チームから、個人の発信重視の時代で、メディアやコンテンツはどう変っていくのだろうか?

新型コロナウィルスは、世界中にダメージを与えていますが、日本のメディアと、エンタメ業界に対するダメージも相当なものになっています。
そこで、この状況に応してメディアとエンタメの世界が変わる可能性について考えてみたいと思います。
多くの方が在宅勤務になり、コミュニケーションが分断されています。そんな中で一つ感じることは、今まで以上に「個の発信力」がより強くなるのではないかということです。
会社のオフィスにいて、チームとした取り組んでいたことが、個人で可能になってきています。放送局においては番組を以前のようには作れません。いまは、在宅率が高まっていて、テレビメディアの視聴率も高くなる傾向になっていますが、タレントが街をぶらぶらするわけにも行きませんし、海外はおろか、国内での旅も大きく制限がかかっています。ドラマの撮影も延期されており、いつ再開できるかのメドも立ちません。
そして、報道番組のアナウンサーや総合演出の方が新型コロナウィルスで陽性反応が出て、ニュース報道の現場にも混乱が広がっています。
そうすると、今までテレビ局が当たり前に提供していたコンテンツがしばらくの間は完全にストップ可能性があります。
だからこそ、メディアは、知恵を絞って新しいコンテンツを生み出さなければいけません。プラスに考えれば、新しいアイデアが生まれる絶好のタイミングとなるかもしれません。

個の発信力について、もう少し考察してみましょう。
「家にいよう」ということを前提に、世界各国のミュージシャンが、様々なコンテンツを発信しています。4月18日には、レディー・ガガの呼びかけで、WHO(世界保健機構)とGlobal Citizen主催の「One World: Together At Home」チャリティー・コンサートが開かれました。世界的に著名なアーティストが、自宅から音楽を配信したものですが、多くの方がご覧になったと思います。こうした例をみるまでもなく「タイニーデスクコンサート」もいろいろな場所で盛り上がっています。ユーチューブをはじめ、自宅から音楽を届けるプラットフォームのサービスは進化するでしょうし、表現も更新されて行くでしょう。星野源の「うちで踊ろう」なんかにその萌芽がみられると思うのです。

僕の個人的な体験として、20年ほど前に、ある企画を考えました。インターネットが全国に普及するようなタイミングだったのですが、「日本全国ご自宅クイズ」という企画書を書いたことがありました。インターネットを通じて全国中継ができるのならば、日本国中の人を集めてクイズをやってみたら面白いのではないかと思ったのです。日本地図に参加者をマッピングして、勝ち残った県や市町村が色分けされて行くようなイメージです。日本地図がクイズ一問一問で、塗り替えられて行くと面白いなと。アニメ映画「サマーウォーズ」の中で描かれた、全世界のゲーマーたちが競うような世界を想像してもらえれば良いと思います。この企画は時期尚早ということで日の目を見ることにはにはなりませんでしたが、いまのテクノロジーやネットの処理速度をもってすれば、もっと面白いことができるんじゃないかと思うんです。

また、そういうところから、現在のテレビでは登場させられなかった、新しいキャスト、従来型でないヒーローが生まれてくる世界を夢想してしまいます。
さらに言えば、これはテレビという枠だけでなくて、インターネット上の「個人の表現」に、新しい時代をもたらすきっかけになるのではないかと思っています。
僕の会社でも「マイスタ」という動画プラットフォームで、新しいタレントの発掘と、そこに参加する個人個人が、どうやってセルフマネタイズするかについて挑戦を行ってます。それは、再生回数に応じた報酬ではなく、視聴する側の「投げ銭」で成り立つような世界観です。こうした個人個人が、デジタルプラットフォームで活動する仕組みはもっと利用者が増えていくと思いますし、その流れは止められないのではないのでしょうか。

コンテンツプロデューサーの三枝孝臣です。メディアの現在と未来を僕なりの視点で語ります。ベンチャー企業経営者としての日々についても綴って行きます。