悪夢

とても恐い夢を見た

地獄の炎に焼かれ

暗闇へと落ちてゆく夢

とても長い時間

俺は落ち続けた

目覚めると

汗で身体中が

ぐっしょりと濡れていた

「うなされていたわよ。大丈夫?」

目の前に彼女の美しい顔があった

「夢か」

俺は体を起こし呟いた

「どんな夢を見てたの?」

彼女が俺の顔を覗きこむ

「思い出したくもない。悪い夢さ」

もう二度と彼女に会えないと思った

「本当に大丈夫?」

彼女は心配そうに俺を見て言った

「ああ大丈夫さ。悪夢はもう終わった」

俺は彼女の手を取り囁いた

彼女は俺の手を振りほどき立ち上がった

俺は黙って彼女を見ていた

「本当に悪夢は終わった?」

彼女はベッドの俺を見ながら囁く

「ああ、悪夢は終わった」

俺はもう一度彼女の手を取った

「悪夢は終わっていないわ。それどころかまだ始まってもいない。悪夢はこれから始まるのよ」

彼女はそう言って耳元まで割けた大きな口を広げて笑った

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