【NYY 番外#1】因縁のアストロズ戦
こんばんは、KZillaです。
昨日はヤンキースファンにとっては待望の対アストロズ戦がありました。
ご存知の方が多いかと思いますが、アストロズは2017年-2018年にカメラとゴミ箱を使用した不正サイン盗みをしており、17年のプレイオフではヤンキースがアストロズに敗北をしてしまっている為、ファンが相当恨んでいる中での試合でした。
(17年にアストロズがワールドシリーズ優勝をしてしまっていたので、ヤンキースファンに限らず多くの野球ファンが怒っていますが)
試合は7-3で勝利を収めることが出来ましたが、試合自体の内容に加え、試合中のブーイングが話題になったり等てんこ盛りの一日でしたので、本noteにまとめさせて頂きます。
試合内容の振り返り
まず初回表に3Bアレックス・ブレグマンがソロHRを放ち、アストロズが先制:
辛辣なファンに清々しい一矢を報え、最後ベンチで渾身の吠えを放ちました。
ただその直後、1回裏で1Bルメイヒューがヒットで出塁後、絶好調のDHスタントンが逆転2ランHRを打ちます:
その後もジャッジ四球、ウルシェラ安打、トーレス四球でノーアウト満塁にするも、絶不調組のフレージャーとヒックスがそれぞれダブルプレーとセカンドゴロに倒れ、3-1リードで1回終了。
2回、3回は特に動きがなかったが、4回にLFブラントリーのHR、1Bグリエルのタイムリーツーベースでスコア3-3の同点へ追いつかれてしまいます。
ちなみにグリエルのツーベースは当初HRとの判定でしたが、リプレー検証で覆されました。
再度試合が動き出すのは6回裏。2アウト満塁の状態で迎えたのがDJルメイヒュー:
1打点の内野安打となるはずだったのが、3Bブレグマンの悪送球で更に2点追加されます。ただし、3人目の走者オドーアがホームインする際にCマルドナードと衝突をしてしまい、両者が怪我で交代となってしまいました。
(幸い両名とも大きい怪我は避けられた様で、オドーアは左膝の怪我、マルドナードは僧帽筋の怪我との初期診断でした)
その後絶好調のスタントンから再びタイムリーが出て、結果スコアがヤンキース 7-アストロズ 3となり、そのまま両チーム追加得点無しのまま試合が終了。
ブーイングの嵐:ヤンキースファンの反応
試合前より多くのファンがTwitterやReddit等SNSでブーイングや野次を飛ばす予定の旨告知をしていましたが、コロナ影響によりまだ定員の20%の1万人程度分のみ参加可能だった点、また平日のナイターである点を踏まえ、まあ面白い野次が聞けるかなー程度の感覚でした。
正直、放送に漏れて聞こえる程の野次が聞けるとは思いませんでした。
特にアルトゥーべへ対するブーイングが一番酷く、野次も試合中に「F**k Altuve」コールが(本人がフィールドにいなくとも)何十回も響き渡りました。(当然、公式には動画等が出ておりません...)
その他、選手を非難する手作り看板やゴミ箱型の風船等、様々な形で不満を表していました:
そして昨シーズンまでヤンキースにいた田中将大もゴミ箱風船の動画をリツイートし、日本国内でも注目を浴びました:
何故ここまで恨むか:ヤンキースファンの心理
確かに不正を働いていたことはあるまじき行動ではあるが、何故ヤンキースファンは4年前のことを今更ここまで過激に...と思うかもしれませんが、色んな要素の積み重ねで怒りがどんどん大きく膨れ上がっています:
<①不正が無ければヤンキース優勝出来た説>
アストロズがサイン盗みをしていた2017年プレイオフのALCS(アメリカンリーグ優勝シリーズ)にてヤンキースが7戦で敗北をしており、ワールドシリーズにて敗北をしたドジャースに次ぐ2番目に大きい被害者とされています。
特に当該シリーズでは7戦中4戦が(サイン盗みをしていたとされる)アストロズの本拠地で行われており、両チームが自身のホーム試合には全て勝利していたこともあり、「サイン盗みがなければヤンキースが勝てたのでは」との意見が広まりました。
実際、当時先発ローテに所属をしていたCC・サバシアとソニー・グレーはいずれも「サイン盗みが無ければ勝てた」「当時理由はわからなかったが、アストロズの本拠地では勝てる気配がなかった」等と意見表明しています:
(上記は私が以前FF様の為に字幕をつけたした動画です)
結局は「優勝のチャンス奪われた」と感じているのが最大のポイントです。
<②2017年AL MVP賞はジャッジが受賞すべきだった説>
更に2017年のAL MVP賞はアストロズのホセ・アルトゥーべが受賞していた為、2位入賞のアーロン・ジャッジに譲るべきではとの意見も広まりました。
ただ、(サイン盗み問題から話が逸れますが)それ以前の問題として、サイン盗み云々関係なく「そもそもジャッジが受賞すべきだった」との見解も多く、私個人も同意見でした。(勿論偏見入りですが)
17年のアルトゥーべ・ジャッジの成績を比較したものをご覧ください:
まず選手の総合力を示すWARベースでは、bWAR (Baseball Reference計算)及びfWAR (FanGraphs計算)で若干の乖離があるものの、概ね似た水準でした。
内容を噛み砕いていくと、打率(BA)、ヒット数、三振 (の少なさ)、盗塁(SB)ではアルトゥーべが上回っているものの、
出塁率(OBP)、長打率(SLG)、OPS、wRC+(※)、長打(XBH)、ホームラン、四球、打点、得点、DRS及びUZR(Defensive Runs SavedとUltimate Zone Rating、いずれも守備指標)は全てジャッジが上回っています。
接戦ではあるとは思いますが、守備では上回っており、打撃は総合的に勝っている点を踏まえると、ジャッジの方が上だったと言えるのでは、と当時より思っていました。(改めて、勿論偏見入りですが)
話を戻しますと、上記の通りサイン盗みを加味せずとも接戦だったので、サイン盗みを加味した場合は当然ジャッジが受賞すべき、との考えが多く、怒りに拍車をかけております。
そしてヤンキースファンがアルトゥーべへの当たりが一番強い理由はMVPを奪われたと感じているから、ということになります。
(サイドバー:アルトゥーべはサイン盗みしてない?)
これも少し話が逸れますが、当時のアストロズの主力選手の中ではアルトゥーべが唯一参加に消極的だとされており、データ上も(公式ではなく、ファン調べのものではありますが)アルトゥーべが打席に立った際のゴミ箱叩きが極端に少なかった様です:
個人的にはこのデータを踏まえあまりアルトゥーべを責める気にはなりませんが、「結果ジャッジからMVPを奪った」や「やらないにしても止めないのも同罪」の様な意見も妥当ではあると思います。
<③MLBが主犯選手らを処罰をしていない>
当該問題告発後、MLBが正式に調査を実施した訳ですが、その過程で選手から事情聴取をする際に証言と引き換えに罰から免除をしてしまいました。
結果、調査が完了し正式に不正が証明された後、罰を受けたのはアストロズの首脳陣のみで、選手は一切裁かれずに終わりました。
これを受け(ヤンキースファンに限らず)殆どのMLBファンが大激怒し、批判に更なる拍車がかかりました。
(罰の件は複雑な背景等も色々ありますが、ここでは説明を割愛させて頂きます)
<④一部選手が反省していない?>
(感覚論なので一意見として捉えて頂ければと思いますが)本件発覚後、各選手が反応や謝罪等を求められた訳ですが、割と誠実に謝罪をした者もいれば、一部開き直っている様にしか思えない者もいました。
主犯とされる選手のうち、マーウィン・ゴンザレス(現レッドソックス)は素直に謝り、ジョージ・スプリンガー(現ブルージェイズ)及びグリエルは変に目立たない様発言には気をつけていた印象を受けますが、ブレグマン及びコレアは火に油を注ぐ様な発言が多く、更にバッシングを受けました:
ブレグマンはどの質問に対しても "The Commissioner made his report" (コミッショナーのレポート通り)の一点張りで、あまり誠実さを感じさせない受け答えをしていたことでファンの批判を集めました。
一方、コレアは批判に対し逆ギレをする、という広報担当にとって地獄の様な戦法を取りました。
「アルトゥーべはMVPをジャッジに返還すべき」と発言したドジャースのコディ・ベリンジャーに対し、「何も知らないくせに嘘をつくな、ちゃんと事実を調べて発言出来ないなら黙ってろ」との旨反論をし、これも大大大炎上しました。
前述のゴンザレスは謝った後、(既に移籍をしていることもありますが)今となっては概ね批判を避けられている点を見ると、やはり他の選手も素直に謝った方が良かったのではと思いますね。
<⑤選手自身も公に批判を表明している>
これだけ大きい不正なので、選手達も怒っている者が多く、公に批判する者が多かったです。
メディア対応トレーニングが義務化され、物議を醸す様な発言はあまりしないヤンキースの選手でも不満を隠しきれず、仏として知られているジャッジでさえツイートやインタビューで何度か言及しています。
スタントンは2017年に59HRを放っておりNL MVPを受賞していますが、「自分もその年サイン盗みをしていたら80本以上打てた」とまで宣言しました。
(ちなみにHR記録はドーピング全盛期のバリー・ボンズが樹立した73本)
また他のスポーツにも波及し、バスケのレジェンドLeBron Jamesでさえ「自分だったら大激怒」「コミッショナーちゃんとを選手の意見を聞け」とツイートしたことがかなり話題になりました:
選手や著名人がこれだけ怒りを寄せると、ファンも同様に思いますよね。
<⑥そもそもニューヨーカーは(スポーツに関し)過激>
これは題名通りの話ですが、ニューヨークはファン・メディア共に非常に辛辣な方が多いので、他マーケットより過激な反応が起きます。
ヤンキースも100%潔白ではない
今回の試合が何故これだけ盛り上がったか分かっていただけたかと思いますが、最後に1点。
ヤンキースも過去に不正の罰を受けており、かつ一部の者には今でもサイン盗みの疑惑をかけられています。
2017年にブルペンの電話の不正利用が発覚し未明の罰金を支払っており、不正利用の詳細は開示されていないものの、サイン盗みに使用された証拠は見つからなかったとのことでした。
この不正自体は比較的軽いとされており、(もちろん不正は不正で良くないですが)そこまでメディアや他球団ファンの批判を買うことはありませんでした。
しかし話はそこで終わらず、スポーツ賭博サイトDraftKingsの利用者による訴訟(内容を簡潔にまとめると、MLBがサイン盗みを看過したことにより試合に賭けをした利用者が不利益を被ったとして訴えています)の裁判にて、当該罰金を課された際にコミッショナーからヤンキースへ送られた手紙の開示を求められています。
ヤンキースは当該開示を断固拒否しており、未だ決着はついておりませんが、「本当に不正をしていなければ素直に開示するのでは」との意見もあり、批判は避けられない状況にいます。
(ここからは個人的見解及び感覚論ですが)仮に何か不正を働いていたとしても、アストロズが手がけた様な大掛かりな不正であるとは正直考えにくいと思っています。
というのも、アストロズ並の不正をしていた場合は①大掛かりな調査がかかった際に既にバレているはずですし、②主力選手(特に仏のジャッジ)がここまで大々的にアストロズを批判出来ないと思います。
ただ、題名の通りヤンキースが100%潔白ではない点は否めず、(不正の度合いが違うとしても)ヤンキースファンがアストロズを批判するのはhypocriticalとされても仕方ない気はします。
(もっと言うと、ドーピング問題等を含めると全てのチームが歴史上のどこかで不正をしているので、何かのアドバンテージを追求することはスポーツでは避けて通れない道だと思っています。奥が深い話ですね...)
結論:ライバル関係を楽しみましょう
1919年のブラックソックス事件・1990年〜2000年代のドーピング問題と並ぶ不祥事を起こしてしまったアストロズは(少なからず当事者がチームを離れるまでは)他球団の選手やファンからの批判は避けられないでしょう。
ただヤンキースファンには本気で怒るのではなく、終わったことは終わったとし、ある種のネタとして扱って欲しいなと個人的には思っています。
勿論暴力や人種差別等の行き過ぎた誹謗中傷は絶対許されるべきではありませんが、激しい野次はアメリカのスポーツの一部ですし、昨日の試合の様な平和?(日本人からしたらF**kの連発は平和には思えないかもしれませんが)なファン表現はより面白いライバル関係への肉付けだと思います。
何よりも、アストロズをプレイオフで倒すことで因縁を晴らし、清々しい優勝を決めることが一番気持ちいいと思いますので、期待を胸に応援を続けたいと思います。
ではまた次回。
(引用:ESPN、Baseball Reference、Fangraphs、YES Network、各種SNS等)
(写真: Joon Lee氏)
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