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「かわいい」が呪いから魔法にかわった

「こういう髪型って、かわいい子にしか似合わないよね。」
インスタグラムでヘアカットのbefore/afterの短い動画を見ていると、コメント欄にこう書かれているのをよく見ます。

私も過去に似たような発言をしていたかもしれないな、と思います。でも、「似合わない」なんて誰が決めたんだろう。「かわいい」って誰が決めるんだろう。

好きなものを避ける行動に共感

経験を重ねることで物の見え方がかわることはありますが、私にとって「かわいい」という言葉は経験と共に変化していきました。
私の体験を紹介する前に、今回の投稿のきっかけとなった記事を紹介したいと思います。Do well by doing good.に掲載されている、アンジュルムの元リーダー、あやちょこと和田彩花さんのインタビュー記事です。

アンジュルムはハロー!プロジェクトのグループです。蒼井優さんがファンを公言していて南海キャンディーズの山里さんとの結婚のときは、「アンジュルム婚」なんて言葉も生まれたので知っている方も多いかもしれません。この記事を読むまで、フェミニストを公言しているアイドルが存在することを知らなかったので衝撃を受けました。(補足ですが、私はモーニング娘。とアンジュルムのファンです。)

「私、ピンク色やスカートといった“女性らしい”といわれるものを避けていた時期があったんです。もともとは好きだったんですけど、アイドルだから着ているというふうに社会的な女性らしさに当てはめて見られることに抵抗があって。このままだと自分の“好き”を保てなくなる。嫌いにならないために全部なくすという選択をしたんです。いまはそれも乗り越えて、今日は白いワンピースです。まさに従来的な女性らしさの象徴ですよね」

Do well by doing good.
和田彩花「人生を自由にするために、女性であることにとことん向き合う」

和田さんと私の体験には違う点が多くありますが、”好きなものを身につけることを避ける”という行動が類似していたので、私が過去に”女の子らしくてキラキラしたかわいものたちを身につけること”、を自分に許せなかったときのことを振り返ってみました。

自分の気持ちに蓋をしていた十数年

「かわいいし、好きだけど、身につけることはできない。」
そう考えて伸ばしかけた手を引っ込める。買い物の際にこんな経験が増えたのは、思春期を迎える頃からだったと思います。自分の気持ちを横へおいて、そっと蓋をする。何度もそのようなことを繰り返していく内に、いつしか蓋をしていることにさえ気づかなくなっていきました。

あの頃、私がやってみたかったことは何だっただろう。

CanCamのモデルさんみたいに、コテで綺麗に髪を巻いて、ノースリーブのニットにふわっと広がるスカート、小さなバッグを持ってみたかった。
AKB48のまゆゆみたいに、ツヤツヤのストレートにアイドル触覚のある前髪で、ツインテールをしてみたかった。
Zipperのゆらちゃんみたいに、ロックやロリータのテイストの、個性的でキュートなファッションをしてみたかった。
成人式は結ってもらえるくらい髪を伸ばして、赤やオレンジなどの暖色系の着物を着てみたかった…。

結局30歳になるまで、「かわいい」と思っても手に取れないものがたくさんありました。
「他者にどう思われるか」が判断の基準となり、勝手につくり上げた条件に縛られていたのでしょう。見た目への自信のなさや、年齢に対して不相応だと思われることへの不安に加え、自分の性格や行動を考えると、女の子らしくてキラキラしたかわいものたちを身につけることは、アンマッチになるような気がしていました。

案外悪くない、むしろ良いかもしれない

ここでも転機となったのは休職の経験でした。人と話すとどっと疲れて落ち込んでしまうため、外に出ていく機会が少なかったことが、「他者にどう思われるか」という意識を緩和したのかもしれません。

同い年のYoutuberさんが、ピンクや赤などの色のかわいい洋服に身を包み、好きなことを楽しんでキラキラ輝く姿に目を奪われ、夢中で動画を視聴しました。
学生の頃に好きだったモーニング娘。に再びハマり、歌詞で描かれる揺らぎながらも強くすすもうとする女の子の気持ちに共感し、いつの間にかまたファンになっていました。
雑誌やインターネットの情報から、自分がやってみたかったメイクやヘアスタイル、着てみたかった服などを表すキーワードを見つけて、どうすればそれが実現できるかを知りました。

今まで知らなかった情報を得て、少しずつ少しずつ、「チャレンジしてみようかな」と気持ちが変化していきました。韓国ブランドのコスメを買って、着てみたかったオフショルダーのニットにもトライ。挑戦するまで恥ずかしいと思っていましたが、実際に身につけてみると別に違和感はない。むしろ、ちょっと良いかもしれない。
自分の気持ちを丁寧にすくって、やりたいことを実現するために行動する。それを積み重ねることによって、誰かの評価を受けずとも、気持ちが段々と上を向いていくのが分かりました。

「自分の気持ちを大切にできた」という実績が自信を高める

セルフケアで「自分がどう感じるかどうか」が重要な理由はここにあると思います。自分の気持ちを無視せず大切にすること、そしてそれを満たす行動がセルフケアであり、実績を重ねることが自信を高めることにつながります。他者からの褒め言葉で承認欲求を一時的に満たすことができても、他者の評価をコントロールすることはできないため、満たされた気持ちは長続きしません。しかし、自分の考えや行動は自分でコントロールすることができます。

メイクやファッションは模索中、体重や体型はベストではないし、シミもあるしシワも増えてきた。
でも、今の自分が一番かわいいと思う。
「あ、今日のメイクうまくいった。」「この服装すごく似合っていて可愛い。」
いつの間にか、今まで避けていた「かわいい」がキラキラ輝きだしました。意識を変えるために無理をして言い聞かせているのではなく、素直に自分のことをかわいいなと思えることが増えました。もちろん、落ち込んでしまうこともありますが、それも含めてパーフェクトである必要はないと思います。大切なのは、「自分がどう感じるか」を無視しないことですから。

追記です。
2ヶ月経って振り返ってみると、ものすごく「ジェンダー」に関わる体験だなぁと感じました。今は、「かわいい」を楽しむ期間が落ち着いて、中性的なものに惹かれます。
ただ、私の場合はどんなものに惹かれるかどうかは、ストレスとの相関もありそうです。自分にとっての心地よい在り方を、これからも探っていこうと思います。

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