Facebookで大人気の「Nas Daily」とは?
はじめに
Nas Daily は Facebook で人気のコンテンツの1つです。Nas という人物が面白いストーリーを 1 分前後の短い動画にまとめ、Facebook 上に毎日公開しています。彼の作るコンテンツは素晴らしく、世界中に820万人以上ものページファンがいます(2018年9月20日時点)。
<追記> Nas は当初 YouTube を使うことに否定的でしたが、2019年から方向転換し YouTuber にもなっています。この記事では主に彼のルーツである Facebook の動画を紹介していますが、YouTube の動画に置き換えられるものは適宜置き換えています。
この note では Nas がどういう人物で、彼がどのような動画を「Nas Daily」ページに配信し、なぜ Facebook 上で人気になったかなど、彼についていろいろと紹介したいと思います。
Nasのプロフィール写真
写真の彼が Nas です。本名は Nuseir Yassin。1992年生まれで、イスラエル出身のパレスチナ人です。ハーバード大学への進学に伴い、アメリカに渡ります。
ハーバード大学での教育
ハーバード大学を選んだ理由を、彼は Nas Daily で次のように紹介しています。
大学卒業後の人生
ハーバード大学卒業後、ニューヨークにある「Venmo」という会社で、ソフトウェア・エンジニア / データ・エンジニアとして働きます。
給与も待遇も良い仕事でした。しかし、あるときからこのまま同じ仕事をして、自分の大切な人生を過ごしてもいいのか疑問を持ち始めました。仮に転職をしても、同じくコードを書き続けるプログラマーのような仕事に就きそうでした。人生を変えるには、仕事だけでなく、生き方そのものを変える必要がある。そう判断し、Nas は仕事を辞めました。
上の言葉に影響され、世界を旅しながら、その様子を動画で配信する計画を立てます。ニューヨークを出発地点とし、エジプト、ケニア、エチオピア、インド、ネパール、日本、サンフランシスコをめぐり、最後にニューヨークに帰ってくる60日間の旅です。
このとき、「動画を見てもらうには、動画が視聴者にとって面白くならなければいけない。動画が面白くなるには、自分が魅力的でなければならない。だから、旅をすることにした。」とも後に Nas Daily で語っています。
家財を処分し、旅に必要なものをカバンに詰めこんで、友人に別れを告げます。その様子を撮ったのが彼の最初の動画になります。
動画「DAY 1 : NEW YORK CITY」
アフリカに向かう道中、Nas は両親に仕事を辞めたことを告げました。両親は開いた口が塞がらない様子だったそうです。なにせ Nas 1人が両親以上のお金を稼いでいたからです。「まずはやってみるよ。あとのことはその後に考える。とりあえず200日間だけの猶予が欲しい。」と Nas は両親に伝え、彼の旅が始まりました。
空港での滞在時間が長かったので、彼は2本目の動画用にルービックキューブをすれ違う人たちにやってもらうユニークな計画を立ち上げます。これ以降、旅先現地の様々な人を巻き込みながら、彼の面白い動画がたくさん作られるようになります。
動画「Stuck in Cairo Airport」
今を生きる
仕事を辞めたとき、これからは自分のために生きると決めた Nas は今生きている瞬間を大切にするため、オリジナルTシャツを作りました。
アメリカ人男性の平均寿命は76歳で、もし自分の寿命も76歳だった場合、自分の人生の約32%(当時25歳)が既に終わっていことを知りました。残りの68%の時間を大切に使うという意味をこめて、Tシャツのデザインを iPhone の充電状態を示すバッテリーのようなものにしました。
いつでも今を生きるメッセージを忘れないため、優柔不断な自分が服選びに貴重な自分の時間を使わないため、軽やかに旅をするため、彼はそのTシャツだけを毎日ずっと着続けて旅をしています。
なぜFacebookなのか?
Nas は旅に出る前の2016年2月9日に、Facebook ページを開設しました。多くのトラベルブロガーが旅の様子を紹介するのに YouTube や Instagram のような動画プラットフォームを使うのに対し、彼はめずらしくも Facebook を選びました。多くの視聴者が「なぜ YouTube を使わないのか?」と知りたがっていたので、Nas はその理由を次のように話しました。
Nas が動画プラットフォームを Facebook に選択した当時、Facebook はライブ配信機能を新たに搭載し、今後動画配信サービスに本格的に参入するのではないかと噂されていました。Nas は表向きには話していませんが、プレイヤーがまだいない市場にチャンスを見出したのも、Facebook をプラットフォームに選んだ1つの理由だと私は思います。
動画を毎日投稿し続ける理由
動画のネタを考え、実際に撮影・編集・投稿し続けることは大変なことです。Nas はこれを毎日続けています。彼は毎日続ける理由を戦略的に考え、実践していました。
この実験結果を踏まえ、いい動画クリエイターやストーリーテラーになるには、動画を作りたくない日があっても、動画がつまらないものであっても、毎日動画を投稿し続ける必要があると決めました。
毎日動画を投稿することを実験的に30日間続けた結果、新たに5207のページファン、590,532の視聴回数、120万人以上のリーチという成果が得られました。Nas にとっては、少し期待以下の成果だったそうです。しかし、ユニークな人や美しい景色に出会うことができ、どういうコンテンツがよく視聴され、視聴者からの反応が良いのかということを少しずつ知ることができました。
そして、Facebook ページの名前を当初の「Nas Videos」から「Nas Daily」に変え、「Nas Daily」では人に重きをおいたコンテンツを発信することにしました。
動画「Day 30: Introducing Nas Daily!」
Facebook ページを開設した1年後の2017年2月9日、毎日旅をしながら動画を投稿し続けた結果、35カ国訪問、1億1千万ビュー、77万人のページファンという記録を残し、以後もどんどんファンを増やしていきます。
Nas Dailyが人気になったきっかけ
Nas の動画はどれも素晴らしいものです。しかし、毎日動画を投稿しているため、すべてがいいものとは限りません。普通のクリエイターであれば、よくないコンテンツは公にしないと思いますが、彼は気にせずに Facebook に投稿します。たとえ体調が悪くて撮影できなかったり、思うようにことが進まなくて悔し涙を流したりしても、その様子を動画に収め公開します。
画像や動画に写っている人物は現実と比べて着飾っているところがありますが、Nas はそういうのもなるべく隠さずに赤裸々に動画にして公開しています。そのため、ありのままの自分をさらけ出す感じが多くの人に受け入れられているようです。
Nas の動画には必ずストーリーがあります。世の中には美しい映像を撮る人がたくさんいますが、そういう映像は見ていてすぐに飽きてしまいます。一方で、ストーリーがあるものには人々は惹きつけられます。彼はそういうストーリーを常に探しており、Facebook 上のファンのコメントに返信する、旅先でミートアップを開催する、よくファンと交流するなどしながら、まだ世間にシェアされていないストーリーを発掘しています。彼は「ファン」のことを「フレンズ」と呼び、対等な関係で一緒に巻き込みながら動画を作っているのです。
Facebookグループ「Nas Daily Global」
たとえば、一人で世界中を旅すると、現地の情報にうとかったりします。そういうときは自分のスケジュールを公開し、一緒に動画を撮影してくれる人や動画に出たい人などを Facebook 上で募集します。自分が視聴者の立場から動画に出演することができる立場になれるチャンスがあるとわかると、彼らは積極的に情報をシェアしてくれます。実際にタイを訪れたときに物価がどれだけ安いのかを検証する動画では、Smuke という名のタイ人女性が現地を案内していました。
あるとき、Nas Daily の動画が爆発的に人気になります。それは、Nas がフィリピンを訪れたときの旅動画です。Nas はいかにフィリピンが面白い国で、そこに住んでいる人たちがユーモアにあふれ、優しいかなどを紹介しています。その動画が SNS 好きのフィリピン人たちに広く知られようになり、一気に動画が世界中に拡散されます。フィリピン人は多くの人が出稼ぎのために外国へ出向いており、世界中に点在しています。彼らのグローバル規模のネットワークと SNS 好きの国民性が相まって、米国在住のフィリピン人からフィリピン在住のフィリピン人へ、フィリピン在住のフィリピン人から世界中に点在するフィリピン人へ、世界中に点在するフィリピン人から各国の英語話者へと動画が次第に知られるようになりました。
動画「8 DAYS IN THE PHILIPPINES IN 8 MINUTES」
他国の人が自国のことを取り上げて褒めてくれることは自国の人にとってこのうえなく喜ばしいことです。以後、多くの人が Nas に自分の国に来て欲しいと頼むようになります。中にはミートアップをファンが企画し、Nas に来てもらうように考える人も出てきました。多くの人に動画が見られるようになると、企業も Nas にビジネスについて相談したり、仕事を依頼したりするようになりました。
Nas の旅動画を見た多くの人たちは彼をトラベルブロガーとして認識しています。しかし、彼自身はそのような枠組みで考えていないようです。旅動画以外にも、人びとに考えるきっかけとなる問題提起の動画も配信しています。
たとえば、Nas Daily にはメディアが報道しない中東の問題や世界の現状などを紹介する動画があります。Nas 自身現在は信仰心がないようですが、イスラム教徒として育った背景から、パレスチナの問題は無視できないようです。
「複雑な政治問題に関わらずに、トラベルブロガーとして動画を撮影したほうがいい」というコメントを書かれることもあります。けれども、Nas はメディアで報じられない現実を発信することで、少しでも早く平和に近づく日が来ることを願っており、それに共感してくれる人も世界に多くいます。
動画「JEWS VS. ARABS」
Nas はたびたび日本にも来ており、テレビ東京の人気番組「Youは何しに日本へ?」に出演したこともあります。日本は魅力的なストーリーで溢れていますが、言語の壁があるため、まだまだ開拓不十分だそうです。Nas Daily のファンには日本のことを知りたい人や日本が好きな人もいるそうで、日本は今後も何度か訪れたい国の1つだそうです。
今後の活動について
Nas は自分以外の人にも自分のような成功体験を味わってもらうため、素晴らしい可能性を秘めたストーリーテラーとなる人物を Facebook で世界中から募集しています。面接に通った人は、滞在費、航空券、トレーニング費用など、全て Nas、またときにはスポンサーが負担して招待するようです。トレーニングを終えると、晴れてチームメンバーとなり、Nas から継続的にアドバイスをもらえたり、一緒に世界を旅したりすることができます。現在、世界を旅するチームメンバーにはたとえば「Project Night Fall」「Dear Alyne」がいます。
動画「COME TRAVEL WITH ME FOR FREE!」
Nas が動画作成で使うカメラや動画編集ソフトは人によっては高価なものです。もっと多くの人が簡単にお金をかけずに動画が作れるように、フィリピンで会社を作り、人を雇ってアプリ開発をしているそうです。
Nas 自身はいつまで毎日動画を取り続けるか迷っていたそうですが、とりあえず1000日までは続けるように決めました。「Nas Daily」はもともと60日間を予定していたプロジェクトで、面白くて750日間続けることができました。しかし、ずっとこの仕事で生活するわけにはいかないので、きりが良い1000日で止めることにしました。それ以降は、一旦毎日撮影するルールから自分を開放し、そのときにまたどうするか考えるようです。
動画「I'm stopping Nas Daily....」
活動再開
より良い明日を作るために、より多くのビデオを作る「Nas Studio」をシンガポールに立ち上げました。彼の今後の活動に注目です。
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