失敗を許さない国

相撲の土俵に上がって心臓マッサージをされていた女性が土俵から降りるように言われた話。

それだけ聞くと、ルールに厳格なことは害を生むということがよくわかる。

しかし、単純にこの1つの映像だけに注目して「人命の方が大事だー」というのは、短絡的でないかなとも感じる。

この映像がネットで拡散されれば、非難の嵐になるのは仕方がないことである。

人命vs伝統、ルールなんて、マンガや映画でも取り上げつくされていそうな題材だし、そんなことが実際におこれば、正義の名の下に怒りだす人が多くいるのは想像に容易い。

私自身もルールより人命を優先することに全く異論はないのだけれど、しかし、その一方で1つの発言に対して、こうも責め立てられるのは気の毒にも思う。

そのとき、誰がなにを考えてその行動を起こしたのかは分からないが、相撲協会からも謝罪があったように、その反省を踏まえて今後は、緊急時は女人禁制ルールは無効とするなど、関係者が考えて行けばいい話。正直そんなルールを設ける必要すらないと思うが。

ネット上に拡散すると、本気で怒りを感じてる人はもちろん、正義の名の下に悪を罰したい人、騒ぎ立てたいだけの人、何かにイライラして噛みつきたいだけの人などたくさんの部外者がこの騒ぎに参加する。

こういった個人に対する悪意というのは、想像以上に相手にダメージを与えるのだ。

また、今回の場合は賛否両論が起きにくいケースであることも厄介だ。

これを発言してしまった人は、急に人が倒れるのをみて気が動転し、ついルールを口にしてしまっただけかもしれない。
女性以外にも男性がたくさん救助していたので、人命に影響はないと考えてしまったかもしれない。
真面目で頭が固くてルールを守ることが責務と思ってしまったのかもしれない。
あるいは本当に、神聖な場所に女性が上がるのが人命よりも優先するべきことだという考えなのかもしれない。

色んなケースが考えるわけだけど、責められるのはあくまで近しい関係者からだけで十分であり、無関係の第三者に責められたところで、ダメージを受けるのみでなにも解決すらしない。

不特定多数の人間が特定の個人に対して悪意を向けるというのは、その人がどんな失敗をしたところでNGであるように思う。

人命は大事。今回、一生懸命助けようとした女性は、評価されるのは当然。

だが、それを阻止しようとした人間を日本国民が叩いてリンチにするというのは、なんとも生きにくい国だと感じる。

日本人はもっと狭い世界でそれぞれ生きていくほうがうまくいくのかもしれない。


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