なかった
 競合を見てしまうと他社を真似したくなるし、イノベーションが起きない

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