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そういえば、あの『未来』はどうなった?- FOUNDERS FUNDマニフェスト- 【Part 1 ~導入編~】(What happened to the future? 邦訳)

PalantirやSpaceX, airbnb等に投資する ピーターティール氏率いる『FOUNDERS FUND』のマニフェスト。

最高にエモくて素敵なので、時間あれば日本語にも訳したいなぁと出た頃からずっと思ってました。年末年始使って訳してみましたので、ぜひご一読ください。(有志なので間違い箇所あればぜひ教えてください) 

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目次:
---Part 1 ~導入編~ ---(←イマココ)
A. はじめに

---Part 2 ~セクター編~ ---
B. 宇宙航空と輸送
C. バイオテクノロジー
D. 先進機器、ソフトウェア
E. エネルギー
F. インターネット

---Part 3 ~結論編~ ---
G. 結論

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この記事はFOUNDERS FUNDの元パートナーであるBruce Gibney氏によって記されたFOUNDERS FUNDのマニフェスト"What happened to the future?"を翻訳したものです。有志で翻訳したので誤りがございましたらご連絡ください。

This article is a Japanese version of ”What happened to the future?” written by Bruce Gibney. All credit goes to FOUNDERS FUND/Bruce Gibney.

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私たちは困難な問題、しばしば科学的あるいは工学的に困難な問題を解決する賢い人々に投資します。

理由は次のとおりです。

A. はじめに

問題
私たちは、主に2つの関心があります。

1. 技術的進歩を支援する方法を見つけること(技術とは先進工業国の成長における基本的な推進要因である)

2. 我々の投資家のために傑出したリターンを得ること ※1

※ 1. FOUNDERS FUNDのパートナー及び従業員は私たちにもっとも投資してくださる人たちなので、他の多くの企業よりもこれらの問いに対する答えを見つけるためのインセンティブがあります。
(対照的に、業界の慣習では、ベンチャーキャピタルにファンドの総資本額の1%までしか要求しません、おそらく誤解を招いて名付けられた GP commitmentとされているもの)。FFでは、私たちが管理する総資本の約20%を自分たちの資本で賄っています。

1960年代から1990年代にかけて、ベンチャーキャピタルはこのような2つの利益を追求できる優れた方法でした。しかし1999年から現在に至るまでは、ほんの一握りのファンドしか上手くいくことができず、業界的にはマイナス平均となり、リターンも平均的なものにとどまりました。何が起こったのでしょうか? 


ベンチャーキャピタルの長い悪夢

ベンチャーキャピタルがそれほど苦労した理由を理解するために、過去のポートフォリオと現在のポートフォリオを比較します。業界の全盛期のベンチャーキャピタルのポートフォリオのレンズを通して、未来に近づくことができます。

1960年代には、ベンチャー企業は新興半導体産業と密接に関連していました(例えば、Intelは初期の1つであり、依然として最高のベンチャーキャピタル投資の1つです)。

今やこれらの投資は平然と賢明だと見られていますが、実際にはベンチャーに支えられた産業と企業は、時代に対し並外れて野心的でした。

1970年代、コンピュータハードウェアとソフトウェア企業は資金を調達しました。1980年代には、バイオテクノロジー、携帯関連、ネットワーク企業の最初のブームがもたらされました。 1990年代にはさまざまな形でインターネットが社会にもたらされました。今やこれらの投資は賢明だと見られていますが、実際にはベンチャーに支えられた産業と企業は、時代には非常に野心的でした。すべてが実現可能であるかのように見えましたが、これらのどの技術の開発が成功するのか、または高収益ビジネスに変化するのか、という保証はありませんでした。

ヒューレッド・パッカードが1967年に小型計算機を開発したとき、ヒューレッド・パッカード自体でさえ、製品の商業的な先見性に重大な疑念を持ちましたが、設立者による介入があり、計算機を救うことができました。

その後、大手コンピューティング企業(IBM、DEC)の経営陣が、どんな人がコンピュータを必要とするのかを公然と疑問視しました。あるいはコンピュータ自体がVWよりも小さいのかどうかさえも疑問でした。MicrosoftやAppleなどの企業への投資は、 1970年代にはかなり大胆に見えました。Genentech社が立ち上げられた1976年に、組換えDNA技術の分野は年数的には5年未満であり、どの専門家もインスリンまたはヒト成長ホルモンがクローン化し、商業的な製造が可能であるとは思っていませんでした。

しかし、ベンチャーキャピタルはこれらのすべての企業を後押しし、より先進的な将来に賭け、利益を得ることを望んでいました。そして、その利益の期待と引き換えに、ベンチャーキャピタルは技術的進歩に対する真のリスクを背負っていました。

1990年代後半に、ベンチャー・ポートフォリオは、将来について以前と異なったものを反映し始めました。一部の企業は依然として変革技術(検索性、携帯性など)をサポートしていましたが、ベンチャー投資は、変革技術の会社に投資するのをやめ、漸進的な問題や偽の問題を解決する会社にさえ投資する形に転換しました(Kozmo社のメッセンジャーを利用したKit-Katの問題など)。

巨大なバブル株式市場のおかげで、このモデルは短期間で機能しました。事実、産業界の歴史の中で異常な、実際には最高の利益を生み出したことから、ベンチャーキャピタルが究極的に価値のないと思われる企業に資金を提供することは経済的に合理的でさえありました。それに続いてバブルが起こり、(買収のバブルやセカンダリー・マーケットなど)、ベンチャーキャピタルにとっては幸運にもそれを利用し優れたリターンを生み出し続けてきました。

"私たちは未来を画期的に変える技術を後押しする投資から、より冷笑的で漸進的な投資へと転換したことが、ベンチャーキャピタルを壊したと考えています。"

しかし、これらのバブル期間は短く、一般市場はより要求が厳しいので、1990年代後半(驚くべき数字ですが)の一昔前の投資を続けているベンチャーキャピタルは、非常に薄いリターンのみにとどまる傾向があります。この過程で、ベンチャーキャピタルは未来の資金提供者ではなくなり、代わりに機能的で、機械的な、不適切な資金提供者になっています。大部分では、ベンチャーの下半分が過去10年で収益なし~マイナス収益に陥ったため、お金を稼ぐことも中断しました。

私たちは、未来を画期的に変える技術を後押しする投資から、より冷笑的で漸進的な投資へと転換したことが、ベンチャーキャピタルを壊したと考えています。経済状況の悪化の産物であるベンチャーの悪夢の10年は、業界が始まってからの40年にわたる強固で長期間に安定して稼いできた歴史と、業界のトップ20%の一貫した強い業績を台無しにしました。ベンチャーが支えていたものが変わり、それがリターンも同様に変えてしまったのです。


電気プラグが付いているものすべてが技術という訳ではない

すべての技術が均等に作られているわけではありません。Pong(アーケードゲーム)とConcorde(コンコルド)の間には違いがありますし、Pets.comとIntelの間にもやや違いがあります。
マイクロプロセッシングは真の技術的進歩を意味していますし、一方で(プラグが付いていなくても)ペットフードをオンラインで販売しています。逆に、偽の技術として片付けられる可能性があるもの(AmazonやFacebookは時折この批評を受けますが)は、しばしば非常に困難な技術的問題を解決します。その多くのイノベーションの中で、Amazonはいつでも、どこでも、ほとんど何でも注文することができ、翌日には届くようになるというインテリジェントな顧客提案と物流効率の向上をサポートしました。例えばFacebookは、計算効率の高い方法で、大多数の接続を管理し、効果的な開発者のエコシステム、およびオンラインにおけるあなたの人間関係の管理を快適にしました。これらももちろん注目に値しますが、以前のようにインターネットは未開の地ではなくなったにもかかわらず、インターネットが引き出すアイデアを無用だと退けます。失敗するウェブ企業は、メディアの真の力を活用できていない企業です。※2

※ 2.インターネットは、これまでに開発された最も革新的な技術の 1 つです。もし私たち皆が靴の中を透視する装置としてX線のような被ばく量の多い放射線を使ったことがあるならば、X線を、生殖能力を衰えさせ不適切なものとして却下したくなるだろう。
インターネットは、90年代後半の愚かな行いだけで判断することはできません。

時間の経過とともに、市場は、偽のテクノロジーや企業を呼び起こす傾向があり、それらに投資するリスクは高いものとなります。生まれながらの敗者を勝者に変え、体よくリターンを得ることは可能ですが、タイミングという幸運を得る必要があります(すなわち、バブル下での販売など)。※3

※3.そこには、良心と評判の問題もあります。

真のテクノロジー企業は長期間にわたって優れたリターンを生み出し、タイミングはそこまで重要ではありません。webvan.com,に投資した場合、可能性の窓は数ヶ月間で測られました。Intelに投資した場合は、可能性の窓は数十年で測定されたのです。したがって、投資家として、私達は真のテクノロジーを開発する企業を探すべきなのです。


真のテクノロジーは残っていますか?

私たちは、ラインの終わり、つまり、歴史の中で一種のテクノロジーの限界に到達しているのでしょうか?すべての小売業者の最後の人までインターネットに移行すると、そうなるのでしょうか?先進国は本当に発展していますか?もしくは発展を止めていますか?繰り返しますが、ベンチャーキャピタルが利益をあげて、投資する可能性ある領域がまだあるかどうかを確認するために、以前の人たちの考えていた今後の将来の概念を再検討することは役に立つかもしれません。

1958年、フォード社は、原子力で動力を与えられた、エル・カミーノ形のコンセプトカー「Nucleon」を発表しました。現在の視点で見ると、Nucleonは馬鹿げた話になるくらい大胆なように思えますが、最初の原子力潜水艦 Nautilusを考えると、1954年に開発されたばかりでした(最初の原子爆弾の10年以内)。Nucleonは野心的で、マーケティングの仕掛けがあると確信していましたが、それは完全に理由の範囲を超えていませんでした。

10年後の1968年、Arthur C. Clarkeは商業宇宙旅行がもうじきの段階という予測と本物の(不安定な)人工知能を予測しました。「2001年宇宙の旅」は当然フィクションでしたが、当時は、その将来は考えらないほどではありませんでした。アポロ計画はガガーリンの後10年足らずで、アームストロングを月に連れて行く準備が出来ていました。KilbyとNoyceが集積回路を思いついた数年後にコンピュータが一般的になりました。

1960年代の観点から予想された未来は実現するのが困難でしたが不可能ではない、と人々は考えを抱き、心踊らせてきました。私たちは今でこそ不完全なハイブリッド車やEasyjetを褒め称えながら、Nucleonとパンアメリカン航空を、月を見ながら笑っていますが、それは悲しいことです。1960年代の人々が見たいと思っていた未来は、半世紀たった今でも、我々が待っている未来です。カーク船長(スタートレック)とUSS Enterprise(スタートレックに登場する架空の恒星間宇宙船)の代わりに、我々は旅行予約サイトとCaboへの格安航空便を得ました。

主要な例外として、これまで見てきたように、(Windows2000がHal9000とはまったく違うのにも関わらず)コンピュータと通信技術は桁違いに進歩しました。インターネットはその発明者がこれまで期待していたよりもはるかに強力で広範囲に普及しています。しかし、未来的であると思われるものの多くは現在も未来的であり、その理由の一部はこれらのテクノロジーが、エレクトロニクス産業に支えられた持続的で豊富な資金を受け取っていないためです。枯れてきたテクノロジーを商品化することは、アイデアを探し始める場所として適しているようです。


... Part 2 ~セクター編~ につづきます。




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