マガジンのカバー画像

箱夢の話集 第三集

100
ショートショート
運営しているクリエイター

記事一覧

【怪談】村への遠い道

夕暮れが迫っていた。 急がねば。 村はずれに首切り地蔵が祭ってある。 罪もなく打ち首にされ…

Tome館長
4年前
21

【怪談】猫の雑木林

猫は一度こちらを振り返ると  そのまま雑木林へ逃げ込んでいった。 まるで僕を誘惑するみた…

Tome館長
4年前
27

【アナウンス】避難警報

 避難警報! 避難警報!  一刻も早く 避難せよ! 本日もまた 大規模な 情報の津波が発生…

Tome館長
4年前
27

【SS】日焼け

暑い夏。 裸で山を歩いた。 さらに裸で海を泳いだ。 日に焼けた。 皮膚が焦げた。 赤く茶色…

Tome館長
4年前
16

【話】向こう側

「ねえ、お母さん。見て、あの人」 幼い娘が声を震わせ、指さした。 それは性別さえ区別でき…

Tome館長
5年前
24

【セリフ】夢の舞台

あなたに謹んでお尋ねいたします。 あなたの夢の舞台に登場するという私は  あなたに対して…

Tome館長
4年前
20

【怪談】エレベーター

目の前で扉が左右に開いた。 ひとり、灰色のエレベーターに乗る。 狭くて殺風景な直方体の箱。 振り返ると、そこは長方形の闇。 そして、ヒステリックな靴音が響く。 闇の中から誰かが駆けてくるのだ。 あわてて操作パネルのボタンを押した。 見知らぬ女の姿が、闇の奥から現われる。 「閉めないで! お願いだから閉めないで!」 そう叫ぶ女の目の前で扉は閉まる。 扉越しに、扉を叩く音と叫び声が聞こえてくる。 「開けて! 開けて! 開けて!」 不安になる。 扉が開くかもしれない。

【SS】予告された結末

私は病院から出ると、まず空を見上げた。 ああ、青いな、と思った。 まったくなんにも考えて…

Tome館長
4年前
15

【SS】いにしえの音

いにしえの廃墟から出てきたものは  金属の板が大きさの順番に並べられていた。 棒切れで叩…

Tome館長
4年前
23

【話】柿の種

ナスの形をした柿を食べている。 なかなかおいしい。 腐ったような虫食い部分があるものの  …

Tome館長
4年前
19

【SS】はりつけ

彼女は磔にされた。 十字架の上に釘で手足をとめられ  裸のまま商店街を運ばれてゆくのだっ…

Tome館長
4年前
22

【SS】酔えないの

人、酒を飲む。 酒、酒を飲む。 酒、人を飲む。 しかし、彼女に限っては  まず酒に飲まれる…

Tome館長
4年前
18

【お話】音の葉

私の家の裏庭には色々な「楽木」が茂っています。 「楽木」は楽器の音のする木のこと。 たと…

Tome館長
4年前
17

【SS】呼びかけられて

「もしもし。あなた」 呼びかけられて振り向いたら 宇宙人だった。 本物の宇宙人ですよ と言わんばかりの宇宙人だった。 「はい。なんでしょう?」 「近くにトイレ、ありませんか?」 おれは地球人代表ということになるのだろうか。 「ええと、公衆便所なら、この先に公園があって・・・・」 なんとか身振り手振りで説明を試みた。 「助かりました。ありがとうございます」 宇宙人は頭らしきものを信号灯のように回転させ  喜びらしき感情の表現をしてくれた。 それから、そのまま空へ