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【Reyes BACKSTAGE】 U-18 街クラブ日本一への軌跡 ②TCC全国大会 R16 vs 塩釜FC



K3参入戦の敗戦から間も無く大阪へ。



J-GREEN堺にはかなりの強風が吹き荒れていた。



<TownClubCUP 2021全国大会>


1期生にとっては最後の公式戦。


ユース創設から新たな道を切り拓き、苦難の連続を乗り越えて歩みを進めてきた3年生。

1シーズン目の終わりに計画されていたポルトガル遠征はコロナの影響で中止に。
2シーズン目の県リーグでは1位となったがこちらもコロナで昇降格無しのレギュレーションにより昇格戦が実施されず。


2020年末に初出場したタウンクラブカップ全国大会ではあと一歩届かず準優勝で終えており、何とか結果をと求めてきた3シーズン目だったが、クラブユースの全国大会出場と県リーグ昇格はあと一歩まで来たが掴めず、手にしたい結果、残したい形に届きそうで届かない歯痒さを抱え続けてきていた。

彼らが1・2年生の時に監督を務め、2021シーズンはアカデミーダイレクターとU-18コーチを兼務した阪本は「彼らには笑顔で終わってほしい」と常々話していた。



2021.12.26. 試合前アップ




<スカウティング情報>

事前にスカウティングした情報として
・1−4−4ー2
・ドリブル時にターンが多い傾向
・ゴールキックを下から繋ぐorポジションを広げて前線に入れる
・素早いリスタート
・CK攻撃:ショートがある
・CK守備:ショート対応に2枚関わりこぼれ対応が手薄になることも
・守備時の球際へのアプローチが強い傾向

・FW:体が大きい、ドリブルでの侵入
・SB:ゴールを持った時にいなすプレーが多い
・CB:守備で前に出てくる傾向
・SB:カットインの対応に遅れる傾向
・V:左利き


これらを参考にゲームへ向かう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
※用語解説
CK:コーナーキック
FW:フォワード
CF:センターフォワード
SB:サイドバック
CB:センターバック
HB:ハーフバック
V:ボランチ
WB:ウイングバック
SD:シャドウ
GK:ゴールキーパー
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




<R16 試合前>

初戦のキックオフは14:40予定。

午前中に軽めのトレーニングを実施した。
その時間帯に、塩釜FCが練習試合を行なう予定があったので観戦する事に。

試合の様子を観ることができたのは初戦を迎えるに当たり、特徴を確認すること、マッチアップのイメージができることや気持ちを高める為に有効に働いたと思われる。


実は、昨晩に開催されたオンラインの監督会議に塩釜FCの参加はなく、移動している最中との事前情報を得ており、そのまま準備時間のない中で試合になれば身体が硬くなっていて動きが良くないのではと淡い期待を抱いていたが、練習試合の中で選手それぞれが良い動きをしており、監督として少しでも勝ちにつながる情報を得たいという気持ちを持っていたが淡い期待はあっさりと打ち砕かれた。



2021.12.26. R16 塩釜FC戦


<R16 vs 塩釜FC戦>


いよいよ開幕戦がキックオフ。
前日練習で度肝を抜かれた強風は、この日も吹き続けていた。


そして、予報では雪が降るとされていた。

2021.12.26. R16 塩釜FC戦


こちらの狙いとして選手に伝えていたもの。

◆守備面
・相手の攻撃を自分たちの右回りへ促し相手の右サイドでボールを持たすことを減らす。相手のテクニックがある選手にボールを持たせない。
・リスタート、ショートコーナーへの対応、反応を怠らない。
・相手のゴールキックを近くでスタートさせるようにスタート時に距離を詰め過ぎない。前プレの機会を増やす。
・相手のドリブル突破に対しての対応を注意して行う。

◇攻撃面
・相手の背後のスペースを奪いに行く所から狙う。特に右サイドのボリュームを多くする。
・相手守備陣を割に行く突破、エンドラインを目指すボリュームを増やす。
・展開数を増やし、スペースのある中で推進力を使う。
・風上側からのスピードのあるアーリークロスの狙い。


強風に対しての使い方や注意事項を確認し、先取点を奪えるように攻守のバランスを意識を高めてゲームに入った。


2021.12.26. R16 塩釜FC戦


<レイエス:スタートメンバー>
                 CF:中島
  左SD:宮澤     右SD:河野(遼)
左WB:村山 左V:松阪 右V:遠山 右WB:辻
  左HB:タイラー   右HB:横山
       CB:中村
       GK:甲斐



前日練習と同様に風が強く、慣れるまでは球離れを早くするというのは選手たちも理解してゲームに入っていた。相手プレスのスピードと距離を見極めながらボールを持ったり進めたりと、慌てずに良い入りができていた。



欲しかった先制点を奪うことができたのは前半12分。


<先制点>


相手コート、右WB に入った辻からの横パスを受けた右V遠山が縦パスをCF中島へ送り、ペナルティエリア前でターン。
相手マークのプレスを受けながらも内側に入ってきていた左WB村山へショートパスを送る。
村山が相手を背負いながらコントロールしてペナルティエリアに侵入し、隣中央に位置していた左SD宮澤へパスを送る。
ボールを前方に転がすようにしてディフェンスの間にプレスを受けながらも前に持ち出し、相手GKが出る前にゴール右側へ押し込んだ。



雪がちらつく中の先制点だった。


<連続失点>


先にゴールを奪えたことで試合を優位に進められるのではないかと思った矢先、相手CKからの流れで18分に失点。

そして飲水タイムあけの1プレー目の流れから、相手ロングフィードが風に乗りその対応を誤った隙に持ち出され22分と、立て続けに失点して逆転を許してしまった。


暗雲が立ち込めた。

かに思えたが、29分。CKをショートでリスタートしその流れから中島のミドルシュートが決まって振り出しに戻すことができた。



<ハーフタイム>


ビハインドではなく同点でハーフタイムを迎えられたことは精神的にどれほど前向きになれたことか。
選手たちの表情もいきいきとしているように感じた。

後半に向けて相手のドリブルの持ち出しとカウンターでの攻撃に対しての警戒を強めて守備の対応をすること、攻撃に関しては、右SDを河野(遼)に替わりドリブルが得意な鈴木を入れ、右側からの突破の狙いを改めて確認した。



<河野遼太>


河野(遼)は今シーズン、小柄ながら瞬間的に発揮される爆発的なパワーを持ち、前線の守備のスイッチを入れるキーマンとして、攻撃時にはボールを収めて時間をつくり起点として重要な役割を果たしていた。
双子の弟で共にチームを活性化してきた河野友吾の兄であり、また、後輩たちからは兄貴分として慕われ、今シーズンの副キャプテンを務めており、全体を鼓舞しながらも自らが一番のファイトしたプレーができる選手としてチームを牽引してきた。
だが、夏のクラブユースを区切りとして進学の準備を進めるために一旦チームを離れており約半年のブランクを経て先月に復帰したところだった。彼のベストパフォーマンスからするとまだフィットしきれていない状態だと感じた。後半の入りの様子を見る選択肢もあったが、K3参入戦の反省からスコアを動かしに行くというところで待たずに動いていく選択をした。
逆に鈴木はパフォーマンスを上げてきていたところもあったので交代に踏み切ることができた。



<後半>


後半。相変わらず強風は吹き続けて、一進一退の展開が続く。

右HBの横山からの配球で前線に起点をつくり、右サイドから中央へ繋いで左Vの松阪がシュートを放つがヒットせず。カウンターで相手コートの中でスピード活かし進むもペナルティエリア付近で止められる展開がいくつかあった。


後半10分。2枚目の交代カードを切る。左WBの村山に代えて三上を投入した。三上にはボールや体を動かして相手の逆をとるプレーやタイミングの良いオーバーラップでチャンスをつくることを期待した。


後半15分過ぎ、松阪がオーバーラップしゴールラインまで駆け上がってコーナーキックを獲得したが、アクシデントが発生。
右太腿の裏側がつりかけていた。前屈して足を伸ばすようなポーズをとっていた。疲労は勿論あっただろうが気温の低さがかなり起因していたようだ。
少ししてピッチを離れることなくポジションをとったので一安心したが、この早い時間での交代がよぎった瞬間は正直焦った。
想定外のイレギュラーな状況は心臓に良くない。

飲水タイムが明けても一進一退の展開は続いた。


<3人目の交代・髙橋>

後半残り15分。3枚目の交代カードを切る。
先制点を奪った左SD宮澤に代えて、髙橋を投入しゴールを奪いに行く。

髙橋は足が速く、そのスピードを活かしたドリブル突破で相手の最終ラインを切り裂くプレーを特長とする選手。チームのジョーカーとしての役割を担っていた。

髙橋は昨シーズン、1つ上の学年を相手にする中でこのチームで唯一持ち前のスピードを活かし1人でチャンスをつくることができる選手としてチームを牽引していた。昨年のこの大会でも攻撃の中心として準優勝に貢献していた。

先日のK3参入戦でも切り札として準備していたが、残念ながら体調不良で試合に参加することができなかった。度々体調不良で休むのは今回に始まったことではなかった。致し方無い部分あるもののそうでは無い部分がある様にこちらが感じてしまうところがあった。実は今大会のメンバー選考でメンバーに含めるか悩んでいた選手の一人だった。1・2年生の選手に経験の場を与えた方が良いのでは無いかと。

大会前に本人と話をした。本人の意志とチームの代表として参加することを確認したかった。すっきりとしたわけではなかったが信じることとした。
そんな経緯があった選手。後に進むことができた決勝戦で大活躍を果たすがこの時にそうなるとは考えていなかった。



刻々と過ぎる時間に、1点取れば、1点取られたら、という緊張感が増していく。
髙橋を活かすためにボールを送るが、相変わらずの強風に思うような配球ができずにいた。



<後半終盤>


後半30分。自陣ゴールから20m右側、相手ボールのスローイン。中央方向で受けた相手選手がクロスを入れる。そのボールがゴールへと向かいGK甲斐がジャンプしながら弾きあわや失点の場面を辛うじて防ぎ肝を冷やす。

後半34分。逆に相手コートゴールから25m中央で左V松阪の左足ミドルシュートが鋭い弾道で放たれたが枠を捉え切れなかった。次のプレーのゴールキックの前に相手CBの足が攣り伸ばしていた。疲労感が見えてきていた。

こちらも疲労感は否めず、守備で戻り切れずクロスがゴール前を横切り、ミドルシュートを放たれ、失点になってもおかしくないシーンが続いたが、ボールが逸れて何とか免れていた。



<後半アディショナルタイム・決勝ゴール>


大会レギュレーションによるとこの試合に同点の場合は即PK戦だった。
先日のK3参入戦のPK負けを経て、PK戦になった場合はGK佐藤に交代して戦うプランを立てていたのでアップのペースを上げさせ交代を考えていたところだった。
そして、第4審がアディショナルタイム3分の表示を示してすぐのこと。

相手コートハーフライン付近でCF中島が相手ボールを奪い右側に流れるようにドリブルで前進。

ライン際で入れ替わろうと試みたが相手の足に掛かりスローインに。サポートで素早くフォローに入っていた右V遠山がボールを拾いスローインを、更に相手の背後をとるためにランニングしていて右コーナー付近までポジションを上げていた左V松阪に投げる。

ボールを受けた松阪が奪いにきた相手DFをいなし、一つ前のプレーの後ペナルティーエリア角の外側からゆっくり前に進みペナ内にポジションをとったCF中島へパス。

中島はフィニッシャーとして今シーズン多くのゴールを決めていた選手。
松阪からの右斜め前からやや弾んで向かってくるボールを左足で右から左へ引き込むようなタッチで利き足である左足の前にパスの勢いを吸収して転がし、若干体を開くようにしてファーのコースもあるようなシュートモーションでニア下へ足を振り抜いた。



試合を通しピッチの横から鼓舞し続けていた仲間のもとへ中島は駆け寄った。
とても大きな歓喜に包まれた。



<リードして>


アディショナルタイムは後少し。

右サイドの繰り返しの上下動を厭わずチームに貢献し疲労感が見えていたW辻に代えて、1年生のFW高須を投入。

中島を右Wで繋ぎと配球を、髙橋をCFに背後への突破を、高須には前線の守備とボールキープの強化を狙って配置した。


試合終了まで後少しとわかっていても長く感じるもの。

終了間際、サイドラインを割って相手ボールのスローインになったボールを更に小突くように蹴ってしまい左HBのキーティングに警告が出された。大会中に累積2枚で出場停止となってしまうこともあり不要なイエローカードだった。



<タイムアップ>


間も無く、試合の勝利を告げるホイッスルが聞こえた。
チーム全員で闘い抜いた感触があり、劇的な勝利で終えたことに初戦であったが大きく感動していた。

選手たちが歓喜の声を上げ、トレーナーの髙田も選手たちと抱き合い喜びを噛み締めていた。
髙田はユース立ち上げからトレーナーに就任し、1期生と共にユースの礎を築いてきた。2022年シーズンはジュニアユースの担当へ代わることが決まっておりユースとしての最後の大会であった。

2021.12.26. R16 塩釜FC戦



また、その姿を記録していたコーチの森田も2022シーズンはチームを離れることが決まっており2年間携わったユースの最後として臨んでおり、この勝利を大きく喜んでいた。



2021.12.26. R16 塩釜FC戦



喜びを噛み締めつつ、次の準備へ。

同時刻にはじまった隣のピッチの試合を制し、次戦の相手になったのはセンアーノ神戸。スカウティングを担った選手から映像とメモを受け取り分析へ。



次戦の闘いは既にスタートしていた。


→③へ続く


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ご対戦いただきましたチーム関係者の皆様、大会関係者の皆様、応援いただきました皆様、誠に有難うございました。

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