待合室

「山田さーん」

先程から山田山田と

アナウンスが煩く山田を探している

ここは病院の待合室

トイレにでも行ったのか

山田という人間はいないようだった

「山田さんですね。アナウンス聞こえませんでした?」

若い看護師が

俺の顔を覗き込むようにして言った

「いえ俺は山田じゃありません。俺の名前は・・・」

だが考えても、自分の名前が出てこない

「でもあなた山田という名前でたった今受け付けされましたよね」

不審そうな顔で看護師が言う

「そうでしたっけ」

俺はポケットに入っていた財布から免許証と保険証を取り出しそれを見た

山田・・・

俺の名前は山田だった

でも自分の名前が分かって良かった

単に痴ほう症になっただけだ

帰る家は分からないけれど

とりあえず

めでたし、めでたし

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