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僕たちが今すぐ気候危機に対して出来ること、とその少し先の話。

「大規模な植林が気候変動に対する最も安価で有効な手段かもしれない。」

という研究が先月(2019年7月5日)にScienceにて発表されました。チューリッヒ工科大などの研究者達がgoogle earthを用いて植林のシュミレーションをおこない、その結果全世界の都市や農地などを除く植樹可能なエリアに可能な限り植樹をすることで、大気中から二酸化炭素を25%近く除去できるという主張をするものです。

それに呼応するようについ先日、インドのウッタル・プラデーシュ州で大規模な植林キャンペーンがおこなわれ、1日の間にその州の人口と約同数の2億2千万本以上の木が植樹されたというニュースがありました。

また2018年5月に1人のスェーデン人の少女が始め、今や世界各地でおこなわれている気候危機への行動を呼びかける"Fridays For Future"(未来のための金曜日のデモ)においてもそのベルリンでのデモ参加者全員が1本ずつ植樹をおこなうなど、気候危機に向けた植樹の運動は今後もグローバルに展開されていきそうです。 

一方で同研究を受けてすぐさま専門家から、戦略のない植林の生態系に対する危険性、プランテーションによって造られた人工林の温室効果ガス吸収の効果の薄さ(成熟した自然林の40%と言われています)などが指摘されました。

しかし、いずれにしても適切かつ迅速な植林が気候危機に対する複合的なソリューションの重要な一角であることは多くの人が合意するところなようです。そしてすでに成熟した自然林(アマゾンなど)の伐採を止める、ということが植樹と同等に、またそれ以上に重要であることも指摘されています。

検索するたびに、世界のどこかに樹が植えられる。

"Ecosia"という全世界800万人以上が利用している検索エンジンがあります。ドイツ発のスタートアップが2009年より運営するこの検索エンジンは「世界中のユーザーが約45回数検索するたびに、世界のどこかに1本樹が植えられる。」という仕組みをつくっています。

"Ecosia"は主に検索から得られる広告費による利益の80%を植樹プロジェクトやNPOに寄付するというかたちで、現在までに6.500万本近くの植樹に貢献してきました。

Yahoo!やBingの検索結果をもとに検索結果を表示するので、使ってる感覚は他のサーチエンジンと同じ感じです。またサーチエンジンとしてのプライバシー性の高さも特徴的です。

具体的には、サーチ履歴等を恒久的に蓄積しない、第三者に販売しない、そしてgoogle analyticsのようなユーザー追跡ツールを使用しないといった点でユーザーのプライバシーのより守られたエンジンだと言えそうです。またこれまでの自分の検索回数と"ecosia"を通じて世界で植樹された樹木の本数がインターフェースから確認できるのも楽しいです。

詳しくは

複雑さと不確実さに対峙して日々の行動選択をする。

「世界中に大規模な植林」という非常にシンプルかつ壮大なソリューションに聞こえるこの研究も気候変動に対処する方策の一部であって、その全てにはなり得ません。研究者達自身も上記研究が「楽観的な解決策の提示であると同時に緊急性のある行動喚起でもある。」としています。

気候危機(気候変動)を含め環境問題はもう半世紀も我々人類の生活環境に切迫する問題として認知されていますが、その巨大さと複雑さ、そして予測のしづらさから個々人の具体的な行動に繋がりにくい側面があります。気候変動の存在を証明しようとする人々と、その存在そのものを否定しようとする人々と、その論争自体も長く続いてきました。

他の現代の諸問題にすべからく内在する「複雑さ」と「不確実さ」が環境問題にも深く根ざしています。分かりにくいもの、近寄りがたいものという印象は環境問題に対する個人としての無力感や日々の自身の小さな行動選択への過小評価を招いているように感じます。

そうした状況において僕たち多くの現代人にとってストレス値の高い以下の態度をあえて推奨しようと思います。

・白か黒の二元論に陥らず、曖昧で不明瞭な状況を受け入れる
・検索行動を怠らず、複数の視座に基づいて行動選択を取る

気候変動はないと言いきることも、逆にあると言い切ることも、植林こそが絶対の解決策だと言い切ることも、気候変動によって人類が絶滅すると言い切ることも、すべて現時点では断言できないことです。その上で「かもしれない」と中立な意見を言える、そして聞き入れられる議論はとても重要です。

僕たちの日々の行動選択と世界の環境問題に対する動きをリンクしてくれる"Ecosia"などのプラットフォームはこうした不確実な状況にこそとても有用な「現代の覗き窓」のような存在だと思います。

自分自身が日々用いるツールやプラットフォームの選択が世界のどういった動きを加速させているのかを自覚し、頻繁にその動向を注視する、その上で批判的に思考し、次の行動選択をおこなう。

このループ(というか螺旋)を自覚的に回すことは現代社会で正気を保って主体的に生きる上で必須の作業ではないかと僕は思っています。

というわけで、今回は気候変動に対して今すぐ僕たちが今すぐ取れるアクションと、その先の話を少しだけ書きました。次回は日本の林業まわりについて少し書きたいと思います。

コメント等あれば是非に。

以下ソース&関連リンク


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