紫煙がただただ沁みた

不動産の天才達が集う麻布十番のBar中間省略。

なにげないDMのやり取りから、紹介ということでついにその門をくぐることができた。待ち合わせ人の名前をウェイターに告げると、店の奥にあるカウンターに案内された。声の掛け主はL字になってるカウンター、その一番奥の角で静かに葉巻をふかしていた。「のらえもんです、ご無沙汰してます」声をかけた。

-ああ、よくきたね、ちょっと座りなよ

そういって隣のハイチェアに視線を移した。いわれるがままに隣へ座り、バーテンダーにマッカランの18年をロックで、と告げた。普段こんなに高い酒は飲まないが、こういった場所では背伸びしたいものだ。

-のらえもんちゃんさぁ、

声の主はそこで言葉を止め、葉巻を灰皿に置いた。

-ブログのネタに困ってるんだって?それならいいネタあげるよぉ

独特の間延び感がある話し方。僕は相槌すらうてなかった。

-そろそろさぁ、投資もやらない?昼間はサラリーマンなんでしょ、タイトルは「マンション投資を真剣に」、、みたいな、とにかく、全宅ツイが薦めた物件をノールックで買い進めるってのはどう?おもしろくない?

「全宅ツイが薦めた物件ですか。」
不動産業界の中でも海千山千の連中しか入れないと言われる全宅ツイ。その最深部にいるぶろぉかぁ部が薦めるとなると、悲惨な結果に、

-なぁ、どエンド君

はっとした。照明が当たらないL字カウンター角の向こう側。その暗がりを見ると、しばらく会わない内に、ずいぶん顔つきが鋭く人が変わったような、どエンド君だった。彼はストレートのスコッチを舐めるように飲んでいた。

「のらえもんさんなら、年収の20倍までスルガはすぐ貸します。そこから大きくしていきましょう、いけます。どエンド物件紹介します」

目線はまっすぐ、そのまま。呟くように、だが通る声でそうしゃべった。メガネが不気味に光っていた。

-だそうだ、決まり?でいいのかな

「少し考えさせてくれませんか」僕はそれくらいしか言えなかった。頃合いを見計らったバーデンダーがマッカランをカウンターに置く。

-いいよ、好きに考えなよ、このBarの中でさぁ

SNSで「あくのふどうさん」と名乗る男が葉巻をまた咥え、そして紫煙を吐く。彼の紫煙が沁みて、悲しくないのに涙が出そうになった。

#Bar中間省略


(上記は82%ほど実話です。不動産投資ブログを始める計画はありません。)

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