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箱夢の話集 第三集

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#短編小説

【話】向こう側

「ねえ、お母さん。見て、あの人」 幼い娘が声を震わせ、指さした。 それは性別さえ区別でき…

Tome館長
5年前
24

【SS】はりつけ

彼女は磔にされた。 十字架の上に釘で手足をとめられ  裸のまま商店街を運ばれてゆくのだっ…

Tome館長
4年前
22

【話】僕の悩み

僕は末っ子の長男で、姉が三人いる。 姉たちとはちょっと年が離れている。 両親はそろって刑…

Tome館長
4年前
15

【怪談】幽霊の正体

幽霊を怖がる心理は  科学技術の発達とは無関係でありまして  幽霊が見えるから怖いのでは…

Tome館長
4年前
14

【話】コピトの気持ち

私はコピト。 ロボットのコンピュータは、ロビタ。 コンピュータのロボットが、コピト。 ど…

Tome館長
4年前
16

【話】時空の乱れ

惑星直列の重力変異により時震および時崩れが発生し  つまり時空が乱れ、未来に帰れなくなっ…

Tome館長
4年前
20

【話】精霊の森

ねばつく粘菌の小川をまたいで  マイマイハタオリの仕事の邪魔をしないように  私はそおっと精霊の森に忍び込んだ。 日の光はセロファンの木の葉に濾過され  不思議な色に空気を染め  オチムシャグモの大きな巣を虹色に輝かせていた。 モライツグミの乞う声があちこちから聞える。 「チョウダイ、チョウダイ、チョウダイ」 精霊の宝なんか、私はいらない。 宝は森のどこかに隠されている と村の古老たちは伝説を語るけど  宝はちっとも隠されてなんかいなくて  この森の端から端まで全部が

【話】見知らぬ町で

見知らぬ町で女の子を拾った。 もちろん、見知らぬ女の子だった。 「拾ってくれて、ありがと…

Tome館長
4年前
22

【話】深い眠り

目覚めたら、そこはまだ夢の中だった。 会う人会う人、みんな同じ顔に見える。 というか、ど…

Tome館長
5年前
23

【怪談】途切れた叫び

月明かりはなく 街灯もまばらな夜の帰り道。 暗い闇の底に靴音が響く。 靴音は真後ろから聞え…

Tome館長
5年前
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【語り】美女の料理法

まず、新鮮な美女を用意します。 化粧が濃かったり、服装が派手なものは避けましょう。 眼が…

Tome館長
5年前
22

【話】アリの道

休日の朝、台所で歯を磨いていた。 ほとんど洗面所を使わない習慣なのだった。 最近、虫歯が…

Tome館長
5年前
23

【話】裏返しの姉

夜更けに寝室を覗くと、姉が裏返っていた。 あちこち骨が突き出て、内臓が露出していた。 「…

Tome館長
5年前
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【話】砂時計

これは祖父の遺品のひとつなの。 石の中に埋め込まれた砂時計。 ほら、貝の化石も一緒に埋まってる。 今、最後の砂が下に落ちたところ。 「それじゃ、また明日ね」 彼との電話を切る。その時間だから。 ほんの少ししか話せなかった。 でも、やっぱり切る時間だな、と思う。 彼と一緒の時間が短くなってきている。 以前はあんなに長く楽しめたのに。 いつまでも砂は落ち続けていたのに。 私たち、もうおしまいなのかな。 でもまあ、しょうがないのかな。 それにしても、不思議な砂時計。