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ショートの小部屋

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財布の虫

俺は財布の虫

財布の中に住んでる

誰の財布かって?

もちろんあんただよ

何をしてるのかって?

あんたの財布の中身を喰ってんのさ

だからあんたの財布は

いつもからっぽ

でもよ俺だって

あんたの金、喰うばっかじゃないぜ

あんたには金よりも大事な物を

たくさん・・・

分かるだろ?

金はあった方がいいけど

金なんか無くったって幸せになれるんだ

俺はそれを

あんたに教えてやっ

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順番

お薬を飲むのが苦手な人っていますよね

私もその一人です

絶対に死なない薬とか

無茶苦茶若返る薬って

色んな成分が入ってて

その薬の性格上

ものすごく飲みにくいと思いません?

それで私

そんな薬を

簡単に飲めちゃう薬を開発したんです

ねっ、いいでしょう?

あとは

絶対に死なない薬と

無茶苦茶若返る薬を

開発するだけなんです

うーん

順番逆だったかな

宇宙服

新しく僕たちに支給された宇宙服は

それはそれはとっても軽く

つけている事を

感じさせないほどの軽さだ

それに

新開発の大気変換フィルターにより

バックパックなしで

この星の大気を呼吸する事ができる

しかもこの宇宙服は

この星に生息する

生物そっくりに作られているため

相手に気付かれることなく

活動する事ができる

この宇宙服のおかげで

僕たちのミッションは

随分とやりや

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ねえもう一回だけ遊ぼうよ

お願い

今度は僕が影の役をやるから

ねえ

お願いだから

君が勇者をやっていいから

さあ

これを持って

ねえったら

僕は悪い影だよ

さあ早く

そんな所で寝てないで

ねっ

目を開けて

ほら

この剣で

今度は君が

影の胸を突き刺して

野良猫と私

私は人間

目の前の野良猫に餌を与えている

可愛そうに

お腹を空かせて鳴いていた

人間に生まれた私

そして

野良猫に生まれたお前

お気に入りの服を着て

ご飯をお腹一杯食べて

好きな音楽を聴いて

何不自由無く暮らしている私と

お腹を空かせ

道ばたで鳴いているお前

時には心無い人間に石を投げられ

冬の冷たい雨に震え

短い生涯を終えるお前

朝早くから夜遅くまで働き

下げた

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アドバイス

あなたの思う通りになさい

そう

殻を打ち破るの

方法はいくらでもあるわ

私も応援するから

それに

お道具も貸してあげる

何にする?

これなんかどう?

使い方は簡単

相手に向けて引き金を引くだけ

ねっ

簡単でしょ

だめ?

それじゃあ

このお薬は?

コーヒーか何かに混ぜて飲ませるだけ

ほんの少しでいいのよ

これもだめ?

うーん

それじゃあ、これは?

ロケットラ

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突然私の娘が消えた

どこを探しても娘の姿はない

途方に暮れた私は妻に電話を入れた

「あなた何言ってるの?」

妻は私たち夫婦に娘はいないと言った

そんなはずは無い

私には・・・という名前の

名前・・・

名前・・・

咄嗟に娘の名前が出てこない

いや、絶対にいたはずだ

スマホに一緒に写した写真があるはず・・・

どこにもない

もう一度妻に電話を入れる

「お掛けになった番号は現在

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能力

視界の隅で何かの影を見る事ってありません?

ふっと影が動いて

ハッとしてそっちを見ても

誰もいない

そんな事ってありません?

そんな影が見える人は

その方面の能力がある

または

能力に目覚めた

のかも知れませんよ

視界の隅をよぎるのは

こちらの世界の者ではない

決して私たちと

交わってはならない

闇に棲む者の姿なんです

それが見えるって事は

あなたは

もうすぐ向こ

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宇宙灯台

ここは宇宙空間に浮かぶ

宇宙灯台

航行する宇宙船の無事を願い

明かりを灯し続ける

今日もまた

一隻の宇宙船が

銀河の海に迷い

ここへと流れ着いた

傷ついた船を直し

疲れきった体を癒し

また新たなる航海へと旅立てばいい

ここは宇宙灯台

宇宙空間でただ一つの

宇宙船乗りのオアシス

行く先を見失った船は

なぜかここに流れ着く

そして再び旅立つ者も

ここに居付く者も

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映像機器

私、すごい映像機器を開発しました

観ている人が

その映像の中に入って

実際に体験できるというもの

どう、凄いでしょ?

では早速試してみましょう

準備は簡単

ヘッドフォンとスコープを装着するだけ

それだけで映画の中に入ってゆけるんです

ここにディスクをセットして

それでは再生スタート

すごいすごい

超リアルだーっ!

痛てーっ!殴られた

本当に痛い

あーやめろ、撃つな

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プレイボール

ビッチャー投げました

ど真ん中のストレート

空振り三振

いや、バットを戻した

累審はセーフの判定

しかしボールはど真ん中

おっと、主審はボールの判定

フォアボールです

さあ一塁にランナーが出ました

次のバッターに第一球

ここで一塁ランナー走った

キャッチャー二塁へ送球・・・

しません

投げていれば

悠々アウトというタイミングでしたが

キャッチャー投げられません

投げ

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ドア

ここはあなたの心の中

たくさんの知識や

思い出の

一つ一つが

小さなドアの向こうの小部屋に

詰まっています

おや?

一つだけ鍵の掛かったドアがありますね

赤さびた古い鉄のドアです

大きな錠前でしっかりと閉ざされています

このドアを開ける鍵も

きっとあなたの心の中にあるはずです

探してみましょう

ありました

すぐに見つかりました

ずいぶん長い間

その鍵を握り締めていた

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代理人

私は代理人

この世界から

消えてなくなりたい

そんなあなたの代理人に

なってさしあげましょう

さあ

手をだして

私があなたの手に触れれば

もうあなたは誰でもない

私があなたになるのだから

もう何の心配もない

あれこれ思い悩む必要もない

誰もあなたを知る人もない

それどころか

あなたは人間でさえなくなるのだから

さあ

どこへでもお行きなさい

あなたは

すべてのもの

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迷子

私は迷子になってしまった

右も左も分からない

この深い森に

光は届かない

どこからか低いうなりだけが聞こえる

いくら歩いても

この森を抜ける事は出来ない

なぜここへ来たのか

私は立ち止まり考える

資料を整理していた

そして

誤って大切なデータを消してしまった

そうだ!

思い出した

赤と緑と白と黒の

巨大な木々に覆われたこの森は

私のパソコンの内部だった

失われたデ

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