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#3 エッセイ | 金木犀の香りと忘れてしまった大切な何か

 金木犀の香りがしてきましたね。

 よく、ノスタルジックな香りなどと言われる金木犀ですが、この匂いによって「記憶」や「感情」が呼び起こされる現象に名前があるのを知っていますか?「プルースト効果」といいます。

 フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』という小説の中に、紅茶に浸したマドレーヌの匂いで幼少時代を思い出す場面があり、その描写が元になっているそうです。

 ちなみに、フランスでは「貴方のプルーストのマドレーヌは何?(子供の時を呼び起こす子供の時から好きだった物や事は何?)」と聞き合うらしいですよ。なんともほっこりとする隠し言葉(隠語)ですね。

 そんな、文学的な由来の「プルースト効果」ですが、どうやら脳科学的にも証明されているようです。五感のうち最も記憶に定着しやすいのが嗅覚で、忘れていく順番は、聴覚→視覚→触覚→味覚→嗅覚の順らしいですよ。

 この「忘れていく順番」って面白くないですか。声と顔から忘れていくのか……いや、今どきは写真や動画があるから、もしかしたら一番最初に失うのは触覚なのかも……なんて思い巡らせちゃいますよね。みなさんも忘れたくない大切な人がいたら、ビデオを撮り、触れ合い、舐m(以下自粛)

 閑話休題

 さて、前置きが長くてすみません。やっとこの投稿の本題です。

 みなさんは金木犀の香りでなにか思い出すことはありますか? 私もひとつだけ、切ない気持ちになる思い出があるんですよ。本当は、こんな記事にするのも恥ずかしいんですが……

 それがこれです。

3年前、コロナ禍で暇だった私がただの好奇心で作った金木犀の香水(の原液?)です。

 トップ画がうちの庭の金木犀です。別に金木犀の香水をつけたいってわけでもなかったんですが、暇すぎて作ったんですよ。で、半年は暗所で寝かせる必要があるらしく、物置の隅っこに置いておいたんですよね。そしたら……忘れちゃった。うっかり。てへぺろ

 2、3か月はワクワクしながら覚えていたんですけどね。次の年に庭の金木犀の香りで思い出したんですけど、不幸なことに百均の安い容器だったため、半分くらい揮発してしまって失敗してました。どうりで物置がいい匂いなわけです。

 それ以降、毎年思い出しては「あれ?まだ若干いい匂いがするな…」となり、そっと戻しては忘れる、を繰り返しています。毎年「やべ、腐ってるよな」と慌てて確認するんですが、無水エタノールしか使ってなかったせいか、物置の芳香剤になりそうなくらいには香りが残ってるんですよね。

 とはいえ、さすがにだいぶ香りも減って来たので、こうして投稿のネタにもできたことですし処分しようかなと思います。


 ちなみに、作業風景の写真がフォルダに残っていたのでアップしておきますね。

「花だけ摘むのだる!そうだ、枝ごと切って家の中でやーろおっと」の図
「よしよし、終わりが見えてきたぞ」の図
「なになに、『青臭い匂いになるので茎は取りましょう』だって?うーわ、だーる」の図。これが一番時間かかりました。
あとは、無水エタノールを入れてアルミホイルに包んで(日光遮断のため)物置に置いて記憶から忘れ去れば、物置の芳香剤の完成!※みなさんが作る機会があれば、密閉性の高い瓶をケチらず買うことをお勧めします。トホホ

 数年後、金木犀の香りを嗅ぐたびに、物置を思い出すなんてことにならないよう祈るばかりです。おわり

おまけ

 金木犀の投稿にちなんで、私が大好きな金木犀を題材にした曲をどうぞ。

 いやー、これ、平成の終わりに世に生み出された大名曲と個人的に思ってます。本当は、この曲にちなんだ記事を書きたかったんですが、如何せん、私にはこんな切ない失恋の思い出がないもんで……

「貴方のプルーストのマドレーヌは何?」
「え、俺? マドレーヌよりスコーンが好き!」

 みたいな人生を送ってしまった私でもうっとりできるくらいには名曲ですので、ちゃんと聴いたことないって人は是非聴いてみてくださいね。

それではまた次回!

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