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「BC-25(カプセル)サロン」展

ちょうど去年の今頃は、中銀カプセルタワービルの解体工事が進んでいくのを見守りつつ、北千住のアートカフェで在りし日のこの建物の姿をせっせと版画作品にしていました。

私がこのカプセルの一室に住んでいたのは2019年10月から11月にかけての1か月間だけなのですが、その限られた時間でたくさん友達を呼んでここでめいっぱいいろいろな企画を楽しみました。そこでの思い出は、僕にとって一生の宝です。

誰かが言っていたのですが、この中銀カプセルタワービルは縦に連なる長屋のようだね、って。まさに、そんな感じ。ひとつひとつのカプセルは独立してそれぞれが隔離された居住空間になっていますが、そこに住んでいた人たちは程よい距離感でつながっていて。江戸時代の長屋の文化って、こうだったんだろうなと連想させます。醤油を借りにいくというエピソードが現代でも成立する建物なのです。

ビルが解体された後もカプセルの元住人同士の交流は続いていて、トークイベントがあると聞けば見に行きますし、元住人として当時の思い出を話したり、この建物に興味がある人を集めて勉強会を開いたり、いろいろなイベントが開かれていますし、自分でも開催しています。取り外されたカプセルの一部を見に行ったり、NHKで解体のドキュメンタリーがオンエアされた日はみんなで一緒に見たりなどもしましたね。

こんな奇妙な外観の建物ですが、中に住んでみるともっと奇妙です。70年代のSF映画にタイムスリップしたかのような。しかも、築50年近くたってカプセル自体の経年劣化も進んでいて、もともとはセントラルヒーティングの空調がありましたがそれはとっくに壊れていて、お風呂にお湯も出なくなりましたし、ペンキが剥がれたり雨漏りをするなんてのは日常茶飯事。今時洗濯機もない建物なので、銀座のど真ん中にありながら住人たちは銭湯とコインランドリーを活用するという。

こんな変わった建物ですので、そこに住んでいる人たちもとても個性的な方が多く。そういった住まいのトラブルをむしろ「アトラクション」として楽しみながら住んでいる方が多くて、一緒にいてもすごく気持ちがよい。この感覚、なんなんでしょうね。このとても奇妙で特徴的な建物を好きになって、かつ住んでみようと思った人とは、友達になれる気しかしません。

実際、元住人の方たちと一緒に活動するのはとても楽しいです。

今回、そんな中銀カプセルタワービルの元住人つながりで、菅原さんにお声がけいただいて、このような形で田仲さんとこの奥野ビルでこのような作品展を開催することができました。ありがとうございます!

ビル自体はなくなってしまいましたが、そこから保存・再生された23個のカプセルは、これから日本各地や海外にも飛び立っていきます。すでにヨドコーさんのトレーラーハウスや、松竹さんのクリエイティブスペース、サンフランシスコ近代美術館への収蔵も決まっています。カプセルのご縁や繋がりをこれからも広げていきたいと思っています。

作品展の詳細

「BC-25(カプセル)サロン」
会期: 2023年6月30日(金)~7月2日(日)
時間: 14:00~18:00
場所: 東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル306号
◆参加アーティスト名・作品
田仲森太郎氏・デザイナー(カプセル3Dモデル等)
前田とまき・日曜アーティスト(冊子、ミニ版画他)
◆トークイベント 18:00~19:00 定員8名程(先着順) 
オープニング・トーク 6月30日(金)展覧会関係者 
アーティスト・トーク 7月 1日(土)田仲森太郎氏 
アーティスト・トーク 7月 2日(日)前田とまき

今回展示する作品について

アーティストトーク用資料

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。