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暴力行為等処罰に関する法律違反、監禁罪、窃盗罪――元カレを監禁した女

被告は、犯行当時25歳の女性。すらりとした細身で華奢。声は弱々しく、年齢や見た目以上に幼く聞こえた。

第一回の裁判の際には、手錠と腰縄をつけられての出廷。長い髪をひとつ結びにし、茶色く染めているものの勾留中は手入れをできないためか大部分が黒色になってしまっていた。
判決時には保釈されており非拘束。髪を黒く染め直し、スーツ姿での出廷。

被告が問われている罪は、暴力行為等処罰に関する法律違反監禁罪窃盗罪である。
元交際相手の男性を複数人で監禁し暴行し、金を奪ったという。
被告は容疑を全面的に認めている。

「暴力行為等処罰に関する法律」とは、複数人による暴行を取り締まるためのもの。暴力団による事件、いじめ事件などに適用される。

事件まで

被告は16歳頃から精神を病むようになり、睡眠薬に頼って眠るようになった。睡眠薬は多量に飲むと興奮してむしろ寝られなくなり、興奮時の記憶は飛び飛びになってしまう。被告は薬を過剰摂取してしまうことがしばしばあった。

高校卒業後、22歳の時に被告はAという男性と交際した。Aは被告より17歳ほど年上。交際中に被告はAの子供を妊娠したが、堕胎した。Aは堕胎の費用を出してくれなかったという。また、同棲していた時の家賃も被告が払い、金銭的な負担は被告に偏っていた。

2019年1月に被告は別の男性と結婚した。夫は会社員で、被告は専業主婦となった。時々は、動画配信で月収8万円ほどを稼ぐこともあったという。

結婚後も、被告はAと親交を続けていた。被告を通じて、Aは被告の夫や母親とも親しくなった。

2019年4月4日、被告は睡眠薬を飲んだが、つい多量に摂取してしまったため眠れなかった。薬の副作用で被告は感情的になりながら、堕胎のことなどを考え「思いがこみ上げた」という。

事件当日

翌日、4月5日の午前6時、被告は自宅にAを呼び出した。過去のことで被告はAを責め立て、夫も同調して責めた。被告はAの胸元に包丁を突きつけて脅し、8畳の和室へ連れ込んだ。

呼び出された被告の母は、Aの腕を手錠で拘束したが、本物ではなくオモチャであるため壊れてしまった。代わりに、夫がAの両手の親指を結束バンドで縛り付けた。

「ODするかリスカするか飛び降りるか選んで。それ以外受け付けへんから」
被告はAに対しそう言った。
ODとはオーバードーズの略で、日本語で言えば薬物過剰摂取のこと。死ぬ方法を選べ、という主旨の自殺を迫る発言である。実際に死なせるつもりはなく、脅して言っただけだと被告は法廷で述べた。

被告はカッターナイフをAの腕に近づけて切りつけるような素振りをして見せた。事件前に被告はリストカットをしており、被告の夫は「原因はあんたにある」とAを批難した。

夫はAの口を無理矢理開けて、何らかの薬を飲ませた。
Aは薬を拒んで抵抗したため、口内に怪我をして出血した。

また、被告はAの財布を取り上げ、入っていた一万円を奪った。

午前9時頃、Aはトイレに行くふりをして、そのまま逃亡して警察へ通報した。こうして約3時間に渡る監禁が終わった。

多重人格について

被告は解離性障害を抱えており、いわゆる多重人格者であるという。人格によって煙草の銘柄が違い、ラッキーストライクを吸っている時は現在の被告であり、メビウスを吸っている時は24歳時の人格だとされる。

Aは取り調べの際、以下のように述べた。
「私が見る限り被告は現在の被告で、別の人格に入れ替わっている様子はありませんでした」
「ただ、包丁を突きつけられる直前にメビウスを吸っており、その時に24歳の被告に変わっているのかもしれないと感じました」
「それ以外は現在の被告が私への不満を晴らすためにやっているのだと思いました」
また、被告の堕胎費用に関し、Aが払わなかったという被告の証言は誤りで、ちゃんと支払ったとAは主張した。

法廷にて

情状証人として被告の祖母が出廷した。祖母は示談金として57万円をAに渡し、和解済みである。被告の夫も事件後に逮捕されたが、先に執行猶予判決を受け、釈放後に示談金を祖母に返済した。祖母は今後の被告の生活を監督したいという。

法廷で、被告はもうAに危害を加えないと誓った。

裁判官は「自分も悪いけどAさんも悪いという気持ちを持っていませんか」と質問した。
被告は「わかりません」と答えた。
被告は、薬の管理を見直し、働きに出てまっとうに暮らしたいという。

検察官は懲役3年6ヶ月を求めた。
弁護士は執行猶予を求めた。

判決

懲役3年 執行猶予4年。
つまりは、今後4年間なんの罪も犯さなければ服役をしなくてもよい、ということ。
主犯として3人がかりで被害者を拘束したことは重く見られたが、犯行当時に被告が薬物により脱抑制状態にあったことや、示談していることが考慮された。

裁判官は以下のように説諭した。
「あなたにも考えはあるでしょうが、こんなことはどんな事情があっても許されませんからね」
「包丁を突きつけるというのは、あなたにそのつもりはなくても命を奪いかねないことでした」
「お母さんとかご主人とか、あなたに対して物を言いにくいところがあるようだけど、ちゃんと言うことを聞いて」

裁判所にて、被告の夫らしき人がリラックマの大きなぬいぐるみを抱えて待機していた。閉廷のあと、被告は渡されたぬいぐるみを抱きかかえて去っていった。

感想

何故か主文後回しだったので「死刑?」と思ってしまった。流石に死刑になるほどの罪じゃない。
普通、判決では「懲役何年です、理由はこうです」という順で話す。「懲役何年です」という部分を「主文」と言って、通常は死刑や無期懲役などの相当重い罪の場合だけ主文が後に来て、それほど重くない場合は先に主文を言う。今回は「事件の概要→事件をどう判断したか→懲役何年です→説諭」という順だった。

女性被告で罪状が派手だったせいか傍聴人が多かった。被告は見た目はキレイ系で声はキュート系。いかつい犯罪をやらかすようには見えないのだが、庇護欲をそそるタイプだから、守ってあげなきゃみたいな感情のもとで夫や母もずるずる従ってしまったのかな。
2019年の4月5日は平日なのに、朝っぱらから犯行に及ぶタイミングが謎。眠れずに夜通し思いつめた末に場当たり的に事件を起こしたのだろうが、朝から呼ばれたらやってくる被害者もなんなんだ。同棲中は被告を金づるみたいに扱ってたそうだし、Aはちゃんと働いてないのか?
別れた後も親交があって夫とも仲がいいというのがよくわからない関係性だ。堕胎は両方の責任だけど、そういう事があった末に別れた相手とはもう顔もあわせたくないぐらいになりそうなものだが。夫もそんな相手と妻を接触させたがらなさそうだが。
被害者と夫の下の名前が同じなのがややこしかった。
被告が多重人格者らしいというのがすごく気になったのだが、それによって責任能力が問われるというものでもないのであまり掘り下げては語られなかった。気になる。

動画作ってました。


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