記憶



痛いような寒い朝
幼い頃 故郷で感じた朝

パチパチという音と煙の匂い
早起きして薪ストーブに火を入れる母
そのうち家の中は暖かさでいっぱいになる
感じなかった隙間風も
中の暖かさに吸い寄せられるかのように入ってくる

凍結を防ぐ為 夜から少しだけ緩めていた蛇口からは
ガラスの棒が真っ直ぐセメントの流しと繋がってる

ガラガラと戸を開けると
外は銀世界
谷の雪は重く すぐに雪だるまが作れた
道をコロコロ転がし 二つ重ねて
上には鉄のバケツ
3時には陽が陰る山里では
雪だるまも2、3日そのまま
邪魔になると怒る父の顔は笑ってたな

畑は山の斜面の延長線上にあった
𨼲地側は溶けるのが遅く
格好の遊び場
父が竹で作ってくれたスキー板の様なのを長靴に括り付け
尻餅をつきながら滑った
ソリには縁に木の棒を打ち付け
止まる時ブレーキの代わりになる様作ってくれてた
妹達と登っては滑り 登っては滑り

濡れた服で家に入ると
ストーブの上にはみかんがパンパンに膨れて弾けそう
「これを食べたら風邪ひかん」とじいちゃんが言う

ストーブの周りでは 父やじいちゃんが 
春に植えるタバコの苗を守るためのキャップ作り

三角の紙袋を立てるための竹籤を作っていく
細く割られた竹を 
膝の上で 小刀を持ち竹を滑らせていく
そのうち細く丸い竹籤ができる
興味深く見てる私に
「やってみ!」と 
いつでも何でもやらせてくれたじいちゃん

薪割りも子どもの仕事として
怪我をしないやり方を教えてくれた

そんな遠い昔を思い出した朝

山里で育ったお陰で
遊び方の工夫や物づくりの楽しさを学んだ

今度は私が孫達に引き継ぐ番

私がココに居る事に感謝

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