竿尾悟先生インタビュー【ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり/コンビニDMZ】

イカツイ軍人たちがお菓子その他諸々を求めて買い物にやってくる、非武装地帯のコンビニの日常を描いた『コンビニDMZ』の作者であり、突如現代に開いた扉の先の異世界でドラゴンを倒す自衛隊の活躍を描く『ゲート自衛隊彼の地にて斯く戦えり』(以下『ゲート』。原作:柳内たくみ)にて作画を担当している、竿尾悟先生のロングインタビュー。
『迷彩君』をはじめとした「ミリタリー専門漫画家」とも言える竿尾先生の作品は数多くがミリタリーものですが、日常と非日常が絶妙に入り混じったストーリーで専門知識がなくても面白く読めてしまうのが特徴です。そんなミリタリー魂を貫く竿尾先生に、マンガラボが突撃取材!

1章:幼稚園の頃から戦艦を描いていた!
2章:ミリタリーへの熱い想い
3章:「好きなものを描いていいよ」 担当さんとの並々ならぬ信頼関係
4章:自衛隊がドラゴンを倒す!? 『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』

幼稚園の頃から戦艦を描いていた!

初めて本格的に漫画を描き始めたのはいつごろでしょうか?また、そのキッカケは?

竿尾悟(以下竿尾): 高3のときですかね。元々漫画が好きで。つけペンなどの道具を使うまではノートに漫画を描いていました。小6くらいからですね。最初はつけペンの使い方もわからなくて、ペン軸にインクいれたんですよ(笑) もうインクがドバーと紙に出まして……中高生でも、漫画家目指す子は普通に使えると思うんですけどね(笑)

なんとも衝撃的な幕開けですね(笑)!ミリタリーは、元々小さい頃からお好きだったのでしょうか?

竿尾:そうですね。キッカケはよくわかりませんが、いつの間にか。まぁ、祖父が軍人だったので、ガダルカナルの方へ行っていたとか、そんな話を昔よく聞いていました。あと幼稚園の頃から、戦艦の絵を描いたりしていましたね。ガキンチョの描くような絵ですけど。粘土で戦闘機つくったりとか。

幼稚園で戦艦を描く子は、なかなかいないのでは(笑) 漫画というジャンルへ入っていったのは、やはりミリタリー漫画を読んだからなのでしょうか?

竿尾:そうですね。キッカケはよくわかりませんが、いつの間にか。まぁ、祖父が軍人だったので、ガダルカナルの方へ行っていたとか、そんな話を昔よく聞いていました。あと幼稚園の頃から、戦艦の絵を描いたりしていましたね。ガキンチョの描くような絵ですけど。粘土で戦闘機つくったりとか。

結果はいかがでしたか?

竿尾:佳作をいただきました。そのあと読み切りを2本ほど描いたのですが、編集部が替わって音沙汰がなくなり、雑誌も無くなってしまって……大学生のときです。卒業してからは、1年もしていませんがアシスタントをしていました。

アシスタント先はどのように見つけたのでしょうか。

竿尾:当時行っていた画材屋に漫画の専門コーナーがあって、そこにチラシが出ていたんですよ。メインで背景を描かれていた方へ連絡しまして。月刊チャンピオンで連載していた、藤井克己先生の『鬼組』という漫画のところにアシスタントに入って背景を描いていました。

雑誌にはアシスタント募集のページがありますが、そうしたカタチでの募集があったとは驚きです。アシスタント経験があるとのことですが、竿尾先生のデッサン力の高さから、絵の練習方法が気になります。

竿尾:大学時代は、講義中にずっと落書きをしていました(笑) 特に練習とか考えずに、メカとかではなく女の子ばかり。絵を専門的に習ったことはなく、独学です。ポーズ集とか買いはじめたのも最近です。買ってもあんまり使ってないんですけどね。

先生の描く女の子は「健康的なエロさ」があり非常に可愛いと、ラボメンの中で話が出ています。……女の子を描く際のこだわりなどはありますか?

竿尾:全然「萌え」じゃないでしょ?(笑) 一部では古臭い絵といった意見もありますが。そうですね、胸とか腰のライン、くびれとかはこだわっていますね。実際の写真を参考に、ということはあまりしていないです。常日頃培った落書きの経験で。

では、ひたすら絵をたくさん描くということが画力アップにつながるということでしょうか?

竿尾:そうですね。背景とかも、写真のとおり描けばいいのにとか思っているんですけどね。最近たまにアシスタントさんにも描いてもらうんですけど、なんで写真のとおり描けないんだって思ったりしますね(笑) 写真を読み解く能力じゃないでしょうか。アシスタントに描かせたら、やっぱり「マンガの背景」っぽくなってしまうんですよ。省略してしまったり、窓の幅とかが広かったり。それがどうも……

先生としては写実的に描きたいということですね。先生自身も写真を見て背景の練習をされていたのでしょうか?

竿尾:というより漫画の中は、写真見ながら描いてる背景ばかりです。『コンビニDMZ』のときは、検索で探してきた写真を参考にしていました。海外の紛争の写真です。海外に取材に行ったことはなくて、旅行で行ったグアムしか行ったことがないので(笑)

ミリタリーへの熱い想い

『迷彩君』などの作中で、戦争映画のパロディやオマージュが散見されますが、何かおすすめのミリタリー映画を教えていただけますか。

竿尾:古典的なのでいえば、「戦争のはらわた」とか、最近のでいえば「バンドオブブラザーズ」ですかね。あれはよくできていたと思います。後半の強制収容所の回とか、ちょっとウルッときましたね。

竿尾先生は、何故ミリタリーに惹かれるのでしょうか。また、お気に入りの戦艦などは?

竿尾:惹かれる理由は、極限状態の心理で戦っているところがかっこいいからですよね。戦っている様とか、メカ的にとかも。最近のお気に入りは第一次大戦の、イギリスの軍艦とかですかね。『海竿』の最初の話はもう趣味丸出しで(笑) でも、これ描いたあとのほうが資料が充実しているんですよ。いい洋書がいっぱい出て。

戦車・戦艦は膨大な描き込みが必要だと思うのですが、全て先生が作画されているのでしょうか。

竿尾:アシスタントは全然ミリオタではないので、自分で描いています。やっぱりそういうところは自分で描きたいじゃないですか。

銃を構えるシーンなどをかっこよく描写するコツはありますか?例えば、撃っているシーンに迫力を出したいときに、どこに力を入れたらいいのでしょう。

竿尾:パースとか、そんなんでしょうけど。でも最近はミリタリーのポーズ集とか出てますし。さっきも本屋寄ったら新しいのがでていました。銃を持っている女の子の萌えるポーズ。でも、そういうのはなんかみんな同じ感じになってしまいますしね。迫力を出すには発砲煙とか、銃のディテールをちゃんと描くとか、そんな感じだと思うんですがね。

その他何かミリタリーの部分で気をつけていることや、こだわりは?

竿尾:やっぱりディテールはしっかりしたいですね。そこに尽きると思います。色々突っ込まれますし。主に、某大手掲示板方面で(笑) 戦艦が長いからといって、漫画のコマに収めるよう前後に圧縮するとやはり違和感があります。僕だったら、コマに入るようアングルを配慮して描くようにします。

「好きなものを描いていいよ」 担当さんとの並々ならぬ信頼関係

デビューはコンバットコミックだったということですが、ヤングキングのほうへ移った経緯は?

竿尾:大学時代、ヤングキングアワーズというのを見つけまして。そこで伊藤明弘先生の『ジオブリーダーズ』にハマったんですね。それで読んでいたら、平野耕太先生の『ヘルシング』が始まったんです。アーカードを描いてはがきを送ったこともあります(笑) それから、投稿するならアワーズかな~と思って描いた作品を送りました。

漫画家になろうと思ったキッカケは何かあったのでしょうか?

竿尾:いやーそんなのは無かったですね。大学で漫研に入ってたので、その流れです。就活もまともにしていませんし。まあ、バイトも警備員を半年位やったことはありましたが、そのあとアシスタントになって。まあ、警備員やってたときも、アワーズで賞をとったあとだったのですが。警備員中に読み切りを描いて、読み切りのネームも何本か没ったり。4本くらいですね……そのあとにできたのが『迷彩君』です。好きなもの描いたらいいよと言われて、好き勝手描いていました。

『迷彩君』は、大学生でありながら傭兵でもある主人公の日々を描いた異色の作品です。『迷彩君』の構想は、当初からあったのですか?

竿尾:いや全然。特に構想期間もなく、担当から「好きなもの描いていいよ」と言われて考え始めました。連載中も行き当たりばったりです。

連載に至るまで、スランプの時期はありましたか?もしございましたら、どうやって乗り越えたのか教えてください!

竿尾:『迷彩君』と『渚』が終わって、『コンビニDMZ』の前は担当にグチグチ言われてちょっと悩んでいました。どうやって乗り越えたかは、プラモを作りまくりました(笑) そしたらなんかもーふっきれたって感じですね。

『コンビニDMZ』は、戦争という非日常とコンビニという日常が融合したぶっとんだギャグが特徴的ですが、こうした設定はどのように思いつかれたのでしょうか?

竿尾:『戦争の犬たち』のあとで、なんか新しいものでも考えてよと言われていたときに、女の子に誘われて気づいたら戦場のコンビニだったという、ネームがボツになった小ネタがあって。今の担当でもあるのですが、ずっと一緒にやっていたアワーズの担当に「こんなの考えていたのですがどうですかねえ」と話したときに「それいいんじゃん?」ということになりまして。

竿尾先生の描きたいものを、担当さんも認めてくれるんですね。

竿尾:そうですね。最近描いてる『ゲート』は『ゲート』で仕事だから、アワーズでは趣味のものを描いてるという感じですね(笑) 同人誌も、ほんとは夏も冬も出しているんですけどね。ここのところ、1年に1冊なんですけど。今年の夏は出したいと思っています。

デビューに至るまで、投稿以外にも持ち込みはされたのでしょうか。

竿尾:持ち込みはないですね。投稿だけです。最初は今のアワーズの編集長がついたのですが、『迷彩君』の2回目から今の担当に変わりました。それから10年以上、今の担当です。うちの愛媛の実家にも遊びに来たことがあります。

では、地理的に離れたところにいる担当さんとのやりとりはどのように行われてるのでしょうか。

竿尾:たいてい電話です。最近はFAXも全然使わず、ネームもデジカメで写真を撮って、メールで送っています。最初はスキャナーで1枚1枚スキャンしてたんですが、だんだん面倒になって(笑)

打ち合わせというと、ファミレスなどでというイメージがありました。

竿尾:いやーまともな打ち合わせっていうのは最近になってからし始めました(笑) 今まで担当から丸投げだったので……でも最近一発でOKが出るので、いいのかなあと思いながら。

担当さん、かなり竿尾先生のことを信頼されているようですね。

竿尾:どうなんですかねー……こっちとしては「担当仕事してよ!」と思いますが(笑)

兼ね合いが難しいところです……ところで、『迷彩君』という商業誌で連載した作品を、同人で続けようと思ったのは何故でしょうか。

竿尾:それはもう描きたかったからですね。『迷彩君perfect』(『迷彩君』愛蔵版)に入っている作品のいくつかは同人誌に掲載したものですよ。『コンビニDMZ』についても、同人誌で続きを描いているので担当が纏めたものを出そうかとも考えてくれているみたいです。

先生ご自身が自分の作品の続編を同人誌で描き、それがまた商業誌に載るというパターンは、とても興味深いです。

竿尾:本当は『コンビニDMZ』はまだまだやれると思っていたのですが、……色々都合で(笑) 一応、DMZシリーズで新しいネタ打ち合わせ中ではいるんですけど。

えっ!?それは是非とも読んでみたいです!もう詳しく設定などは決まっているのですか?

竿尾:『ゲート』の原稿が忙しいので、そうでもないです(笑) 中身としてはコンビニとそんなに変わらないと思いますけれど……描けたらいいですけどね。

自衛隊がドラゴンを倒す!? 『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』

先生は、柳内たくみ先生のファンタジー小説『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』を原作とした作品の作画を担当されています。『ゲート』は先生にとって初めての原作つきの作品ということですが、どういった経緯で作画を担当することになったのでしょうか?

竿尾: 原作者さんが編集部に僕ではどうかと伝えて、編集部からメールが来まして。何人かにあたったみたいなんですけどね。まぁ、原作者さんとは昨日の晩も焼肉食ったりしてたんですが(笑) 竿尾さんに描いてもらってよかったとも言ってもらえました。Amazonのレビューを見ても、僕のための原作みたい、と書いてあったりもして。先に話があってそれを絵にするという作業は好きなので、作画のみを担当することに特に抵抗などはありませんでした。

キャラクターデザインは、最初小説の方にあった挿絵のものを使用して、原作者の方にチェックを入れてもらうのでしょうか。

竿尾: そうですね、メインキャラやドラゴンは小説のカバーを見ながらこちらで絵を起こして。サブキャラは自分で起こしました。ネームのチェックも、大体は台詞の直しとかです。でも、スケジュールの関係で返答を待てずにこちらの下書きが半分くらいいってしまうこともあります。幸い直しは台詞の言葉尻ばかりなので、大幅に直したことはないですね。

先生が原作を読んでみて、面白いと思ったところ、見所はどこだと思いますか?

竿尾:やっぱり自衛隊が異世界に行ってドンパチしているところと、キャラクターですかね。

異世界の住人と、現代人とのギャップがとても面白い作品です。先生が『ゲート』を作画する上で大事にしているポイントはありますか?

竿尾:キャラクターはちゃんと魅力的になるように気をつけています。あと、のちのち主人公が動かなくなるところを漫画的にはどうにかしたいですね。原作を、Web小説投稿サイトで公開していた当初は違ったみたいですけれど。キャラについては、鎧とか、少しやりすぎて自分の首を絞めたところもあったと個人的に感じています(笑)文庫版のほうはライトノベルのような雰囲気でかなり可愛くなっていて、絵がだいぶ違うんですよ。でもまぁ、そのへんは気にせず作ってくださいとは言われています。

ラボメンからは、自衛隊がドラゴンなどを倒す爽快感がいい!という意見があります。漫画になって、その爽快感がとても増しているとのことです。

竿尾:昔からファンタジーやSFも描くのが好きだったので。デビュー前、学生の頃に描いていたガンダム漫画がうちのサイトにありますよ。今見たら、よう描いたわ!って感じですけどね。今よりよく描けてる。今だったらこんなに描けるかなと思う出来です。

竿尾先生のガンダム漫画)※出典:ギャラリーさを

今後、竿尾先生によってどのようにコミカライズされていくのか、大変楽しみです!最後に、漫画家を目指す学生の方にメッセージをお願いします。

竿尾:最初は、自分の好きなものをしっかり描くこと。そして全部一人で仕上げてみること。投稿のときくらいは媚びずに好きなものを描いてぶつけましょう。あとで好きなものを描いていけるかわかりませんから。僕みたいに好きなものを好き勝手描いている人は少ないと思いますので(笑)

ミリタリーを貫いてきた竿尾先生だからこその、とても説得力のあるお言葉です!今日はありがとうございました!




漫画家インタビュー

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