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「これは水です」

今年も例年通り、年越しは実家の自分の部屋のベッドで眠り、元旦の朝を迎えた。

大晦日なのに全然夜更かしをしない(どころか、日付けが変わる前にだいたい寝落ちしてる)せいで、元旦の朝はかなりすっきりした いい目覚め。

今年も同じく、だった。

上半身だけ起こしてカーテンからそっと外を見たらいい天気だった。

ベッドから、実家に来るときになにげなく鞄に入れた文庫が見えて、手を伸ばした。

ちなみにわたしは(早いところ明かしておくと)本好きなのに全然読む力がなく、買うのは大好きなのに積ん読ばかりだし、読み始めても(さらにはすごく面白いと思った本でさえも..!)最後まで読みきれないことがかなり多い。

最後まで読んだという意味での年間の読書量なんて、かなしい冊数になるからカウントすらしたくないし、実際したこともない。

でもどの本も読むのを諦めたわけじゃないから、去年買った本も一昨年買った本も、もっと言えば10年以上前に買った本も、「ものすごい時間と間隔をあけながら、読んでいる最中」だと思っている。

本屋はもちろん、本がある空間が好きだし、本の所有欲は強め。本のイベントにもよく出向く。だが肝心な読む力は著しく乏しく、スイッチが入らないと本当に読めない。

これが、ここ数年冷静に自分を観察した上ではっきり自覚したわたしの特性だ。

そういうわけで、今回、鞄の中に入れてきた一冊の文庫も「開かない可能性も全然あるな」と思いながら持ってきた、まだ1ページも読んでいない本だった。

それは

THIS IS WATER(これは水です)」

という本で、

2008年に自ら命を絶ったアメリカの作家が、その3年前に、ある大学の卒業式に招かれ、卒業生に贈ったスピーチの言葉が綴られたものだ。

作家の名は、
デヴィッド・フォスター・ウォレス。

わたしがこの作家の名前(というか存在)を知ったのは一昨年で、彼ともう1人、2人の実在する作家をモチーフに作られた、実話を基にした映画によってだった。

(ちなみにひたすら会話劇な映画で、好みが分かれるかもしれないけど、わたしは大好きで2~3度観ている。)


本が読めないわたしが、元旦、目が覚めた数分後から、その文庫をいっきに読みきった。


そこにはまさに、
こないだnoteに書いた、

『東京の本よみ』というサイトを立ち上げる中で考えた、 大人になると考えがちな「目的」について

ここにもつながるようなことが書かれていて、

・社会に出たり大人になると往々にしてどうなるか
・そのとき、何を考えるか
・何を考えることを選ぶのか

といったことが、卒業生に向けて真摯に語られた(スピーチされた)言葉で綴られていた。

ものすごくありきたりだが、
「本って、ほんとに読むべきタイミングで出会うようになってるんだな..」と思った。

学生時代の頃から、はっきりとしたなりたいものや大きい夢を持ったことがないのだけど、思えば「いい歳の重ね方をしたい」とか「いい歳の重ね方=いい大人ってなんだろう」とか、そういうことはずっと考えていたなと思う。そして今も考えている。

そんなわけで、
わたしの2019年は、いまから15年近く前に、ウォレスが卒業生に向けて贈ったスピーチを心に浴びるところからスタートしたのだった。


2019.1.2
田村まよ

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