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少しだけ良い夏になる予感、 がする。



去年の夏、

私はずっと泣いていた。



ベッドに入ると、自然に涙が出てきていた。

ルームメイトにばれないように
壁の方を向いて声を押し殺し泣いていた。



実家に帰ると母は、
寝る前には笑える映画を見よう、と言ってくれた。


それでも1人で泣く私を、

母も泣きながら抱きしめてくれた。




大学2年生の夏は、
涙でふやけたコンタクトから見える世界で
過ごしていた。





その時、
私は自分の進路で悩んでいた。



アメリカの大学の制度でギャップイヤーを取り、
日本で過ごす最後の1ヶ月だった。

優先順位を考えれば
取捨選択なんて簡単かもしれないが、
アメリカも日本も捨てきれずに悩んでいた。



私は東京の大学が大好きだった。

米大受験を共にした友人達は、
アメリカに行ってよかったとみんな言った。


でも、

武蔵美で過ごした1年半の時間に
一秒の後悔もなかった。


そんな学校を捨ててまで、
私は今のタイミングで国外に出る必要があるのか。



それだけ、じゃない



口喧嘩が続いて、

大好きだった彼氏と別れた。


手を動かすことの楽しさを教えてくれた、

大好きなおじいちゃんが亡くなった。



大切なものをたくさん失った夏だった。



アメリカ大使館にビザを取りに行く朝、
泣きながら四ツ谷駅で母に電話した。

一年浪人までして勝ち取った米国大学進学だった。

嬉しいはずなのに、
ワクワクでいっぱいなはずなのに、

心の中の違和感が涙という形で現れた。

大使館の待合室で
グリーンカードの面接を待つ人々を見て、

このチャンスを逃そうとしている自分が如何に愚かなのかを知った。



渡米前の彼氏との最後の旅行は、
当日の朝6時にキャンセルが決まった。

用意したプレゼントと、
一緒に買った新幹線の往復切符だけが、

手元に残った。



実行委員をしていたイベント中に
大好きな祖父が亡くなった。

本当は、海を越えて会いに行きたかった。


幼稚園の時から得意だった工作や、
今でも大好きな料理は、

全部おじいちゃんの影響だ。

海を越えたところに住んでいても、
ミニチュアダックスフンドのグッズを見つけたら
すぐに国際便で届けてくれるおじいちゃんが
大好きだった。





夏を越えたら、

いつもの自分に戻れると思っていた。



そんなことはなかった。




日本の大学に残るよって言ったら、
楽しいほうを選んだんだねって言われた。



正直な思いを伝えた元恋人との共通の友人には、
男女で主張することって全然違うよね、

って笑いながら言われた。



別れ際に伝えられた、
9個くらいの私の嫌いなところ。


直そうと頑張った。

皮肉なことに、
元恋人は2週間で新しい恋人を作ってしまったけれど。



シェアハウスの友人達は、
酔うとその女の子の名前を何回も出した。

笑って受け流すことは、簡単だった。

顔も名前も知っている人だったから、
何度も自分自身と比べてしまった。




所詮、私たちは人の気持ちなんてわからないんだ。

その人の立場なんかに立てないんだよ。

そう思った。




けれど 一年経った今

あの夏は私に必要な夏だったんじゃないか、

と思う。



この夏、
憧れだった会社のインターンに合格した。

やっと自分が認められた気持ちになった。

最終面接で、
君の作品は最高だねって言われて嬉しかった。



春休みは、
インドネシアと台湾で
国際デザインワークショップに参加した。

毎日8時間のプロトタイプ研究のあとに、
デザインについて朝まで語り合う仲間ができた。



6月は、
初めて海外で自分の作品を発表した。

言語の壁がありつつも、
『あなたの作品に共感する人は、これからもたくさんいると思う』

そう言ってくれた人がいた。

私が展示した作品は、
去年の夏をテーマにしたものだった。





あの夏があったからこそ、

今の自分がいる。



泣いていた私を励まし続けてくれた、
2歳下のルームメイト。


3年ぶりに連絡をとったと思えば、
エーリッヒフロムの本を送ってくれる男友達。


そんな人たちを大切にしようと思った。



人の痛みに共感できるようになった。

悲しそうにしている人がいたら、

ハグしよう、

大変なこともあるよねって

心から言える人になった。


本人のいない前で、

その人を悪く言うような大人にはなりたくない、

幸せな話だけしよう。




もし、

今このnoteを読んでいて

悲しみでいっぱいになりそうな人がいたら、

1年後はきっと笑顔になれるよって伝えたい。




これからも努力と精進を惜しまない人でありたい。

周りに愛を届けられる人でありたい。


今年は良い夏になる、
そんな予感がする。



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