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5000匹のキラキラした魚が頭上を泳ぐ光景はどうして実現できたのか?

共犯者の皆さん、こんにちは!  制作アシスタントのひよこです。
先日公開されました、新作ディスクロニア: CAの”5000匹魚群映像”はご覧いただけましたでしょうか?
海上都市アストラム・クローズで、市民のメンタルケアが行われる仮想空間「拡張夢」の紹介映像です!

私は水族館の大水槽みたいなダイナミックさと、魚たちから感じる神秘性のコラボレーションに「何この今までに出会ったことない空間は!?」となりました。
魚たちが放つ柔らかい光と透明感に未来を感じ、
頭上を泳ぐ魚のリアルな動きと、優雅に泳ぐ鯨は大水槽そのもの。
「これが未来のメンタリング空間、なるほど!癒されそう!!」と100%納得してしまいました。

拡張夢の映像を紹介した記事

ゲーム内の映像

グラフィックの進化のワケを知りたい!

『ALTDEUS: BC』から進化した『DYSCHRONIA : CA』のグラフィック。
同じMeta Quest 2を使いながら、どのように実現したのでしょうか?
グラフィックエンジニアの山本さんに聞いてきました!


自己紹介をお願いします!

山本:
グラフィックエンジニアの山本です。
今作のディスクロからMyDearestへ参加しています。
趣味は・・・お酒。
特にワインとブランデーです。
飲みながらゲーム開発をするのが好きです。
仕事中は飲んでませんよ。 よろしくお願いします!

グラフィックエンジニアって、どんなお仕事ですか?

山本:
一言で言うと、ディレクターの頭の中のイメージを具体的な形にする仕事だと思っています。
例えば、今回の舞台拡張夢では
末岡Dによる「海の中みたいにしたい。お魚いっぱい出したい。」というイメージを
アートディレクターが中心になってビジュアルの提案をしました。
それをVRの実機で実現させるのが僕ですね。

アルトデウス: BCからの進化

ひよこ:
アルトデウス: BCからグラフィックが進化したな!という印象ですが
実際作っている人目線でどうですか?

山本:
確実に進化しました!
まず、背景のポリゴン数はアルトデウス: BCの3倍です。
わかりやすく言うと…
背景が3倍クリアになっているんですよ。

アルトデウス: BCとディスクロニア: CAの背景を比較

ひよこ:
確かに画像で見るだけでも、ディスクロは床のタイルの凹凸や
建物の細かいところまでリアルに作ってあるなという印象になりますね。

山本:
そして、これまでスマートフォン向けゲームで開発してきた
僕の知見を活かして新しい表現を取り入れています!
具体的には、クジラを使って魚群の動きをリアルにしたり、
光源から光が溢れ出す "ブルーム" という表現を使ったり!
これだけだと伝わりにくいですね!笑

ひよこ:
後ほど、1つ1つ詳しく聞かせてください!
話を聞いていて、率直な疑問なのですが、
アルトデウス: BCの時からMeta Quest 2の基本的な性能は変わっていないですよね?
なぜ背景を鮮明にして、今まで使ってなかった演出を使えるんですか?

山本:
いいことを聞いてくれましたね。
そこがグラフィックエンジニアの出番です!
グラフィックエンジニアはハードウェアの能力を効率よく使って
できるだけリッチなビジュアルを実現する仕組みを作ります!

つまり、アルトデウス: BCよりも効率の良い仕組みにすることで、
同じハードウェアを使いながらも使える演出の機能を増やして
グラフィックを豪華にしました。

リアルな魚群の追求

ひよこ:
初めて魚群を見たときに、お魚が1匹1匹がリアルな動きをしていて、びっくりしました。
生きてる感が満載の魚の動きは、どのように実現したのでしょう?

山本:
そうなんです!
あれは相棒のエンジニアが、群れを制御するプログラムを書いたことが
すごいんですけど、それはまたの機会に…!
僕からは2つのポイントを説明させていただきますね!

優しい光が溢れる"ブルーム"

山本:
一つ目はブルームというエフェクトです。
光っているものがある時に、そのモノの周りもぼんやりと明るく見えますよね。
それを実現するエフェクトです。

ブルームの使用例

ひよこ:
あるなしを比較画像で見ると、かなり雰囲気が変わりますね!
リアルだなって感じます。
これはあんまり使われない技術なんですか?

山本:
今のスマートフォンやプレイステーション向けのゲームでは、良く使われています。
ただ、これが処理負荷が高いんです!笑
今までMeta Quest 2向けで使われていることはほぼ無かったと思います。
開発チームとしても「重いから無理だろう」という雰囲気だったので
僕が勝手にコードを書いて、「軽量化すればブルーム入れられるよ!」と
売り込みました笑

ひよこ:
自分からですか!?

山本:
Meta Quest 2のスペックはみんな知っているので、
アーティストやゲームプランナーは遠慮がちになってしまうことがあるんですね。
だからこそ、「決められた容量で最大のことをする」知識を持った僕らエンジニアが積極的に提案する姿勢を大事にしています。

ひよこ:
それを実現するために具体的に
気をつけていることはありますか?

山本:
なるべく早い段階で相談してもらうことですね!
実現したい体験を考えるゲームプランナー、実現したい見た目を考えるアーティストがいて、どう実現するかを一人で考え抜こうとすると
煮詰まってしまったり、本末転倒な結論になってしまうことがあります。
そこは実現するための技術の知識がある僕らエンジニアにたくさん頼って欲しいです。
なので、「こういうことがやりたい」と思った段階で、相談にきてもらえるような雰囲気を作るように心がけています!

ひよこ:
日頃から社内チャットでも「気軽に相談にきてね」と呼びかけているのは
そういう理由なんですね。
私の席から山本さんの席見えるんですが
確かに色々な人が訪れているのが見えます!

山本:
そう見えてたならよかったです。
特にアートディレクターとは密に話しをしていますね!
魚群に関しては僕と相棒のエンジニアが「1万匹いきましょう!!」って
意気込んでいたら「それは見た目が気持ち悪いから、やらないでいい」と断れれました。笑

ひよこ:
見てみたいので、どこかの特典映像でお願いします笑

ゆったりと動くクジラが魚群をよりリアルな動きへ

たくさんの魚が頭上を泳ぐ、メンタリング空間「拡張夢」

ひよこ:
クジラについても山本さんから提案があったと聞きました。
なんでクジラを出したかったんですか?

山本:
魚群のうごきをよりリアルにするためですね!
先ほど、魚群の動くプログラムを作った人がいるという話をしましたが
魚は障害物を避けるようになっています。
プレイヤーの近くを通るとき、手を掲げると
その手にはぶつからないように泳いで行きます。
ただ大きな空間に魚だけがいると、地上にいるプレイヤーとぶつかる機会は少なくて、スイスイとテンポよく進み続けます。
そうすると、どこかパターンぽさを感じてしまいました。

ひよこ:
それを改善するためにクジラを・・・?

山本:
そうです。
大きな障害物を作って、魚群が避けるような動きをすると
進むだけじゃない緩急がある動きになって、生き生きと感じられるんです!
だからクジラは、魚とは動きパターンも速度も変えてあります。
ゆったりと横切っていくイメージです。

ひよこ:
違う速度で動くからこそ、ぶつかりそうになって避ける回数も増えるんですね!
言われると"なるほど!"と思いますが、映像見ているときには
大自然のナチュラルな感じがして気がつかなかったです。
……面白い!

見た目が進化した立役者「シェーダーの統一」

透き通った表現が印象的な拡張夢内の市民

ひよこ:
PVやゲーム映像を見ていると
魚だけじゃなく、ディスクロの世界にある様々なモノが
”なんかすごい!ビジュアルがリッチ!”という印象です。
なんでですか?笑

山本:
全体的に”雰囲気がある”ビジュアルになっているのは
シェーダーの統一」が貢献しているかなと思います。
※シェーダーとは
3Dモデルの表面の色や質感を決めるプログラム

人型の3Dモデルをシェーダーで透明な質感に仕上げる

ひよこ:
統一とは・・・?

山本:
開発チームに入った当初、144個ほどのシェーダーがありました。
それは1つずつ独立したシェーダーとして扱われていて、
例えばAとBを組み合わせて使う際には、AとBを両方使った新しいシェーダーCをエンジニアが作らないといけなかったんです。

ひよこ:
アーティストさんが気軽にアレとコレ組み合わせて
違ったからやっぱりこっち! とかできないんですね。

山本:
そうなんです。
ビジュアルの進化のためには、気軽に組み合わせを試して
試行錯誤できる環境が必要でした。
そこで、今までの144個のシェーダを1つにまとめて
それぞれON/OFFを気軽に切り替えられるようにしました

異なるシェーダーを組み合わせた場合の比較

アーティストが手元でいろいろ組み合わせを試行錯誤しながら
コンセプトに一番相応しい見た目を作っていけるようしたかったんです。

作業環境が整って、アーティストもエンジニアも作業効率が上がれば
アーティストが描くビジュアルを実現できる可能性がグッと上がります。
大きな改修でしたが、チームの開発力をグッとあげられたのでやってよかったです。

ビジュアルの役割

ひよこ:
山本さんについて、
「PVや映像でゲーム内のビジュアルを出したい」となると
ものすごい勢いでビジュアルの改善を入れ込んでくるイメージがあります。
ゲーム製品のみならず、プロモーションで出すビジュアルについても
それほど熱い気持ちで取り組むのは、どんなモチベーションからでしょうか?

山本:
ビジュアルがゲームタイトルの第一印象で、より多くの人に
ディスクロに興味を持ってもらうきっかけになるからです!

僕の考えだと、お客様は
まずはビジュアルを見て、「このゲーム良さそう」と感じる。
そうするとゲームの詳細が気になって、ゲームシステム・遊び方を知る。
ここまで知ったら「このゲームやりたい!」となるイメージです。
そして、プレイしたらシナリオにグッと引き込まれる。

どれだけ多くの人にゲームタイトルに興味を持ってもらえるのか
裾野を広げることにおいて、ビジュアルが果たす役割が大きい!
だからこそPVやこういったゲーム内の動画を
皆さんに届けられるタイミングでは
「この改善を入れた後を見てくれ!」という気持ちで、前のめりに開発しています。

ひよこ:
この熱い想いが詰まった拡張夢のゲーム内動画、
皆さん、ぜひ山本さんに向けて熱い感想コメントをお願いします!

VRゲーム界の進歩へ

ひよこ:
そして横で見ていて
「ここまでやるのか……!」というくらいの
絵作りに対する執念を感じます。
どうしてそこまでできるんでしょうか?

山本:
僕らMyDearest が日本のVRゲーム界を引っ張っているんだ、という自負ですね!
世の中全体で「モバイルVRはこれくらいだよね」っていう上限があるイメージがあると思います。
過去を見れば、PS2からPS3になった時、画面表現の幅やクオリティが引き上がって、映像体験のレベルがぶち上がったタイミングがあるじゃないですか。
スマホゲームでも、感覚的には4,5年前にそのタイミングがあったと思うんですよね。
VRゲームでは、MyDearestがやる。
ディスクロニアが実現する絵作りを通じて、その壁をぶっ壊せたら最高ですよね。
それはお客様の印象だけでなく、開発者にとってもです。
ディスクロニアで「Meta Quest 2でここまでできる」を証明して
VRゲーム会社の目指す到達点を、あげて行きたいです!

というのはありつつ、末岡ディレクターのやりたいことの
無茶振りがすごいので、それを実現しようとしてたら
自然と引き上がっていきました。笑

最後に一言

ひよこ:
最後に、共犯者の皆さんに一言お願いします!

山本:
ディスクロニアは、MyDearest史上最高の、人生を変え得る名作です。
その世界観をより身近に感じて、没入していただくために、全力で絵を載せました。
皆様にこの世界を好きになってもらえると、とてもうれしいです。
ぜひ、体験してください。


以上、制作現場からお送りしました!
いかがでしたでしょうか?
私は話を聞いた後、もう一度拡張夢動画を見て
じっくりとこだわりポイントを堪能しました。
ぜひ皆さんも魚の動き、ブルームの光などなどを観てみませんか?

感想やもっとこんなことが知りたいリクエストをコメントでいただけたら嬉しいです!

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