遂に開花した元トッププロスペクトのルーカス・ジオリト

昨シーズン、規定投球回数をクリアした先発投手で両リーグワーストの防御率6.13をマークしたホワイトソックスのルーカス・ジオリトが今シーズン見事な投球を続けている。

2012年MLBドラフトでワシントン・ナショナルズから1巡目(全体16位)指名でプロ入りを果たした高校生右腕。当初、右肘の故障もありトミー・ジョン手術を受けたこともあったが、マイナーで期待通りに成長し、投手のプロスペクトとして最高クラスの評価を受けるまでになった。

「将来のエース候補」だったジオリトだが、メジャーデビューを果たした2016年を境に周囲の評価が下がり始める。要因としては、フォーシームの球速の低下に加え、コントロールが乱れる場面が多かったことだろう。

そのオフに、ナショナルズはアダム・イートンとのトレードで交換要員の1人としてジオリトをホワイトソックスに放出した。補強のためにプロスペクトを放出したとはいえ、ナショナルズは同投手を見放した形となった。

ホワイトソックスに移籍後も、ジオリトの周囲の評価は下がる一方だった。移籍1年目の2017年は主に3Aでシーズンの大半を過ごしたが、防御率4.48と不調が続いた。翌年の2018年はメジャーに定着したが、32試合に先発し防御率6.13と冒頭の記述通り、散々たる結果と内容だった。

これで、元トッププロスペクトとしての期待は「完全に終わった」と、ほとんどの人が思ったことだろう。しかし、彼は今シーズン、多くの人が5年前に期待していた投球をメジャーの舞台で披露している。

2019年成績
27試合(163.2回)
14勝ー8敗
防御率3.30
210三振
55与四球
21被本塁打

少し前置きが長くなったが、今回の本題に入りたいと思う。

ルーカス・ジオリトの2018年と2019年のフォーシームの変化について

①投球割合の変化

昨シーズンまではシンカー(ツーシーム)を20%程度使っていたが、今季は全くと言っていいほど使わなくなった。その分、フォーシームが約15%、チェンジアップが約10%増えた。

②フォーシームの平均球速と縦変化量

③フォーシームの配球コース変更

2018年のフォーシームの配球別コース

2019年のフォーシームの配球別コース

2018年と2019年のフォーシームの配球別コースを比較すると、ジオリトが今シーズンから意図的にフォーシームを真ん中やや高めのコースに投げ込んでいることが分かる。

その理由としては、低めのコースより高めのコースの方が空振りが取れやすいからだ。

2018年までのフォーシームのコース別空振り率

ジオリトの2018年までのフォーシームのコース別空振り率を見ると、低めではなく高めのコースの方が空振り率が圧倒的に高いことが分かる。そのため、同投手は今シーズンからフォーシームを高めに投げることによって、空振り率の改善を図っていると言えるだろう。

これと同様の手法で、フォーシームの空振り率の改善を図った一例としてアストロズのゲリット・コールがいる。

コールに関しては以前、「シンダーガードはフォーシームの配球革命によって覚醒する」の中で紹介している。

〇フォーシームの空振り率

フォーシームの空振り率が改善した要因として、1平均球速の上昇、2縦変化量の増加、3空振りが取れやすい高めへの配球、がある。

以前の評価を取り戻したルーカス・ジオリトは今後も「ホワイトソックスのエース」として君臨し続けることになるだろう。

データや画像の参考・引用
http://www.brooksbaseball.net/

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