東京の本よみ

本をよむ人のポートレート。ストリートスナップさながらに、本を読んでいる人に声をかけ、読…

東京の本よみ

本をよむ人のポートレート。ストリートスナップさながらに、本を読んでいる人に声をかけ、読書姿と本のタイトルを撮影させてもらっています ※ご本人に事前に許可を取らない撮影は決して行っておりません ※ 撮影後記は毎月末日にアップ。 https://tokyonohonyomi.jp/

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  • 撮影後記

    ストリートスナップさながらに本を読んでいる人に声をかけ、読書姿を撮影し、読んでいる本のタイトルを教えてもらう「東京の本よみ」です。撮影を振り返って、毎月最終日に撮影後記を書いています。1写真1記事。

  • 撮影に関すること

    無断での撮影は決して行っておりません

  • 「東京の本よみ」はじめました

    2018年12月にはじめました

最近の記事

  • 固定された記事

『東京の本よみ』は、無断での撮影をしないと決めている

『東京の本よみ』は、ストリートスナップさながらに、本を読んでいる人に声をかけて写真を撮らせてもらい、本のタイトルと一緒に写真を掲載していくというシンプルなサイトだ。 我々は写真を撮る際に、 必ず本人に撮影(および掲載)の許可をもらうことを必須にしている。 こんなご時世だし、肖像権のことを考えたら当たり前といえば当たり前なのだが、顔が映らないように撮影すれば(=その写真から個人が特定できるものでなければ)、許可なしでも問題ないと言えばないと思う。 それに、許可取りを必須に

    • 【6月の本よみ】緑のなかで

      読書中の人に声をかけること自体がすこし久々だった。 やや緊張しながらも、午前中の気持ちのいい空気の中でそっと近づいて聞いてみると承諾してくださった。 改めて見返すと、緑の中に、水色のジャケットがよく映えている。 公園の一角で読書をしている姿を撮らせてもらったことはこれまでもあるが、「公園で読書」というのは、「喫茶店で読書」と同じような感覚で、本を読む環境として公園をチョイスしているのだろうか。 わたしは専ら積ん読の人間なので、こんな活動をしていながら恥ずかしいのだけど

      • 【6月の本よみ】記録としての写真

        桜の頃に撮らせていただいた写真を、初夏の今になって思い出しながらこの撮影後記を書いている。撮影した日から文章を書くまで、これほど期間が空いたことがなかったので、新鮮な気持ちで写真を見ていると、なんとなくこれまで撮影してきた他の写真をあらためて見てみたくなった。 この活動もおかげさまで一年以上続いているので、それぞれの写真に季節感があるのがよくわかる。とりわけ背景に桜の木が写っているとそれを感じやすい。写真のように花が咲いていれば春、葉が生い茂っていれば夏、葉が紅くなる秋、葉

        • 【6月の本よみ】されど井の深さを知る

          朝はいい。街がまだ動き出す前の静けさが、少しひんやりとした空気と相まって清々しい。特に初夏のこの時期は、これからやってくる本格的な夏への期待感がある。 写真の若い男性とはそんな朝の公園でお会いした。動きやすそうだけど洗練された服を着て、カバーを外した文庫本を読んでいる。荷物の少なさから考えても近くにお住まいのようだ。そしていつも通り推測の域を出ないが、その雰囲気からは、その時読んでいた本は男性にとって何度も読み返す一冊なのだろうという印象を受けた。 同じ本を何度も読み返す

        • 固定された記事

        『東京の本よみ』は、無断での撮影をしないと決めている

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        • 撮影後記
          36本
        • 撮影に関すること
          1本
        • 「東京の本よみ」はじめました
          2本

        記事

          【3月の本よみ】 子リスみたいな、野うさぎみたいな

          わたしはその日、とある読みものを買いに、普段いかない街に出かけた。 駅に着いたもののあまりに風が強く寒かったので、お目当てのものを購入してすぐ、12時を待たずにお昼をたべようと入ったカフェでのことだった。 一人だった私は、全部で10人近く座れる大きなダイニングテーブルのような席に案内され、一番奥の端に腰を下ろした。 まだ午前中だったこともあり、広い店内には数える程しか人がいなかった。 ごはんを食べおえ、買ったばかりの冊子を読みふけっていたら、気づくと店内はランチのお客

          【3月の本よみ】 子リスみたいな、野うさぎみたいな

          【3月の本よみ】 普段は読まない

          読書=趣味で読んでいる、とは限らない。 読まなければいけないという状況下で本を読むことだってある。 「普段はほとんど本を読まないけど、読まなければいけなくて」そういう人と出会うことがあるのは、この活動の面白さの一つだし、ドキュメンタリーを重んじてやっているからこその、産物のように思う。 わたしはその日、次の打合せまで少し時間があり、カフェで仕事をしていた。 しばらく仕事をしていて、ふと気がつくと、隣に座っている男性が本を読んでいることに気づいた。 真隣りだったことも

          【3月の本よみ】 普段は読まない

          【3月の本よみ】 桜の森の三分咲きの下

          冒頭から個人的な好みの話で申し訳ないが、咲きかけの花が好きだ。一輪咲きの花はもちろん、木に咲く花にしても三分咲きくらいがいい。本祭より前夜祭のほうが楽しめるようなものかもしれない。本祭の只中は祭りの終わりを予感させる寂しさがある。 大げさなマクラはここまでにして写真である。平日のこの日は3月にしては暖かかった。ほとんどのソメイヨシノが三分咲きで、個体によっては七分咲き、という一帯である。その桜の木の下で、若い女性が本を読んでいた。 都会的な見た目と裏腹に、土の上に直に座っ

          【3月の本よみ】 桜の森の三分咲きの下

          【2月の本よみ】 東京 2020

          「東京の本よみ」という名前でこの活動をはじめて、1年ちょっと。 これまでで最も「都会的」という言葉が似合う一枚ではないかと思う。 シャッターを切った瞬間に「アーバン!」とこころの中で叫んだほどだった。 前面ガラス張り。 そこに反射する室内の小さなライト。 見下ろすと途切れることのない人の往来。 入り口がややアーチ状になっているトンネルのような道には、左右の両側にデジタルサイネージが等間隔でずっと奥まで続いていて、近未来的な雰囲気を助長している。 そんな光景を前に

          【2月の本よみ】 東京 2020

          【2月の本よみ】 あれは果たして時間にすると

          そこはベンチではないけれど、人が腰掛けるにはちょうどいい段差になっている場所だった。 公園内で美味しいもののフェスなどが開催されている週末は、屋台で買ったものをほおばる人がいたり、子どもにおやつを食べさせながらひと休みしている家族を見かけることもある。 夏の夜には、朝までおしゃべりしていそうな若者たちを見かけたこともあった。 その日は、まだコートは手放せない、でも穏やかによく晴れた冬の昼下がりだった。 声をかけようと近づくと、何かを感じたのか、その方はすぐに本から目線

          【2月の本よみ】 あれは果たして時間にすると

          【2月の本よみ】 エニタイム

          場所に軟拘束されたままで時間だけ少し空いてしまうことがある。運転免許の更新に行ったときの、検査が全て終わってから交付されるまでの時間、空港に着いて搭乗手続きを済ませてから実際に搭乗するまでの時間。もっと身近なところでは待ち合わせの場所に着いたけど相手が来ていないなど。その場所から大きく離れることはできないうえに、待つことを強いられる。 今回の写真の人のように職業によるものもある。美容室の予約時間は依頼する側の予定が優先されるため、次の予約まで時間が空くことがある。かといって

          【2月の本よみ】 エニタイム

          「東京の本よみ」 から zineを出します

          現在 zineを作っています。 名前は、「現在地」。 判型はA3サイズ裏表(フルカラー)。 発行日は 2月21日(金) を目指しており、お値段は 昨年作成した「東京の本よみ」のオリジナルステッカー(1シート5種入り)とセットで500円を予定しています。 1号目のテーマは、作家 デヴィッド・フォスター・ウォレス。 作り方は、テーマを深く掘り下げるというより、テーマに関連する情報(本、映画、音楽、人物など)を A3スペース一面にアトランダムに散りばめ、我々の目線で独自に

          「東京の本よみ」 から zineを出します

          【1月の本よみ】 その本を読んでいるからといって

          最近、生活の中で「先入観」や「思い込み」について考える出来事がちょくちょく起こる。 一つ一つは、どれもちょっとした些細なことだ。 先入観というのは、抱いているその時は自分でも気づかず、何かが明らかになったり露呈したときに「ああ、知らぬ間に先入観を持って見ていたんだな」と気づくことになる。 先日、とあるトークイベントに行ったときのこと。 会場の収容人数200名規模の割と大きなイベントだったのだが、始まるまでの間、私の右隣りとさらにその右隣りに座っていた40~50代の2人

          【1月の本よみ】 その本を読んでいるからといって

          【1月の本よみ】 いずれ血となり肉となる

          「東京の本よみ」を始めてから一年が過ぎた。事前にご本人から許可を得た上で撮影する、という唯一のルールは引き続き守っているので、相変わらずお断りされたり承諾していただいたり、一喜一憂である。 思い立ったが吉日とばかりに何も考えず始めたら冬だった。外で本を読む人が少ない季節で始めるあたりアブストラクトというか無計画というか、まぁ無計画だろう。それでも時々、写真の男性のように、本を読んでいる人に出会う。この日も寒い1日だった。 冬の寒い日にもかかわらず外で本を読んでいるというこ

          【1月の本よみ】 いずれ血となり肉となる

          【1月の本よみ】 18:05 ビール解禁 読書タイム

          ビールはおいしい。 私はビールが好きなので、「本を読んでいる人」の姿と同じくらい、「ビールを飲んでいる人」の姿が好きだし、見かけると勝手にいい気持ちになってしまう。 こころの中で「いいですよね」と呟いている時もある。 ビールにもいろいろある。 みんなでわいわい飲むビール。 少人数で語らいながらじっくり飲むビール。 ひとりで飲むビール。 休日の昼間から飲むビール。 平日の夜に飲むビール。 人と飲むか、だれと飲むか、いつ飲むか、どこで飲むか、どのくらい飲むか、ど

          【1月の本よみ】 18:05 ビール解禁 読書タイム

          【12月の本よみ】 もう一軒寄りたい本屋さんがあってちょっと歩くんやけどいいかな

          外で本を読んでいる人には、本を読むこと自体が目的の人と、移動や待ち合わせなどの時間潰しとして本を読んでいる人がいる。 待ち合わせ、と聞いて思い浮かべる場所がある。渋谷駅前のハチ公やモヤイ像、東京駅の銀の鈴といった有名な場所の他に、表参道の山陽堂書店や、新宿西口にある新宿の目など、地味なりに知られた場所もある。近年では商業施設のまわりが広場になっているところが増え、その施設を利用するしないにかかわらずその広場は待ち合わせ場所として使われるようになっている。写真の若い男性は、都

          【12月の本よみ】 もう一軒寄りたい本屋さんがあってちょっと歩くんやけどいいかな

          【12月の本よみ】 読書をしながら人を待つ

          ざわめく場所で、ひとり静かに本に没頭する姿は、かえって目立って見えることがある。 短めな黒髪のその女性は文庫本を読んでいた。 後ろ姿からなんとなくクールな印象を受けて、声をかけるか一瞬迷ったが、女性の隣りの席も人がおらず、店内もさほど混雑していない(=声を掛けやすく、写真も撮りやすい)好条件だったので、声をかけてみた。 すこし驚きながらも撮影を承諾くださり、その日、その場所での読書姿が、一枚の絵になった。 text:Tamura Mayo

          【12月の本よみ】 読書をしながら人を待つ