くすぐり魔

【話】くすぐり魔


靴音が信じられないくらい大きく響く。

街灯もまばらな暗く寂しい新月の夜道。
若い娘がひとり通るには危険な場所だった。

角を曲がったところで抱きしめられた。
闇に隠れ、待ち伏せていたのだ。

悲鳴をあげる暇も与えられなかった。

脇腹に潜り込む指先、その素早さ。
その鋭く絶妙な動作、耐え難かった。

死ぬかと思った。
死ぬほど笑わされた。

どうしても笑わずにいられなかった。

さらに邪悪な指先が脇の下を襲う。
「だ、だめ。そこは」

息が苦しい。
笑いすぎて咳き込む。

横隔膜が痙攣しているのがわかった。

靴を脱がされ、足の裏もやられた。
「ひい、やめて」

よだれが垂れて、スカートが汚れた。
涙で、すべての世界が歪んで見えた。

「助けて。だ、誰か」
だけど、誰も助けてくれないだろう。

悪ふざけと思われてしまうに違いない。
こんなにはしたなく笑っているのだから。

悩ましい指先の群が首筋を這ってきた。
まさに笑ってる場合ではなかった。

だんだん意識が遠のいてゆくのだった。


Tickling Devil


The shoe sounds unbelievably big echoes.

A streetlight is a sparse dark lonesome new moon at night.
It was a dangerous place for a young girl to pass alone.

I was hugged around the corner.
He was hiding in the darkness and ambushed.

I could not give a chance to scream.

The finger tucked into my flank, its quickness.
That sharp exquisite movement, it was unbearable.

I thought I was going to die.
I was laughed to death.

I just could not help laughing.

The evil fingertip attacks my armpit.
"Oh no, no, there."

My breath is painful.
I laugh and cough up.

I found that my diaphragm was cramping.

I was taken off my shoes and my feet were torn.
"Stop it, stop it."

My drool drooled, and the skirt got dirty.
With tears, all the world seemed distorted.

"Somebody help."
But, nobody will help us.

It must be thought as a prank.
Because I'm laughing with such vulgarity.

A group of troublesome fingertails crawled on my nape.
It was not a case of just laughing.

My consciousness gradually passed away from me.

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よしなに 💛
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Tome館長

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箱夢の話集 第三集

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コメント2件

このお話、読み手や聴き手の捉え方の角度を変えると内容まで変わって感じてしまうような、本当によくできていますよね〜 
今更ですが、さすが館長様!(*´ω`*)
yayaさんへ★ 
ホラーなのかコメディなのかエロいのか、ジャンルもわからないまま迷わせたい。
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