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“晴れ舞台”で輝きながら働く体験を~就労体験プロジェクト参加者に聞く~

 「就労体験プロジェクト」※とは、さまざまな理由で社会参加や働くことが難しい方々を対象とした就労体験です。スポーツやエンターテインメントのイベント会場など、非日常の“晴れ舞台”でお仕事を体験していただき、社会参加に向けた第一歩を踏み出すための取り組みです。
※ 本取組は、NPO法人ピープルデザイン研究所に委託して実施しています。


 「TOKYO SOCIAL FARM ACTION(東京ソーシャルファームアクション)」の一環として、就労体験プロジェクトを実施しました。
前回の様子は、こちらに掲載しています。

今回は、国立競技場で実施

 “東京に暮らし働く全ての人が輝き、活躍できる社会の実現に向けた取り組み”として実施している「TOKYO SOCIAL FARM ACTION(東京ソーシャルファームアクション)」。前回に引き続き、さまざまな方の“輝き”を見ることができました。

入場者へのプログラムを配布

 就労体験は、2024年2月17日に国立競技場にて行われた、Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)主催のFUJIFILM SUPER CUP2024。参加者は、就労を目指している若者15名。仕事内容は、入場者へのプログラムの配布でした。当日は約5万2千人ものお客様が来場され、その方々をお迎えする運営スタッフの一員として働く体験をしてきました。

社会で生きていくために

就労体験の様子

 「スタジアムでスタッフとして仕事をすることは、なかなかできる体験じゃないからやってみようと思って」と参加した方がいました。
 
 その理由を尋ねると、「ゴールは就労すること。でも今はその前段階として、社会性を身につけるなど、自立するための訓練をしています」との返事が。就労を目指す大きな理由は、「社会で生きていくための力をつけること」だと力強く話していました。
 
 様子を見ていると、他の参加者にも声をかけて、リラックスできる雰囲気を作ったり、状況に応じてパンフレットの配り方を工夫したりと、この体験を通して就労するための経験を地道に積み重ねていました。

想像以上に、やって良かった

「大それた理由はないけれど、とりあえず行動しないと、
いつまでも変われないなと思って」と話す方

 「数年前に体調を崩して‥‥。今まで、少しずつ色々やってきたけれど、なかなかうまくいかなかった。人前に出ると話せなくて。就職面接も、それで失敗してしまって。元々は人と関わるのが好きで、アルバイトも接客業をしていた」と、これまでの経緯を聞かせてくれました。
 
 「最初はすごく緊張していた」と話していましたが、時間が経つにつれてお客さんへの挨拶の声もハッキリし、小さな子には膝を曲げ、目線を下げて手渡しする気配りをしながら業務に取り組んでいました。帰り際には、「後半は人がすごく増えて忙しくなったけれど、そこからの方が楽しかった。『これから試合が始まるんだ!』という高揚感が、お客さんにも会場全体にもあふれていて、自分の気持ちも高ぶってどんどん楽しくなった」と話してくれました。

参加者は、共通のユニフォームを着用

 就労体験を通して印象的だったことは、「やってみたら意外にできるものだなと気づいた」ことだといいます。「人と接するのは数年ぶり。体調を崩して一度はできなくなったけれど、やってみたら自分はちゃんと人に対応できていた。何もできなかった時期があったことを考えると、この体験ができて想像以上に良かった」と、充実した表情で話してくれました。
 
 始まる前は少し不安げで緊張感が漂っていましたが、終礼を終えた後の表情は爽やかで達成感を感じているようでした。「今は就労体験とか、機会があればどんどんやっていった方が自分のためになると思っています。やれるものは全部やっていきたい」と次のステップへの意欲を高めている様子でした。

「支える側」として参加してもらっている

お話を伺ったJリーグ(日本プロサッカーリーグ)本部の竹内さん

 今回の就労体験の受け入れ先となったJリーグ(日本プロサッカーリーグ)本部の竹内さんは、「就労体験参加者の方々には、我々が『協力してあげている』というのではなく、スポーツを『支える側』として参加してもらっています」と話していました。

 その時に大切にしていることは、「ご自身の体調を第一優先にしていただいて、無理なくできるところでやってもらうこと」と竹内さん。なぜなら、「参加してくださった方全員に、満足して帰ってもらいたい」と思っているからだといいます。

 「試合会場での就労体験をきっかけに、『また試合会場に行ってみよう』と家から出るきっかけになったり、仕事をすることへの次のステップにつなげてもらえたらいいな」と考えながら、就労体験の受け入れ態勢を整えているそうです。

 就労体験の良さについては、「参加者の方が少しずつ成長されていく姿や、お客様が笑顔になっている場面を見ると、就労体験は『お互いのパワーをもらい合う場』にもなっていると感じています。スポーツの場を活かしながら、みなさんの笑顔を見られることが本当にうれしい」とおっしゃっていました。

さらに、「受け入れ側も、参加者の方も、お互いに無理のないようにすることも大切」とも。具体的には、『こういう仕事内容ならお願いできるかな?』といった仕事内容の調整などをすること。そうした細かいことについては、「我々と参加者の間に入って、調整してくださる団体(今回の就労体験の場合はNPO法人ピープルデザイン研究所)がいらっしゃるので安心している」ともお話されていました。

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