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不定期日記。2023-01-11

 坂本龍一のニューイヤースペシャルを聴いた。冒頭一曲目がYMO初期の作、「東風」であった。

 音源化されているピアノコンサートで、客席からの急なリクエストに応えて、セットリストにない東風を弾いたものがある。弾き終えて教授は「オリジナルのアレンジが良過ぎてピアノのアレンジが思いつかない」といったような事を言っていた。
 私は現在、そこまで坂本龍一の熱心なファンではないので、その後東風をどういうアレンジで演奏していたのか、いなかったのか、わからない。
 しかしこの東風はどうだろう。我々が聴き馴染んでいる東風とは明らかに表情が異なる。軽やかにやってきて私たちの肩や腰を揺らす、いつもの魅惑的な東風ではない。何もない荒涼とした大地に立たされた我々のもとに静かに吹いてきて、途中不穏な空気を孕みながら、余韻を含んでそっと去っていく、そんな印象だ。今の年齢、そして体調から生まれた演奏、というしかない。

 アコースティックな楽器は何でもそうだと思うが、もろにフィジカルの影響を受ける。体力が落ちてしまえば、必然速い、力強い、そういった演奏は不可能になる。しかしそこを逆手に取って、朴訥ながら雄弁な演奏は出来るのだということを、この演奏は証明していると感じた。一曲目に持ってきたのも、そういう自信の表れではないだろうか、などというと勘ぐりが過ぎるか。

 この音源、聴いていて何が辛いかといえば、決して万全ではないであろう教授の語り声だ。
 私は世代的に、YMO全盛期に多感な時期を過ごしており、自分のDNAにはYMOイズム的なものが刷り込まれてしまっている。音楽的な趣味もそうかも知れないが、YMOというのは当時音楽のみならず大きなカルチャーであったから、影響はもっと多岐に渡る。
 なので教授、そして幸宏も、ここのところ音楽活動もままならないほど体調が宜しくない状態は、とても心配である。
 どうか健康を取り戻して末長く活動を続けて欲しいと願う。

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