『乙嫁語り』のパリヤさんの不器用さについて

唐突だけど、森薫の漫画『乙嫁語り』に出てくるパリヤさんについて語りたい。8〜9巻の表紙がパリヤさんである。

パリヤさんは、アミルと同じ町に住む未婚の女性だ。パンづくりが得意だけど、刺繍が嫌いで、男の人とうまく話せず「女の子らしくない」みたいなことを言われ、なかなか結婚相手が決まらない。

不器用な彼女を見ていると「素直になるのって難しいよなぁぁあああああ」と叫びたくなる。

私から見れば、パリヤさんは普通の女の子だ。お見合い相手の男の子を見ると緊張してしまって、うまい言葉が出てこない。男の子と目が合うと真っ赤になって顔をそむけたり。

ライラとレイリ(別の町に住む双子の女の子)のあけっぴろげさと比べたら、本当に普通の女の子だと思う。

しかし、パリヤさんの問題は、そういう「普通の女の子らしさ」がうまく表に出てこないところにある。お愛想笑いなんてできないし、緊張しすぎて男の子にぶっきらぼうなことを言ってしまう。男の子が近くに来ると恥ずかしさのあまり突き飛ばす。

ここで「緊張してしゃべれないんです……」「近くに来られると恥ずかしいんで」と口に出せば相手にも伝わるのだが、パリヤさんはそれができない。その結果、しょっちゅう相手を怒らせてしまうのだ。ぶ、不器用……!

照れている女の子はかわいい。ただ、相手にはっきりと伝わる形で照れたり恥じらったりしていればの話だ。でないと単に無愛想な女の子、怒っている女の子にしか見えないし、全然かわいくない。

私は昔、好きな男の子と会う時、照れくささを隠そうとして顔が怖くなってしまい、相手を嫌っているのだと誤解されたことがある。そんなわけで、パリヤさんを他人事だと思えない。

パリヤさんのことを「ツンデレの一種やん」と思う人もいるかもしれない。しかし、現実におけるツンデレは、ただの「感じの悪い人」だ。パリヤさんのように周りから誤解されてしまう。

(逆に「あの人はツンツンしてるけど、本当は自分のことが好きで照れてるだけなんだ」と言う人がいたら、それは恐らく妄想だし、そういう人は危険なので距離を置いたほうがいい)

おかげで男の子はおろか、女の子ともあまり仲良くなれずにいたパリヤさんだが、アミルを助けようと声をかけたことがきっかけで仲良くなる。その後、アミルと一緒に出かけた先でお見合いの相手も見つかる。

さらに、自分を改善しよう、私は理想の私になるんだ!と行動したパリヤさんは、アミルの助けもあって、女の子の友達が増えていく。

そして友達が増えたおかげで、パリヤさんは「刺繍が嫌いな女の子は自分だけじゃない」と気づくのだ。

恐らくパリヤさんは今まで、刺繍が嫌いな自分を責めて落ちこんだりしていただろう。でも初めて「なーんだ、刺繍が嫌いなのは自分だけじゃないんだ」とわかった。それだけでも気持ちはかなりラクになったはずだ。

しかもその友達は「嫌いな刺繍をする時は、友達を誘っておしゃべりしながらやる。ひとりだと絶対やりたくないし」なんてことも教えてくれた。

このあたりの描写が私はすごく好きだ。誤解されやすくてひとりで悩んでいただろうパリヤさんの世界が、ふわっと広がった感じ。

そして友達との会話に触発され、パリヤさんはちょっとずつ、見合い相手の男の子に素直な気持ちを伝えられるようになっていく。「こういう思いをこめてパンをつくった」と説明したりして、自分はあなたと結婚したいのだと言えるようになる。

『乙嫁語り』を読みながら、私はずっとパリヤさんを応援してきたため「本当によかったねぇ……」という思いでいっぱいになった。

しかし、まだ本当に結婚したわけではないので、今後の展開が気になるところだ。最新の11巻で再びアミルたちの町へ向かったスミスが、パリヤさんのその後を見届けてくれるよう祈っている。

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ToLi

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